『金の国 水の国』 デジタルセル&レンタル配信開始~コロナ禍での制作秘話をマッドハウスの逸材・渡邉こと乃監督が語る

2023.7.24 17:00

「このマンガがすごい!(オンナ編)」史上初2作連続1位に輝いた岩本ナオの原作で、マンガ好きの域を超え、各界から絶賛された『金の国 水の国』。世界を熱狂させ続けるアニメ制作会社マッドハウスで初映画化、今年1月に公開され大きな話題を呼んだ。entaxでは今回のデジタルセル配信開始にあたり、監督の渡邉こと乃が語った、コロナ禍での制作秘話をお届けする。

【ストーリー】
100年もの間国交を断絶してきた戦争寸前の2つの国。商業国家で水以外なんでも手に入る裕福な<金の国・アルハミト>と、貧しいが豊かな自然と水に恵まれた<水の国・バイカリ>。国の思惑に巻き込まれ、突如、“偽りの夫婦”を演じることになった敵国同士の“金の国”の王女サーラと“水の国”建築士ナランバヤル。2人は自分でも気づかぬうちに、恋に落ちてしまう。“金の国”の深刻な水不足によるサーラの未来を案じたナランバヤルは、戦争寸前の2つの国に国交を開かせようと決意する。そして2人がついた“小さな嘘(うそ)”が、国を揺るがす大事件を巻き起こし、やがて国の未来を変えていくことに――。国をも動かす2人の恋、その先にある、誰もみたことのない奇跡とは――?

【渡邉こと乃監督が語る制作秘話】

―この作品を映画化した理由をお聞かせください

渡邉:「このマンガがすごい!」で1位を取ったのが2017年ですが、こういう読後に多幸感がしっかり感じられる作品が今の時代に求められているのだと思います。岩本先生の描く作品は王道でありつつもニッチな攻めどころもあり、漫画ファンをうならせる作品ですね。原作に登場する神様の存在は、特定の文化圏の想定にならないように、演出上では鳥視点のものに代えています。変更することで作品の根幹を逃がさないように注意しました。

原作を忠実にアニメ化すると本来は3時間を超える。ストーリーを交通整理しつつ、しかし骨子を絶対に変えることなくギリギリ120分に収めたという。

―コロナ禍での制作となりました

渡邉:作画のタイミングで一気にコロナ禍になって。保育園や幼稚園の子どもを持つスタッフも大変でしたが、皆のプロ意識で無事進行しました。

会議も対面ではできない中、この作品の肝の1つである美術にもこだわったという。

渡邉:モザイク美術などはCGも考えましたが、岩本先生の魅力を出せる作風ということで、手描きにこだわりました。キャラクターデザインの高橋瑞香さんも岩本先生のファンなので、原作を読みこんだ上でかなり整理してもらいました。キャラクター数も多いし衣裳も2か国分ありますし、かなり大変だったと思います。

―応援したくなるキャラクターたちばかり

渡邉:(ナランバヤル、サーラの)2人とも自分本位での大恋愛をしたりせず、自分たちのささやかな幸せを守っていきたい気持ちが愛おしいですね。それが驚きの結末に結び付く。

2人を演じる声優には、誰もが知っている俳優であると同時に、原作ファンも納得できる演技ができる俳優を探していたという。ナランバヤルを演じたのは賀来賢人。サーラは可愛らしさが前面に出過ぎず、柔らかい声質と雰囲気の浜辺美波に。

渡邉:ナランバヤルはセリフ量も多いし、声の演技幅も広い難しい役です。賀来賢人さんにお引き受けいただけて、本当に良かったです。サーラは少しふくよかなキャラですが、アニメに寄りすぎるとたくましい声になりそうで、浜辺さんの声はまるでα波が出ているかのような優しいニュアンスがぴったりでした。

音楽を手掛けたのはアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(2018-20)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022)のEvan Call。2つの国で異なる文化があるため、それぞれの国をイメージした楽器を使い分けたという。

Evan:アルハミトは中東、バイカリはモンゴルやチベットの雰囲気です。トブシュールというモンゴルの楽器やサズというトルコの楽器の他にもいくつかの民族楽器や、日本では売っていない楽器も使用しました。演奏は、いつもお願いしている映画音楽の演奏に長けたブダペストのオーケストラ。コロナ禍で、指揮者やエンジニアの皆さんとリモートで制作を進めました。初めて見た楽器にもワクワクしましたし、最初から最後まで楽しんで作ることができました。

テーマ曲(劇中歌)を歌ったのは当時20歳のアーティスト、琴音。実は音楽が固まった頃にウクライナ戦争が起きてしまい、国同士の対立にフォーカスした音楽を制作してきたが、もう少しエモーショナルなボーカル曲を入れる案が出てきたという。

―劇中歌が制作された事情もあったとか

渡邉:世界情勢が一気に変化して、ニュースで辛くなり、映画でもストーリー以上の重いものを受け取ってしまう可能性がある。それで、2人の気持ちに寄り添う音楽をエバンさんに追加でお願いしたんです。

Evan:制作から録音まで2週間くらいでした。ボーカリストの候補の中から、この声だ!と思ったのが琴音さん。表現力が素晴らしくて、迫力がありつつ繊細で感情が沸きあがるような歌い方もできる人でした。

渡邉:先入観のない状態で聴いてみて、「この人しかいない!」と思ったのが琴音さんでしたね。20歳とは思えないあの表現力!ぜひ聴いてほしいです。

【本作屈指の名場面 橋の上、月に照らされた2人】

原作でも屈指の名場面として知られ、映画のお気に入りシーンに挙げる声も多い、月明かりに照らされた橋の上で、サーラとナランバヤルが対話するシーン。<水の国>を訪れ、あるハプニングに巻き込まれたサーラが、帰り道にナランバヤルと顔を合わせるも、思わず感情があふれてしまう…という映画の大きな見どころのひとつだ。

「私、今日は…なんだかみっともなくて…」と涙をこぼすサーラを強く抱き寄せ、「お嬢さんがみっともねぇとかこれっぽっちもねぇんで…大丈夫ですよ」と優しくも力強い声で語りかけるナランバヤル。それを聞いたサーラは、ナランバヤルの腕の中でさらに大粒の涙を流す─。月夜に浮かぶ2人のシルエットの美しさと、Evan Callの手掛けた壮美なBGMも相まって、心奪われること必至の本シーン。声を吹き込んだ賀来賢人と浜辺美波は、脚本の時点でシーンの重要性を感じていたと語り、アフレコ時には何十回もテイクを重ねて完成させたというこん身のシーンとなっている。

―この作品の持つ現代性も、今の社会に寄り添っていますね

渡邉:琴線に触れる名言がたくさんあって、自分が置かれている状況が変わるとまた違う言葉に感動する。そんな作品です。私自身、学生時代に辛くなった時にアニメに救われたことが何度もありました。この作品の持つ多幸感やキャラクターが持つ力は自分が辛い時に寄り添ってくれる。たくさんの方に見て頂けたらと思います。

映画『金の国 水の国』
「このマンガがすごい!(オンナ編)」史上初2作連続1位に輝き、マンガ好きの域を超え、各界から絶賛された岩本ナオの原作を、世界を熱狂させ続けるアニメ制作会社マッドハウスで初映画化。『竜とそばかすの姫』(2021)のプロデューサー、アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(2018-20)の音楽を手掛けたEvan Call。そして監督はマッドハウスの逸材・渡邉こと乃。監督の下に集まったスタジオ最高峰のスタッフたちによる卓越した技術力で、岩本ナオの描く異国情緒満載の世界観を見事に描き、躍動感あふれる映像が展開する!
豪華クリエイター陣の想いが結集された珠玉の117分。どんな状況でも、自分ではなく、自分以外の誰かを想う――2人の小さな<やさしい嘘>にきっと涙する――。
あなたをやさしさで包み込む。最高純度の恋落ちエンターテインメント。

デジタルセル&レンタル配信中
配信開始日:2023年7月12日(水)
配信種別:デジタルセル&レンタル

配信サイト一覧
ワーナー公式YouTube「本予告」
映画『金の国 水の国』オフィシャルサイト

(C)岩本ナオ/小学館 (C)2023「金の国 水の国」製作委員会

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