最強ボカロP syudou×須田景凪が語る ボカロ業界の過去・現在・未来【後編】

2022.6.17 22:00

日本テレビ系で放送中の『バズリズム02』で実施している次世代の歌い手発掘オーディション「NEXT BUZZ AUDITION SEASON1 -Diamond Voice-」。この企画に最強ボカロPとして参加しているsyudouさんと須田景凪さんに、ボカロ業界の過去・現在・未来について詳しく教えてもらいました。(前編から続く)

<ボカロとは……>
ヤマハが開発した音声合成技術とその応用ソフトウェア「VOCALOID(ボーカロイド)」の略称。2007年にバーチャルシンガー・初音ミクの登場により利用者が増え、ボーカロイド音楽の作曲家は「ボカロP」と呼ばれるようになった。

■ボカロ・ネイティブ世代の新しい才能が日々生まれている

syudouさんのアーティストアイコン

――ボカロ人口が増え、作り手の年代にも変化はありますか?

syudou 一つ僕が思うのは、僕や須田さんや、これまでのボカロPは、別にボーカロイドを入り口に音楽を知ったわけではなかったんですよ。生演奏のバンドや歌手から音楽を知って、その過程でボーカロイドのおもしろさに気づいてボカロもやってみよう、となったんですよね。でも、最近ボーカロイドの曲を作って発表している方々の中には、おそらく音楽の入り口もボーカロイドという方も多いんじゃないかな、という気がしています。

須田 もうルーツがボカロなんだね。新しい才能は毎日生まれていますし。

syudou 10代〜20歳前後のボカロPの方は、ボーカロイドで音楽を知り、ボーカロイドで音楽を学び、ボーカロイドで音楽を表現しているので、より「ボーカロイド」というジャンルに特化した楽曲をつくる方が増えているんです。それが良い、悪いではなくて、自分より上の世代では絶対になかった発想から音楽が生まれているので、めちゃくちゃおもしろいです。

――いまの10代の子たちは、TikTokで流れてくる音楽や、ゲーム音楽、またYouTubeの「歌ってみた」動画などでボカロが流れているのを日常的に見たり聴いたりしていますよね。

須田 確かにTikTokで流れてきた曲が「めっちゃいい曲じゃん」となって、YouTubeで調べてみたら、実はそれを歌っているのが「歌い手」さんで、さらにさかのぼったら本家はボカロだった、という流れで知ってもらうパターンも多くて、そういう意味で一般化されてきたのもありますよね。

syudou 昔はまずニコニコ動画を知らないとボーカロイドにたどり着かなかったんだけど、今はTikTokでもスマホゲームでも、歌い手さんでも音楽チャートでも、元をたどればボカロにたどり着くことがあるから、めっちゃ入り口が増えたなと思っています。

■スマホ一台でもOK!「音楽やってみたい」の入り口がボカロに

須田景凪さん

――では今後のボカロ業界はどうなっていくと思いますか? 

須田 さっきの話にあったように、ボカロがどの入り口から入ってもたどり着くくらいに一般化してきてきたのは確かなんですが、実は昔から僕達がやってきたことは変わっていない気がして。ストイックに好きなこと(=ボカロ音楽作り)をやり続けてきた人達を、少しずつ多くの方が見てくれるようになってきて、音楽業界的にもキャッチーな見え方になっているだけで、ボカロ自体の本質は変わらないと思うんです。
ボカロ衰退とか言われた時期もあったことはあったのですが、ボカロ業界の中ではそんなことはなかったので、好きなことを好きなペースで表現していく場として、ボカロは今後もずっと残っていくと僕は思います。

syudou 今、音楽に限らずなんですが、自分が好きだと思ったことを表現するまでの距離がどんどん短くなってきていると思うんです。スマホ一台あれば絵を描くことも、映像編集も何でもできるし、発表もすぐできる。そういう意味ではボーカロイドというのは、音楽に興味を持って「あ、おもしろい」「やってみたい」と思った人の入り口として機能するのかなと思うんです。
一昔前は、音楽をやりたいと思ったら楽器を買ってスタジオで練習して……という作業が必要だったのが、今はボーカロイドを一台買って、なんとなくトラックをつくって投稿すれば「よっしゃ、今日から君もプレーヤーだぜ」と、なれる。そういう意味で、音楽づくりの入り口としてのボーカロイドの役割が広がっていくと思います。

須田 スマホだけで音楽をつくるボカロPもいますし、本当に誰でもできる時代になりましたよね。正直、やってみて飽きたらやめてもいいし、そのくらいラフにできる場所になったと思います。

syudou それがすごく、本来あるべき姿な気がしますよね。

須田 ね。

syudou 音楽やるなら命がけでやらなきゃいけない、みたいのは堅苦しすぎるような。もちろん、そういう方がいてもいいんですけど、興味あるからやってみよう、というのが許される時代になってきていて、その方が僕は健全な気がしています。

■シンガーソングライターとして個人の活躍も充実させたい

syudouさんの最新ボカロ楽曲『デイバイデイズ』(2022.6) 

――須田さんは2017年から、syudouさんは2021年からシンガーソングライターとしての活動もスタートされています。個人としての今後の目標などもお聞かせください。

須田 僕は先日『METOROCK』という音楽フェスに参加させてもらったんですが、それが初フェスですごく楽しくて。ずっと引きこもって音楽をつくっていた僕が、僕の音楽を知らない人達の前でライブをするなんて……数年前の自分だったら考えられないことで。今までインターネットの画面越しで歌を届けていたのが、ライブだったら生で届けることができるという楽しみを知ったのは大きな変化でした。
とはいえ、自分のために音楽をやっているというスタンスは変わっていないので、その軸はブレずに自然に変化していけたらいいなと思っています。

syudou 僕は、もっともっと個人的になっていきたいと思っています。ボカロ音楽を発表してきた過程では、とにかく自分を知ってもらおうという気持ちがあって、どうやって目立っていけばいいんだろうとか、何をやれば知ってもらえるんだろうということを、ずっと考えてきたんです。最近、まだまだではありますが、ちょっとずつ結果が出てきているので、僕のことを知ってくださる人が増えれば増えるほど土台が出来上がって、さらにやりたいことができるようになる部分があるし、そうしていきたいです。

――個人の活動が基盤にあって、そこからやりたいことを広げていくということですね?

syudou そういうイメージです。最終的には、僕が散歩をするだけでTV番組が成り立つくらいになりたいんです! 散歩の番組って、究極に個を確立した結果だと思うんですよね。音楽だったら、僕が今までやってきたものと全然違う音楽をやっても皆さんが楽しんでくださるくらい、個人的な楽しさを突き詰めた上で、ちゃんと規模を拡大していきたい。自分にとってのパラダイスを築き上げたいです!
その一歩目として8月に初めて観客を入れてのライブを実施します。ライブって、僕がこの日この場所で音を出すからみんな来いよ、という呼びかけに対して来てくれる方がいるわけじゃないですか。それが超うれしいし、その気持ちをどんどん突き詰めていきたいと思っております。


【syudouプロフィール】
2012年からインターネット上でボカロPとしての活動を始める。
現在までに「邪魔」や「ビターチョコデコレーション」、「コールボーイ」、「キュートなカノジョ」など多くのヒット曲を発表。独自のダークな世界観が人気を呼ぶ。様々なアーティストへの楽曲提供を手掛け、2020年10月にAdoに提供した「うっせぇわ」では、さまざまなチャートで1位を獲得。
2021年3月よりシンガーソングライターの活動も開始する。2022年8月には初となる有観客ライブ『syudou Live 2022「加速」』を開催予定。

【須田 景凪(すだ けいな)プロフィール】
2013年より“バルーン”名義でニコニコ動画にてボカロPとしての活動を始める。
2016年に発表した代表曲「シャルル」は自身によるセルフカバーバージョンと合わせ、YouTube での再生数は現在までに1億回超えを記録しており、JOYSOUNDの年代別カラオケランキング・10代部門では3年連続1位を獲得するなど現代の若者にとっての時代を象徴するヒットソングとなっている。
2017年10月、シンガーソングライター “須田景凪”として活動を開始。

日本テレビ系『バズリズム02』 毎週金曜24:59~OA 

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