『大阪万博・日本館』総合プロデューサー・佐藤オオキが語る「過去を振り返る」の深い意味と『ドラえもん』の関係
2025.7.27 08:00
『循環』をテーマとし、万博における日本の顔である日本館をデザインした佐藤。デザイナーとしての原体験には、日本を代表する漫画が関係しているという。カナダで生まれ、11歳になって日本に戻るまで、海外で暮らしていた佐藤にとって、日本を知る手段は『ドラえもん』であったとのこと。日本は漫画の中で描かれるフィクションであり、それゆえに日本にやってきたときはすべてが新鮮に思えたのだとか。
「ドラえもんの世界だ、すごい、ってなって。周りの子たちが“こんなの普通”っていうものが、僕にとってはすごく面白い。たとえば学校に行くと上履きってありますよね。さらに体育館履きってあって、場所とかやることによって靴を替えるって、なんて面白いんだろうって」と、少年時代を想起する。しかし佐藤にとっての驚きも、周囲の日本の子どもたちにとっては当たり前のこと。そうしたギャップから「当たり前のものでもちょっと見方を変えると面白くなる」と気づき、それがデザイナーとしての根幹をなしているという。
日本人でありながら、海外の人のような視点も持ち合わせて日本を面白がる。そうして完成させた日本館、さらに万博会場を眺め佐藤は「これが全部、あと数か月ですべてなくなるんですよね」と一言。「ある意味ばかげてますけど、こういうばかげてることこそが、今求められてると思う。(現代は)全てまともじゃないですか。まともなことしか許されない世の中で、これだけの街ですもんね。街を作って、半年でなくなるっていう、衝撃ですよね」としみじみとした様子で語った。
仕事全体を振り返り、「一巡して原点回帰というか、すごく晴れやかというか、心が軽い感じがしますね」という佐藤。五輪や万博など、失敗の許されない大仕事が続いたからこそ、次は「失敗したいな」とつぶやく。「ここ10年くらい、1mmも失敗が許されないプロジェクトが続いてきたので、ちょっと思い切ったアイデアだったり考え方であったり、そういうことをしてみたいなと思いますね」と、新たな挑戦に意欲を示し、今回の万博をめぐる旅を総括した。

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