“なんとなく不調”を見逃さず、“気づく”ことがセルフケアの第一歩 婦人科系疾患の7つの兆候とは?「私のからだ、私の未来 ~女性が知っておきたいセルフケア~」

2025.10.10 14:15
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写真右から、大島 乃里子先生、村上 佳菜子、アストラゼネカ株式会社 北川洋

アストラゼネカ株式会社とウィメンズヘルスケアサービス「ルナルナ」は、2025年10月6日(月)に、「私のからだ、私の未来 ~女性が知っておきたいセルフケア~」と題した、オンラインイベントを開催した。

本イベントは、婦人科腫瘍学・女性医学の専門医である大島乃里子先生(東京科学大学病院 周産・女性診 療科 講師)とプロフィギュアスケーターの村上佳菜子によるトークを通じて、婦人科がんの早期発見・早期 治療開始のためにも、普段は後回しにしがちな“自分の体 と心”について向き合うことの大切さを多くの女性に気づくきっかけとして開催された。

第1部 「女性特有のからだの悩みとその対処」

まず女性特有の体の悩みとして、生理痛や月経前症候群(PMS)等、月経に関連する不調が起こる仕組みを大島先生が解説した。月経中には、子宮を収縮させるプロスタグランジンという物質が分泌され、これが下腹部痛、いわゆる“生理痛”の大きな原因となる 1

また、月経前に起こる PMS は“月経前のホルモンバランスの変動”により引き起こされる心身の不調で、情緒不安定、イライラ、落ち込みといった気分面の変化や、頭痛、乳房の張り、むくみ、腹部の不快感等、身体的な症状がある2。このほか、経血量が極端に多い、強い腹痛や腰痛が続く、貧血のような症状がある場合は、子宮筋腫や子宮内膜症といった婦人科疾患が背景にある可能性もある3,4

大島先生は「何か不調がある場合、“毎月この時期はそうなんだよね”と思わずに、一度婦人科を受診してみてもらいたいです。受診して早くに病気をみつけことができれば、早く対処法がわかったり、治療につながる可能性があったりします。自分の体の変化は見逃さずに受診することが大切です」と話した。

村上は「私は現役時代から生理不順がひどかったのですが、スケートに集中するあまり放置していました。引退してからようやく自分の体と向き合う時間ができ、婦人科できちんと検査をしてもらい、必要な治療を受けることができました。今は定期的に受診しており、体の不調は、ちゃんと向き合えば対処できる方法があると知りました」と自身の体験を語った。

第1部では、ルナルナが、10~40 代の女性 1,000 人を対象に 2024 年 10 月に実施した「FEMCATION 白書 2024」の調査結果も一部紹介された。生理に関する症状や悩み、不安について、「ある」と回答した人は全体の約7割おり、具体的な症状や悩みでは、最多が「生理中の不調(頭痛、下腹部痛、吐き気、疲労感等)」71.6%、次に「生理前の不調(PMS /月経前症候群)」69.1%だった等の結果が示された5

第2部 「3大婦人科がんのリスクと対処」

第2部では、3大婦人科がんである、卵巣がん・子宮体がん・子宮頸がんがどういった病気か、また、早期発見のために注意すべきポイントについてのトークが行われ、まずは女性によくある 7つの不調について、どんな病気のリスクが考えられるのか、大島先生が解説した。

《婦人科系疾患セルフチェックリスト(7項目)》6-10

•不正出血がある(月経以外の出血、閉経後の出血等)
•月経異常がある(量の異常、周期の乱れ等)
•おなかの張りや違和感が続く
•排尿時の違和感(痛みや血尿等)がある
•足のむくみが気になる
•下腹部の痛みが続いている
•腰痛が続いている

3大婦人科がんは、子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんのことを指す。子宮頸がんは公的な予防対策として行われている検診があり、子宮頸部の細胞診を受けることで、がんになる前の“前がん病変”で診断できる場合も多くある11

子宮頸がんの発生と関連が深いヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、一部の型についてはHPV 感染を予防するワクチンが接種可能となっている 11。子宮体がんについては、“不正出血”が重要なサインのため 7、これを見逃さず、受診して精密検査を行うことが重要だ。卵巣がんは腹部の奥にできるため、進行するまで自覚症状が出にくく、おなかの張りや違和感等、ちょっとした変化がサインとなることがある12

また、アストラゼネカが 20~60 代のがんに罹患したことのない一般女性 1,000 名(医療従事者を除く)を対象に2025年1月に実施した「乳がん・婦人科がんに関する意識調査」の結果も一部紹介された13。25%程度の方が不正出血の経験があったが、不正出血の経験があった時、医療機関を受診した人の割合は 64%だったこと、不正出血があっても医療機関を受診しなかった理由で最多は「様子を見たが、その後症状がなくなった」の60%で、次いで「受診が必要だと感じなかった」の30%だった等の結果が示された。

大島先生は、「このリストにある項目は、続くとか、悪化している症状があるかどうかが重要です。特に若い方では、不正出血があったからといってがん等の大きな疾患に必ずしも関係しているわけではありませんが、がんにより引き起こされている場合もあるので見逃さないことが大事です。不正出血があった場合は必ず、それ以外の症状も続く場合にはきちんと婦人科を受診して、“なにもない”か否かを確認するようにしましょう」とコメントした。

第2部では、村上が多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)について自らの経験を語った。村上は「引退後には毎年検査を受けるようになったのですが、婦人科検診に行って初めて、私は PCOS であることがわかりました。でも、実は母もこの病気で、もしかしたら私もそうかもしれないという話をしていたので、診断を受けた時はそんなに驚きませんでした。現役時代は体のことは二の次でしたが、今は自分と向き合うことが大事だと思っていますし、同世代の友達とも家族とも、恥ずかしがらずに女性特有の不調についても話しています」と話した。

PCOS は、女性ホルモンのバランスが乱れることによって、排卵がうまく起こらなくなる疾患であり、月経不順や無月経、不妊の原因になることもある14。また、PCOSの方はそうでない方と比べて子宮体がんの発症リスクが2~3倍になるという報告がある16,17。子宮体がんは通常、50~60 代が発症のピーク年齢7と言われているが、PCOSで月経不順や無月経を放置していると、それより若い世代でも子宮体がんにかかるリスクは高まる。

そのため、PCOSと診断された際には長期的な影響を診るためにも定期的に検査を受け、不正出血や過多月経があった場合には、速やかに婦人科を受診することが大切だ。大島先生は、「PCOS の方に限らず、月経が来ないことを含め、“なんとなく不調”を見逃さず、自分の体と心の傾向を知ること、“気づく”ことがセルフケアの第一歩。アプリなどを活用して、月経周期や気分の変化を記録することで、自分のリズムを把握することも、ご自分の体とうまくつきあっていく鍵になります」と話した。

■イベント概要 「私のからだ、私の未来 ~女性が知っておきたいセルフケア~」

日 時:2025年10月6日(月)15:00~16:10
形 式:オンライン(Zoom)
プログラム:第1部 「女性特有のからだの悩みとその対処」
講演 婦人科がんのリスクと対処
登壇者:大島 乃里子先生(東京科学大学病院 周産・女性診療科 講師)
第2部 「3大婦人科がんのリスクと対処」
講演① PCOS罹患経験からの学び
登壇者:村上 佳菜子さん(プロフィギュアスケーター)
講演② 婦人科がんのリスクと管理
登壇者:大島 乃里子先生

References

1,一般社団法人 日本女性心身医学会 月経困難症(月経痛)
https://www.jspog.com/general/details_67.html (2025 年9月アクセス時)

2,公益社団法人 日本産科婦人科学会・公益社団法人 日本産婦人科医会 産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編 2023, CQ405 月経前症候群の診断・管理は? https://www.jsog.or.jp/medical/410/ (2025年9月アクセス時)

3,公益社団法人 日本産科婦人科学会 子宮内膜症 https://www.jsog.or.jp/citizen/5712/(2025年9月アクセス時)

4,公益社団法人 日本産科婦人科学会 子宮筋腫 https://www.jsog.or.jp/citizen/5711/ (2025年9月アクセス時)

5,株式会社エムティーアイ実施(2024年11月22日プレスリリース)「FEMCATION白書」第3弾!10代~40代の女性1,000人以上に、生理・更年期・妊活に関する環境の変化や行動変容を調査!
https://www.mti.co.jp/?p=35206(2025 年9月アクセス時)

6,公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会(編): 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第3版, 金原出版, 2023

7,公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会 市民の皆さまへ「子宮体がん」
https://jsgo.or.jp/public/taigan.html(2025 年9月アクセス時)

8,国立がん研究センターがん情報サービス がん種別統計情報「卵巣」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/19_ovary.html(2025年9月アクセス時)

9,国立がん研究センターがん情報サービス がん種別統計情報「子宮体部」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/18_corpus_uteri.html(2025年9月アクセス時)

10,国立がん研究センターがん情報サービス がん種別統計情報「子宮頸部」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/17_cervix_uteri.html(2025年9月アクセス時)

11,国立がん研究センターがん情報サービス 子宮頸がん検診について
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/cervix_uteri.html(2025年9月アクセス時)

12,公益社団法人日本産科婦人科学会卵巣の腫瘍とがん
https://www.jsog.or.jp/citizen/5715/(2025年9月アクセス時)

13,アストラゼネカ株式会社実施(2025年10月6日プレスリリース)アストラゼネカの一般女性に対する乳がん・婦人科がん調査~42%が乳がん検診・婦人科検診を 「受けたことがない」と回答~
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2025/202510063.html

14,公益社団法人 日本産婦人科医会 多のう胞性卵巣と言われました。どのような病気ですか
https://www.jaog.or.jp/qa/mature/jyosei191211/ (2025 年9月アクセス時)

15,公益社団法人 日本産科婦人科学会・公益社団法人 日本産婦人科医会 産婦人科診療ガイドライン婦人科 外来編2023, CQ326 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断と治療は?
https://www.jsog.or.jp/medical/410/(2025 年9月アクセス時)

16,Fauser BC, et al. Fertil Steril. 2012;97(1):28-38.e25.

17,Legro RS, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2013;98(12):4565-92.

18,公益社団法人日本産科婦人科学会 産科・婦人科の病気「子宮頸がん」
https://www.jsog.or.jp/citizen/5713/(2025 年9月アクセス時)

19,厚生労働省 がん検診
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html(2025年9月アクセス時)

20,国立がん研究センターがん情報サービス 子宮頸がん 予防・検診
https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/prevention_screening.html(2025年9月アクセス時)

21,国立がん研究センターがん情報サービス 全国がん罹患データ(2016年~2021年)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html (2025 年 9 月アクセス時)

22,National Cancer Institute. Cancer Stat Facts: Ovarian Cancer.
Available at https://seer.cancer.gov/statfacts/html/ovary.html.(2025年9月アクセス時)

23,国立がん研究センターがん情報サービス 卵巣がん・卵管がん 予防・検診
https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/prevention_screening.html (2025 年9月アクセス時)

24,Oakin A, et al. Endometrial cancer: ESMO clinical practice guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Annals of Oncology. 2022;33(9):860-877.

25,Dork T, et al. Genetic susceptibility to endometrial cancer: Risk factors and clinical management. Cancers.2020;12(9):2407.

26,American Cancer Society. What is endometrial cancer?
Available at https://www.cancer.org/cancer/types/endometrial-cancer/about/what-isendometrial-cancer.html. (2025年9月アクセス時)

27,国立がん研究センターがん情報サービス 子宮体部
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/18_corpus_uteri.html (2025年9月アクセス時)

28,National Cancer Institute: Surveillance, Epidemiology, and End Results Program. Cancer stat facts: Uterine cancer.
Available at: https://seer.cancer.gov/statfacts/html/corp.html. Accessed January 2025.

29,Cao SY, et al. Recurrence and survival of patients with stage III endometrial cancer after radical surgery followed by adjuvant chemo- or chemoradiotherapy: A systematic review and meta-analysis. BMC Cancer. 2023;23(1):31.

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