吉永小百合(80) 映画出演124本目にして初の“登山家”役!自身の芸能人生は、今「8合目くらい」
2025.5.15 19:00
世界初女性エベレスト登頂という偉業を成し遂げた登山家・田部井淳子の実話をもとに、その勇壮な生涯を壮大なスケールで描く映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』(10月31日 公開)。この度、豪華出演者らが一堂に会する本作の完成報告会見が5月13日(火)、都内で行われた。本作で出演した映画が124作目となる主演・吉永小百合は、初の登山家役に挑戦。「元気でやれる限りは、一歩ずつ…」と、自身の芸能人生が“山登り”の途中であることを明かした。
田部井氏は、“女性だけで海外遠征を”を合言葉に女子登攀クラブを設立した日本を代表する偉大な登山家。1975年、エベレスト日本女子登山隊の副隊長 兼 登攀(とうはん)隊長として世界最高峰のエベレスト(ネパール名:サガルマータ、 中国名:チョモランマ)の女性世界初登頂に成功したほか、生涯で76か国の最高峰・最高地点の登頂を果たした。そんな彼女の実話をもとにした映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』が、世界初女性エベレスト登頂という偉業から50周年となる今年、公開する。
本作の主演を務めるのは、日本を代表する映画女優・吉永小百合。映画という高峰へ挑み続け、出演数は本作で124本目。共演には、吉永と『北の桜守』以来7年ぶりとなる名優・佐藤浩市、『最高の人生の見つけ方』で吉永の最高の相棒を演じて以来、絶大な信頼関係を築いている天海祐希。さらに、のん、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずきと、日本映画界を牽引する個性豊かな俳優陣が顔を揃える。13日(火)の完成報告会見では冒頭、本作のモデルとなった田部井氏の貴重なアーカイブ映像を交えた約100秒にわたる特別映像が上映されると、吉永ら豪華キャスト陣に加え、阪本順治監督が登壇した。

女性として初の世界最高峰エベレスト登頂制覇を果たした本作主人公・多部純子(たべ・じゅんこ)役の吉永は「本当に過酷な撮影だったのですが、何とかやり遂げられてホッとしています。本物の田部井淳子さんがてっぺんの向こうから、『よくやったね、頑張ったね』って私たちに言ってくださっているような気がします」と手ごたえ十分。124本目の映画出演作となった本作で初の登山家役に挑み「田部井さんには2012年に初めてお会いして、その時にすごくファンになってから、こういう形で私が演じることになって、すごく幸せでした」と万感の思いを語った。

登山家、そして母として頑張る妻・純子を優しく見守り支える夫、多部正明(たべ・まさあき)役の佐藤は「この世界に入る45年前、将来吉永さんの相手役をやることになると周りに言ったら、鼻で笑われるか、怒鳴られるかのどっちかでしたでしょうね。今こうして吉永さんの相手役をさせて頂くなんて想像もしていませんでした。でも、撮影に入る直前、吉永さんに、『撮影期間中は、お母さん、お父さんと呼ばせてください』と言ったら快く受け入れてくださって、それがすごく心の支えで。支えているようで支えられている、映画の外でもそんな関係性が出来ればいいなと思っていました」と撮影を振り返った。

天海が演じたのは、純子の盟友であり、エベレスト登頂の相棒でもある北山悦子(きたやま・えつこ)。吉永とは『最高の人生の見つけ方』以来の共演となり、今回も吉永と盟友となる役柄を務めた天海は「(純子と悦子のことを)支え合い、お互いの存在に励まされていた関係だったのでは、と今では思いますし、おこがましいけれど、小百合さんとの関係もそうだと思います。素直にまっすぐに悦子さん役に入れたと思います。(純子は)すごくバイタリティがあって、力強くひたむきで、吉永さんにぴったりな役でした。そばで見つめ続けることができて幸せでした」と思いをこぼした。

実話をベースとして本作を撮った阪本監督は「田部井さんの寛容さに支えられてできた映画です。人の人生を2時間にまとめるのは不可能です。純子さんの信念はぶれないようにしながら、ご家族が託しますと仰ってくださったのが心の支えでした」と撮影時の心境を語りつつ、とっておきの秘密を暴露。「純子にアプローチするために、今回吉永さんは田部井さんと同じピアスを同じ位置に開けたんです。これ記事になるでしょう?これ言わなければと思って」と会場の笑いを誘い、吉永は「今日もつけてきました。本物の田部井さんのピアスです」と満面の笑顔でピアスを披露した。
この話を受けて、記者から《ピアスを開けたことによってどのような影響がありましたか?》と質問が飛ぶと、吉永は「この役は開けるしかない!と思って開けました。ただ大変だったのは、1か月泳いではいけないということ。泳がないというのは私にとってとても辛いことでした。とにかく、今回の役に没頭するために開けましたが、今とっても解放されたような気持ちになっています」と役作りの苦労、そしてやりがいを明かした。
また、本作で『北のカナリア』以来13年ぶりに吉永とタッグを組んだことについて阪本監督は「初めての時より緊張したかもしれません。自分のことが、弱みも含めてバレてしまっているので」と心境を明かしつつ、「毎日殺伐としたニュースが流れていますが、この映画は必ず人を元気にします。老若男女、すべての人が元気になると思います。『ミッション:インポッシブル』よりヒットするでしょう!」と自信をのぞかせた。

◆吉永「元気でやれる限りは、一歩ずつ…」
会見の後半では、記者から《本作にかけて、ご自身の芸能人生で今は何合目だと思いますか?》との質問が──。吉永は「8合目くらいでしょうか、元気でやれる限りは、田部井さんのセリフじゃないですけど、一歩ずつ歩いて行けたらと思います」、佐藤は「今は7合目あたりまで来て、引き返そうかな、と思っております(笑)」、天海は「万年5合目。これからも頑張ります!」とそれぞれ回答。
また、吉永は《本作の撮影で得たもの、新たに感じたこと》として、「だんだんセリフが覚えられなくなって、今回佐藤浩市さんと若葉さんにとってもご迷惑をおかけしたシーンがあったんです。それは多分ずっと後まで引っかかっていくことだと思いますが、これからも役をいただけることがあったら、もっともっと勉強して、これからも乗り越えていきたいと思います」と続けた。

《登山ロケでのエピソード》に関して聞かれた際には、「田部井さんが実際にトレーニングされていた埼玉県の日和田山に登ったのがハードで。汗でびちゃびちゃになりながら、常にお父さん(佐藤)が引っ張ってくれて」と明かすと、佐藤が「吉永さんは、撮影中、一言も疲れたとおっしゃらないんですよ。僕は隣で疲れただのなんだの言っているのに。感服しました」と尊敬の念で続いた。
──終わりに、「今こうしてみんなで集まって、撮影の時を懐かしく思い出しています。これからみんなで力を合わせて、皆さんに観ていただけるように10月31日の公開まで頑張りますので、応援よろしくお願いします」と吉永。続いて、阪本監督が「よく僕が言っていることですが、僕らが映画の生みの親だとしたら、観客の皆さんは育ての親。映画館はゆりかごのようなものです。是非映画館で、本作を観ていただきたいです」とアピールし、会見は幕を閉じた。

『てっぺんの向こうにあなたがいる』
10月31日(金)全国公開
配給:キノフィルムズ