作家・中山七里「本を読んだことがない人にとって、オーディオブックが一つの突破口になれば」Audible日本10周年記念プレス発表会レポート

2025.10.24 16:15
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Audible 日本 10 周年記念プレス発表会

Audible は 2025 年、日本でサービス開始から10周年を迎えた。これを記念して、10月21日に「日本10周年記念プレス発表会」が開催された。本イベントでは、10年の歩みを振り返るとともに、今後の展望や新たなスペシャルコンテンツを発表し、作家の中山七里や、俳優の濱田岳をゲストに迎えたトークセッションも実施された。

■10年の歩みを振り返り、次なる10年を展望

Audible は 1995 年にアメリカで生まれ、2008年にAmazonグループの一員となったオーディオブックおよび音声コンテンツ制作・配信サービスだ。2015年に日本向けサービスを開始し、2022年に聴き放題プランを導入。さらに、今年6月からはAmazon Music Unlimitedの会員も利用できるようになった。

Audible カントリーマネージャーの逢阪志麻がAudibleの日本向けサービスの持続的な成長は、コンテンツの拡充、会員満足度の向上、利用時間の増加の3つの要素に支えられ、これらが互いに作用し合い、好循環を生んでいると説明した。

次に、日本でのサービスの浸透、最新の調査結果から日本のオーディオブックリスナーの聴取傾向について解説された。まず、Amazon Music Unlimited 会員向けのサービスを始めてから2か月となる8月における、Amazon Musicを通してAudible を利用したリスナーの聴取時間は1人あたり平均3.68時間だった。

また、オーディオブックを聴き始めることで紙の本や電子書籍などオーディオ以外で楽しむ読書量が増える傾向があることや、作品選ぶ際に作家やナレーターを重視するリスナーが増えていることも発表された。さらに、日本では他国に比べると外出時や移動時のオーディオブック利用が少ないことも紹介。逢阪は、これは日本における大きな成長機会を示唆していると伝えた。

また、過去10年間に日本で最も聴かれた作品トップ20も発表。サービス開始当初はビジネス書や自己啓発本がよく聴かれる傾向があったが、2022年の聴き放題導入後、ジャンルの広がりが加速化し、現在は実用書からエンタメまで、幅広いラインナップへと発展している。

2025 年は日本で新規制作する作品数が前年比40%増予定であることに触れ、逢阪は「出版社やナレーター、クリエイターの皆様と連携し、より一層充実したコンテンツをお届けし、日本におけるオーディオリスニング文化の定着を推進してまいります」と、未来に向けたメッセージを記者に向けて伝えた。

■10周年を記念した豪華コンテンツラインナップを発表

続いて、Audibleの『日本10周年記念スペシャルコンテンツ』の3本の柱について説明が行われた。

1.オーディオファースト作品の強化

Audible はすでに出版されている作品のオーディオブック化だけでなく、第一線で活躍する作家がAudibleのために書き下ろした「オーディオファースト作品」も配信している。日本ではこれまでに28作品をリリース。昨年配信した東野圭吾の『誰かが私を殺した』は配信開始から90日間に、人気作品『成瀬は天下を取りにいく』と比較して1.5倍ものウェブおよびアプリへのアクセスを記録するほどの注目を集めたと、Audibleでしか体験できない作品へのユーザーからの期待が集まっていることが解説された。

そして、10周年を祝すスペシャルコンテンツのひとつとして、人気ミステリー作家・湊かなえ初のオーディオファースト作品で、人気声優の櫻井孝宏と早見沙織が朗読を担当する『暁星(あけぼし)』が11月11 日に配信開始、イベント当日(10月21日)より予約受付開始となることが発表された。

湊は上映されたビデオメッセージを通じて「全国高校生総合文化祭の会場で、式典中に大物の政治家が殺される。それを巡って、犯人は手記を書き、その現場にいた作家は小説を書く。1つの事件をフィクションとノンフィクションから見て、どんな真実が見えてくるか……。そういった話です」と、作品のあらすじを紹介。また、他の作品も多くAudibleでオーディオブック化するなかで朗読はひとつの芸術作品で、先に音声で表現されることは面白いと感じたと話す湊。「最新作にして、一番好きな作品」という本作を安心して先にAudibleに預けたと、自身初のオーディオファースト作品への想いを語った。

2.人気作家のオーディオブックの充実

続いて、書籍に人気を博すベストセラー作家の作品が続々と配信されることも発表された。まず、村上春樹の最新長編『街との不確かな壁 上』が10月21日に配信開始。恩田陸の作品は、15タイトルを順次配信することが決定。『月の裏側』『不連続の世界』の2作が10月21日に同日配信された。また、これまでAudibleで配信していなかった村上龍の44作品の配信も発表。年末から年明けにかけて、10作品がリリースされる。

3. Audible オリジナルポッドキャストの提供

Audible はオーディオブックだけでなく、オリジナルのポッドキャストも配信している。10周年を記念し、10月21日から新しい番組の配信が発表された。まず、『A University』が講師陣を迎え開講する。小説家の平野啓一郎が監修する教養講座で、新しい発見や気づきを得られるオリジナルポッドキャストだ。作家の吉本ばなな、建築家の安藤忠雄、音楽家のマルタ・アルゲリッチらが講師として登場する。2026年2月配信予定のLesson 9 では渡辺直美が講師を務める予定で、特別企画として渡辺に聞きたい質問の募集も実施される。

人気お笑いコンビ +・くりぃむしちゅーの2人それぞれが出演するポッドキャストも始まる。有田はオーディオコント番組『有田哲平 耳笑』を配信。上田晋也は、アンタッチャブルの柴田英嗣とタッグを組んで『くりぃむ上田とアンタ柴田の心はいつも半ズボン』を開始される。また、人気声優の斉藤壮馬が好きな本について語る『斉藤壮馬の本心(ほんごころ)』も配信開始される。

■特別ゲストを迎えてのトークセッションも開催

トークセッションには、作家の中山七里、俳優の濱田岳、そして、Audibleの宮川もとみが登場。オーディオブックが作られる背景についてトークが繰り広げた。

濱田は、11月28日に配信予定の恩田陸の『Q&A』と村上龍の『イン ザ・ミソスープ』の朗読を担当。すでに『Q&A』の収録は終えて、現在『イン ザ・ミソスープ』の収録に取り組んでいる。「普段は1人を演じていますが、朗読は多くの登場人物のバックボーンを想像し、寄り添わなければならない。女性同士の会話など、新しいチャレンジで、難しさはありましたが楽しかったです」と濱田は語った。

会場では濱田が朗読する『Q&A』の一部も初公開され、それを聴いた中山は「原作を拝読しているが、音声になるとこれだけ変わるのか。物語の輪郭や実像が浮かび上がってくる感じがすごい。声の芸術ですね」と絶賛。今回、2作品を連続して収録している濱田は、実はとても珍しいケースだ。Audibleの宮川は「1冊の朗読でも読み込み作業やキャラクター作りなど大変なのですが、濱田は異なる作家の2作品に連続して取り組みながら、物語の理解度が深く、細かい部分まで演じ分けてくださる。ここまでツワモノの方は、なかなかいらっしゃらないです」と語る。中山も「自分の作品を音読してみたことがあるのですが、10ページが限界でした」と朗読の大変さについて同意した。

中山は初のオーディオファースト作品をちょうど書き終えたところ。まだ題名は言えないものの「主人公は火災原因調査員」と伝え、「読みやすい文章は聴きやすい。つまり、読みやすい文章が朗読に向いている。これからは朗読を念頭において書く作家も増えてくるのでは。今は読みやすい文章が求められているので、Audibleで評価される作品は、紙の本でも必ず評価されるはず」と作家目線でオーディオブックの魅力を語った。そして、「今まで本を読んだことがない人にとって、オーディオブックが一つの突破口になれば。本を手に取る機会、チャンネルを増やしたい」と熱い想いを伝えた。

■11月に『エキナカAudible体験』イベントを開催

最後に、今秋実施されるAudibleの新しい取り組み「エキナカAudible体験」が紹介された。東京の渋谷駅(11月7日〜9日)、大阪の梅田駅(11月14日〜16日)で、Audibleを気軽に視聴することができるイベントで、特別に湊かなえのオーディオファースト作品『暁星』の一部を聴くことができる。

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