猪子寿之が持ち続ける問題意識「自分の身体と意思を持ってこの世界を味わってほしい」を成田悠輔が深読み

2024.4.8 18:00

経済学者の成田悠輔が、未来の日本を作る変革者=PLAYERSの頭の中をのぞき見るトーク番組『夜明け前のPLAYERS』。第14話のPLAYERSはteamLab(チームラボ)の代表・猪子寿之だ。世界的に評価の高いデジタルアートミュージアム『チームラボボーダレス』を制作・運営するチームラボは、一方で「これはアートなのか否か」と業界に論争をも巻き起こしている。異端にも見えるアート作品から猪子は何を伝えたいのか。成田は猪子に『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』を案内され、体得したてのホットな疑問をぶつけた。

主人公やキャラクターに自己投影させるみたいなモデルがとにかく嫌だった

チームラボボーダレスは、チームラボのアート作品群によって創造された、境界なく連続し変化し続けるミュージアムだ。光に包まれ、来館者の動きに連動してアート作品が変化する。

成田は「(一般的にアート作品を観る時には)集中すべき作品があって、その周りの景色は無視したほうがいいものじゃないですか。だから美術館でも白い壁に作品を置くし、エンターテインメントの中でも基本的にキャラクターや主役がいて、そこに焦点が当たるようになっている」と言い、「チームラボの場合、その景色や背景の側を前面に持ってきている」と指摘。チームラボの作品はいわゆるアートとベクトルが逆なのではないかと問う。

猪子はその問いに、レンズを例に答えた。「レンズはフォーカスを強く作って一点集中させ、それによって(見る人に)意思や身体のない状態で感情移入や自己投影をさせる。レンズで作るものには、認識の特性上そういうのが強くあるけれど、自分はそうじゃない状態のほうがいいと強く思っているんです」

“意思や身体のない状態”というのは、お茶の間に座ってテレビを見ている様子を想像すると理解しやすいだろう。だから猪子は「自分の身体と意思を持ってこの世界を味わってほしいから、主人公やキャラを作って、それに対して自己投影させるみたいなことはとにかく嫌だったんです」と話す。

「最初から何か違うと思ったんですか?」と成田。「そうですね。けっこう強く。だから、そうではない世界を作りたかったんです」と答える猪子に「一番最初からそういう問題意識を持つってちょっとおかしい」といじわるに言う成田。

「言われたくないわ」と笑う猪子にさらに「猪子さんの話してきたことや書いているものを読んだりすると、基本的に昔からずっと同じことを言っていますよね。それほどはっきりした問題意識を最初から持つって何があったんですか? 神様から啓示とかあったんですか(笑)」と成田は続けた。

「何でしょうね」と考え込む猪子に成田は、「1つ思うのは、“世界を認識する”ということを考えた時、例えば世界の景色をランダムにサンプリングすると、そこには主役や焦点を当てるべきはっきりした中心はないのだと思うんです。そう考えると、そちらの当たり前の世界を(猪子さんは)ちゃんと取り扱おうとしているのかな」と成田流の解釈で助け舟を出した。

「そうかもしれないですね」と猪子。「意思と身体がない状態で、無理やり主人公とかに自己投影させるモデルに対して強い違和感があったのだと思うんですよ。だから、成田さんが言ったことが正しくて、そっちのほうが自然だと思ったのだと思うんですよね」と答えた。

「そういうのを大きな話にしてしまう」と前置きして成田は「権力とか影響力とか資本力といった近代のヒエラルキーを形作っているいくつかのものは、無理やり序列を作り出したり、フォーカスを誰かや何かに当てさせる社会的な装置だと思うけれど、(猪子さんの活動は)そういった人為的なモノの見方や測り方をいったん取り除いてみる実験の一つなのかな」と深読みを投げかける。しかし「どうでしょうね。いやー、分からないな」と猪子にするりと逃げられてしまった。

「人間は身体で世界を認識している」 だからチームラボボーダレスは肉眼で見てほしい

“意思と身体がない状態”について猪子は、成田を案内する際にも熱く語っていた。チームラボボーダレスのエントランス、チームラボ《人間はカメラのように世界を見ていない》という作品を解説していた時のことだ。

猪子はその作品を「人間はカメラのように世界を見ている気になっているけれど、肉体はカメラとはぜんぜん違うような世界の認識をしている」ことを表現している言い、「空間をレンズで平面化すると(レンズに投影されたあちら側とこちら側に)境界が生まれて視点が固定されて肉体を失う。境界が生まれて、自分と別の世界ができてしまう」と説明。

そうではない世界を創るためチームラボは「レンズとは違った、境界が生まれず視点が固定されない、見ている世界と自分が連続していて、しかも(歩いて移動することで)肉体が動きながら見えるといった空間の平面化みたいなことの模索からスタートしている」と、チームラボ創立当初からの問題意識がこのエントランスに来ると体感できることを伝えた。

カメラ越しと自身の眼、両方でエントランスを確認した成田も「全然違いますね」と感嘆。「レンズだと、遠くのものって肉眼で見るより遠く見えるじゃないですか。でも人間の眼はフォーカスがめちゃくちゃ浅くて狭いので、細かくピントをたくさん当てまくっていて、ぐっと近くに寄って見えるんです」とマニアックな説明をする猪子。

「じゃ(ここでは)実物で見るのと、スマホのレンズで見るのと両方やってほしい感じですか」と聞く成田に、「いや、肉眼で見てほしい」と猪子は即座に答えた。「肉体で体験する、身体で体験することこそ」が大切とし、「アートに限らずありとあらゆることで、人間は身体で世界を認識していると思っているんです」と話した。

チームラボ《人間はカメラのように世界を見ていない》© チームラボ

本対談は『夜明け前のPLAYERS』公式HPでノーカット版が、公式YouTubeでディレクターズカット版が配信されている。

「夜明け前のPLAYERS」
公式HP:PLAY VIDEO STORES
公式YouTubeはこちら

写真提供:(C)日テレ

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