声優・早見沙織&櫻井孝宏が朗読!湊かなえ最新作『暁星』は全てを知ると“景色”が変わる? 2回以上必聴必読のオーディオファースト作品に【独自インタビュー】

2025.11.20 17:00
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|聴く人によって“正解”は複数──余白を残す朗読で生まれる物語

──湊さんは、早見さんたちの声が入ったご自身の作品を聞かれていかがでしたか?

 私はこれまで、おふたりの声は、自分が作ったものではない、他の誰かが作った作品を演じてらっしゃるところしか知らなかったんですけど、今回、おふたりとも声優の時とは違う、朗読のプロというのはこういう読まれ方をするんだと──すごく、読み手に余白を想像させるような印象を受けました。

 てっきりセリフのところは、そのセリフの言い回しで(役柄を乗せて)喋るのかなと思ったんですが、ちゃんと“朗読のまま”読まれるんですね。すると、おふたりの声でまた新しい映像が見えてきたり、行間が見えたり、気持ちの余白が見えてきたりして感動しました! Audibleはイヤホンを耳にさして聴く方が多いと思うんですけども、おふたりの声はぜひヘッドフォンで聴いて欲しいです!

二人 (笑)

──早見さんたちにとっても、このAudible作品というのは、映像作品に声を当てるのと比べて結構違うものなんでしょうか?

早見 湊先生もおっしゃっていたように、“聴いてもらう方(かた)に残す余白”というのはとても意識しました。アニメーションの収録では、音響監督さんや監督さんのディレクションを受ける中で、OKが出ればそれでキャラクターの正解が決まりますが、今回のような朗読の場合は、あえて“正解”が1つではないように読む方(ほう)が、聴く方々(かたがた)の物語になっていくのかなと──。

早見 聴いてくださった方に正解として伝えるのではなく、それぞれで受け取り方の余地があるような、選択肢の広さは残しつつ、私が文章から感じたものも音で再現できたらと思っています。

──櫻井さんもうんうんとうなづかれていますが、収録を振り返っていかがですか?

櫻井 地の文も含めて1人で読むので、そういうところはやはりアフレコの集団作業とは全く違いますよね。何と言いますか、演技というのはやはり表現なのかなと──。意訳みたいなものなんですが、私もそういう意識で臨みましたね。「今ので良かったのか」とか「もっと違うアプローチがあったんじゃないか」とか、絶えずそういう自分を見下ろすような目線は持ちつつも、やはり文章のままを、できるだけその声、音にしたいっていう思いがあります。

櫻井 湊先生がおっしゃられて 今もすごくうれしかったんですが、我々のやっている役が好きだったりみたいなところからオファーをいただいたということは、おそらく我々に何かを感じてもらえているんだろうなと思うんです。それは役を通してかもしれないですし、声がそうかもしれませんけど、その持っているものをうまく朗読にできたらなと思っていました。

 あの…実はちょうど収録の見学に行かせてもらった時に、櫻井さんが「5行戻ります」と、「ピークを持っていくところがずれたから、5行戻って読み直します」とおっしゃった時があったんです 。最初から聴いていたら「えっ、今のって完璧じゃない?」と思ったんですけど、実際に5行戻って読み直されたものを聞くと「あっ、そういうことだったんだ…」と──。そういった、“自分の中でピークを持っていく”という発想が私には全くなかったので、とても感動したのを覚えています。

 私は、普段小説を書く時でも特定の役者の方を絶対に思い浮かべませんし、今回のようにオーディオファーストであっても、事前に声優の方の声とかを想像しないようにしています。それをやってしまうと、その人の代表作や、その人の私が一番好きな役に登場人物が引っ張られてしまうので──。ですが、収録の見学に行き、何ページか分を聞かせていただいたら…もうなんだか全部上書きで(笑) 書いていた時、どんな声で思い浮かんでたかなというのも思い出せなくなってしまうくらいでした!

──では、改めてそんな本作の見どころをお願いします。

 この作品を全てを通して聴いていただくと、前半──自分が最初に聴いていた時に思い描いた絵とガラッと景色が変わると思うので、その、自分が最初に見えてるいものが…ええと、うーんどこまでがネタバレ…(笑)

二人 (笑)

 えぇとですね、自分が感じていることや見えていると思っているものを、本当にそれが全てなのかなと思いながら作品に触れて欲しいなと思います。あと…いや、それもね……(笑) なんだか全てがネタバレになりそうなので、ぜひ2回聴いてください! はい。そういうお話です!

──ありがとうございます(笑) では、早見さんたちもお願いします。

早見 個人的に印象的だったセリフで「この物語はフィクションである」という一文があります。本当に短いこの一文が、物語の中で広がっていくのを、全てを通して聴いたときに感じていただけるのではないかと思います。湊先生もおっしゃっていましたが、何度も 繰り返し聞いて味わっていただけたら幸いです。

櫻井 私も、もう何回でも聴いてほしいですね。特に、1回目をすごく大事に聞いてほしいという気持ちがありますし、同時にやはり本(後日発売の小説版)でも読んでも欲しいなと思っています。聴いて得られる情報と、読んで得られる感覚、広がる絵は全然違うと思いますので、その両方で作品を深く味わっていただけたらなと思います。

 あっ! あと、今回先に聴いていただける(オーディオファースト作品)ので、聴いてから本を読むと、もう読んでる間はおふたりの声で再現できるという超贅沢な体験ができます。それがオーディオファーストの一番の良さじゃないかなと思います!

二人 ありがとうございます(笑)

※『暁星』をご視聴になる方はこちらから

《湊かなえ》
1973年、広島県生まれ。2007年、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。2008年同作品を収録した『告白』でデビューし、「2008年週刊文春ミステリーベスト10」第1位、2009年本屋大賞を受賞。2014年には、アメリカ「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙のミステリーベスト10に、2015年には全米図書館協会アレックス賞に選ばれた。このほか「第65回日本推理作家協会賞短編部門」受賞、「山本周五郎賞」受賞、「エドガー賞(ペーパーバック・オリジナル部門)」ノミネートなど、数多くの功績に輝く。自身29作目となる最新作『暁星(あけぼし)』は11月27日(木)に書籍化(双葉社)。
【公式サイト】

《早見沙織》
東京都出身。5月29日生まれ。アイムエンタープライズ所属。アニメ『桃華月憚』2007年で声優デビュー。
『鬼滅の刃』胡蝶しのぶ、『呪術廻戦』伏黒津美紀、『SPY×FAMILY』ヨル・フォージャー、『ONE PIECE』ヤマト、『聲の形』西宮硝子、『賭ケグルイ』蛇喰夢子、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』新垣あやせなど、数多くの話題作で主要キャラを担当。2015年からは、アニメ『赤髪の白雪姫』OP曲「やさしい希望」を皮切りにアーティストとしても活躍。
【公式サイト】

《櫻井孝宏》
愛知県出身。6月13日生まれ。アニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』(1996年〜)で声優デビュー。
『鬼滅の刃』冨岡義勇、『呪術廻戦』夏油傑、『おそ松さん』松野おそ松、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』岸辺露伴、『PSYCHO-PASS サイコパス』槙島聖護、『金色のガッシュベル!!』高嶺清麿、『ファイナルファンタジーVII』クラウド・ストライフなど、数多くの話題作で主要キャラを担当。

湊かなえ ヘアメイク/佐藤淳
櫻井孝宏 ヘア&メイク / 川口陽子
早見沙織 ヘア&メイク/樋笠加奈子
スタイリスト/武久真理江
写真:entax

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