ゾンビと人間が紡ぐ友情――『リトル・ゾンビガール』が問いかけるもの

日生劇場ファミリーフェスティヴァル2025の一環として上演された、NHKみんなのうたミュージカル『リトル・ゾンビガール ~ノノとショウと秘密の森~』が、8月23日・24日、東京・日生劇場にて上演された。2022年の初演から3年ぶりとなる待望の再演だ。
本作は、人間との共存を願うゾンビの少女ノノと、人間の少年ショウの友情を描く物語。NHK「みんなのうた」で世代を超えて愛されてきた名曲の数々に彩られ、家族で楽しめるエンターテインメントでありながら、現代社会に通じるテーマを鮮やかに浮かび上がらせる。

ゾンビたちが暮らす森は、ショッピングモールの建設によって奪われようとしている。少女と少年の間に生じる小さなすれ違いはやがて大きな対立を予感させるが、最後に選ばれるのは武力ではなく「話し合い」での解決だ。戦後80年の夏に、このような物語を子どもたちが観る意義は大きい。争いを越えて共に生きる未来を信じる力は、大人にも改めて突きつけられるメッセージである。

ノノを演じた熊谷彩春は、「ただの再演ではなく、全員で“新しいものを生み出そう”という強い思いがあって、俳優もスタッフも積極的にディスカッションをして、繰り返し試行錯誤してきました」と語る。子役時代から舞台に触れてきた彼女は、「幼い頃にミュージカルを生で観てすごく感激して、それ以降ミュージカルの世界に行きたいという夢を持ったので、この作品を観て、一人でも多くの子供たちが舞台って素敵だなと思ってくれたら嬉しいです。」とも。彼女の歌唱は、葛藤を抱える心情を圧倒的な声量と表現力で描き出し、その瞬間、劇場全体が息を呑んだ。

ショウ役の南野巴那は、「舞台稽古で照明があたったセットを初めて見たとき、すごく色鮮やかで心を奪われました。10歳の男の子という自分とは異なる役を演じることに、改めて身が引き締まる思いです」とコメント。さらに「子供たちは“知りたい”という気持ちひとつで、ゾンビと人間という全く違う世界を繋ぐことができるし、分断を飛び越えていく」と、この作品の魅力を語った。瑞々しい感性が、そのまま舞台上でのエネルギーに変わっていた。

また、ゾンビの長老リリィを演じた大和悠河は、「再演を迎えるにあたり、作品のテーマや核がよりクリアに見えてきて、“大人にも子供にもぜひ観ていただきたい”と心から思える仕上がりになりました」と強調する。「世界中で対立や争いが起きている今だからこそ、この作品が伝える『お互いを思いやること』の大切さが強く響くのでは」と語る言葉には、作品の核を担う存在としての重みがにじむ。

すでに幕は下りたが、ゾンビと人間の友情が投げかけたのは、「共にどう生きるか」という普遍的な問いである。その響きは観客一人ひとりの心に深く残り続けるだろう。戦争体験を語れる人が少なくなり、記憶が歴史へと移ろいゆく今、私たちはこの物語をどう受け止め、どんな未来を選び取るのか――その答えを探すことこそ、この舞台が託した最大の宿題なのかもしれない。
NHKみんなのうたミュージカル「リトル・ゾンビガール」~ノノとショウと秘密の森~ 公開舞台稽古