長澤まさみ 「きっと、幸せに暮らしていたと思う」応為についての思いを語る 映画『おーい、応為』
長澤まさみが主演を務める映画『おーい、応為』の公開御礼舞台挨拶に登壇。作品への思いから生きるために自分にとって必要なことなどについて語った。
江戸時代、破天荒な絵師・葛飾北斎と、彼の娘であり弟子でもあった葛飾応為。「父をも凌ぐ」と言われた画才を持ち、北斎の右腕として、そして数少ない女性の絵師として、人生を描きぬいた応為。茶も入れられず、針仕事もできないが、親ゆずりの豪胆さで、男社会を駆け抜けていった先駆的な女性アーティスト・葛飾応為とは。自分の心に正直に、そして自由に生きようとした彼女が、最後にたどり着いた幸せとは――。
監督・脚本を手がけるのは、『日日是好日』『星の子』などで人間の奥行きを繊細に描いてきた大森立嗣。
長澤まさみが、『MOTHER マザー』(’20)以来となる大森監督との再タッグで、初の時代劇に主演、ヒロイン・葛飾応為を熱演。応為の父・北斎を永瀬正敏、応為の友人で北斎の門下生・善次郎(渓斎英泉)をKing & Princeの髙橋海人、北斎の弟子の絵師・初五郎(魚屋北渓)を大谷亮平が演じる。
この度、公開御礼舞台挨拶が行われ主演の長澤、永瀬、大森監督が登壇。公開から約1週間が経ち、観客からの反響や撮影の裏話を交えながら、作品に込めた思いを語り合った。
公開後の反響について聞かれた長澤は「感想をたくさんいただきました。『応為という人にすごく興味を惹かれた』という声が多くて。私と同じように応為の魅力に気づいてもっと知りたいと思ってくださった方や、親子の物語に感動したという言葉もいただきました。とても嬉しいです」とにこやかな表情。大森監督も「映画人の友人から傑作じゃんって連絡が来たりして(笑)、一人で小躍りしていました。永瀬さん、長澤さん、そして髙橋海人くんがすごい、という感想をもらえるのが一番嬉しいですね」と笑顔を見せた。

史実では謎多き人物とされる応為の“北斎死後の人生”について、長澤は「史実として残っているものは少ないですが、噂話のようなものはあって、あの辺りにいたらしいよという話も聞きました。きっと、幸せに暮らしていたと思うし、やりたいことをやりながら生きていたと思います。誰かに見てもらうことだけが幸せではなく、自分が描き続けることに満足を見出していた人なんじゃないかなと思います」と応為への想いを語った。
永瀬も「小布施の北斎館で応為の直筆の書簡を見たんですが、お礼状や絵の具の作り方について書かれていて、すごく丁寧で温かい人柄を感じました。きっと幸せに絵を描きながら暮らしていたんじゃないかな」と語り、大森監督は「人にどう思われるかより、自分の思うままに描いていたと思います。彼女の美人画には、当時の女性たちへの思いもにじんでいて、90歳まで生きた父・北斎を見て育った応為も、きっと天寿を全うしたのではないかと感じます」と続けた。

「生きるために自分にとって必要なことは?」という質問に、長澤は「大森監督と以前ご一緒した映画『MOTHER マザー』の時も思いましたが、家族という小さな世界の中で生きることが、自分を形成する基盤になると思います。日々の中にある小さな幸せに気づくことが大切だと感じました」と話す。
永瀬は「中学生の頃から神様のように憧れていた方々にお会いして感じたのは、皆さんすごく優しくて、ちゃんと自分を持っているということ。人に優しくできるのは、自分がしっかりしているからこそ。僕もそうありたいです」と語り、大森監督は「時間があれば脚本を書いているんですが、それがなくなったら何をしていいかわからない。それくらい創作することが自分にとって必要なことなんです。人にどう思われるかより、自分の中から湧き上がるものを大切にしたい」と自身の生きる糧を語った。

終盤では、本作が自分にとってどんな存在になったかを問われ、長澤は「応為は北斎のことを本当に尊敬していたし、一緒にいられることを幸せに感じていたと思います。私自身も家族のことを思い出せるような作品でした。日常の中にある小さな幸せに気づかせてもらえる映画です」としみじみと語った。
永瀬は「自分の出た作品をあまり見返すことはないんですが、この映画は監督がおっしゃっていたように自分にとってのお守りのような作品になりました。何度も見返したくなる作品です」と話し、大森監督は「これまでの作品の中で、こんなに優しい映画は初めてかもしれません。舞台挨拶で最近ご一緒する機会の多い永瀬さんの優しさに触れて、優しいって本当にいいことなんだなと改めて感じました。時々腹が立つことがあっても、この親子を思い出そうと思います」と笑みをこぼした。
最後にこれから映画を観るファンに向けて、3人からメッセージが贈られた。大森監督は「本日はありがとうございます。こうして長澤さん、永瀬さんと一緒に何度か舞台挨拶をさせてもらうのは本当に光栄です。今日は(髙橋)海人がいないのがちょっと寂しいですね。“おーい、海人!”って感じなんですけども、皆さん楽しんでいってください」と作品名にかけて笑顔でコメント。
その言葉に永瀬も「そう、“おーい、海人!”って感じですよね(笑)」と乗っかり、「大天才絵師2人の物語ですが、とても丁寧に2人の日常が描かれています。監督がコロナ禍にこの作品を作ろうと思われたということで、日常の大切さを改めて感じました。そういう意味でも、この2人の日常をぜひ楽しんでください」と語った。
長澤は「映画館でしか味わうことができない時間というものがあると思います。皆さんの日常も大切な時間ですが、この親子の物語の日常を、皆さんの毎日の中にも取り入れてもらえたら嬉しいです」と語ったあと、「映画『おーい、海人』 あっ、違う!すみません、『おーい、応為』ですね(笑)」と照れ笑いを浮かべ、会場は笑いに包まれた。3人のノリの良さと温かな絆、そして髙橋への愛情がにじむような雰囲気の中で、イベントは和やかに締めくくられた。

映画『おーい、応為』はTOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開中
配給:東京テアトル、ヨアケ
公式HPはこちらから











