声優・中村悠一「僕はあまりキャラクターを良く見せたくない」セオリーとは真逆?人間臭さにこだわる役作り アニメ『TO BE HERO X』<黙殺>編
2025.7.22 17:00
多様なヒーローのオムニバス形式の物語が徐々に集約されていく、スーパーヒーロー活劇アニメ『TO BE HERO X』。7月20日(日)に<黙殺>編がクライマックスを迎えたこの度、entaxでは演じ手である声優・中村悠一に独自インタビュー。「キャラクターをあまり良いように見せたくない」という、一見セオリーとは真逆とも思える役作りについてや、2つのエピソードで完結する黙殺編で特に印象的なシーンなどを聞いた。
(※アニメ第16話までのネタバレを含みます)
人々からの「信頼」がデータとして集計され、その数値によって“ヒーローランキング”が変動するという独自の世界観で描かれる『TO BE HERO X』。中村演じる黙殺は、ランキング第4位に位置するトップヒーローの1人。端正な顔立ちと、言葉を発することなく任務を全うするクールさで人気を博している。
だがその一方、“彼は決して喋(しゃべ)らない”という世間の強すぎるイメージによって、愛する娘にさえ言葉を届けられないという悩みも抱えたキャラクター。15話・16話を通して色濃く描かれたその葛藤は、黙殺編のラストで彼の“日記帳”が鍵となり一旦の解決を見たが、果たしてこの先どんな展開が待っているのか──?

◆“心のブレ”を探る役作り
──中村さんは普段、どのように役作りを?
中村 一番「この役をどうしよう」って考えるのは、収録の前日ですね。台本を読んで映像に合わせて、という時に「キャラクター設定的にはこうだからな」とか、絵を観ると「こういう表情をするんだ」とか色々イメージして──(チェック用に)いただく映像の表情変化というのも、キャラクターの心がどこまでブレて動いていく人物なのかなどを探る指標にしています。
中村 そういうものを参考におおよその肉付けをした上で、現場でいただいた演出で「ああ、そういう風にここを喋るってことは、このキャラクターはこういう場面ではこういう風に思考していくんだ。じゃあ、他のところでもこんな風には言わないのかもな」と、さらにちょっとずつ肉付けをしていくので、毎回発見があるんですよね。
──黙殺を演じる上ではどうでしたか?
中村 今回もやはり14話、15話、16話…と経ていって、キャラクター像を固めていくのは変わりなかったかなと思いますが、黙殺の気持ちというか、どういう風に喋るんだろうかとか、どういう風に語尾を置くのか、分節を切るのかとか、そういうのを色々と考えてやっていました。声をすごく変えるとかそういうことじゃなくて、彼の気持ちから出る言葉はどういうものなのだろうって考えたりしました。
中村 (黙殺の)登場話数がロリ編の後半(14話)に差し掛かってだったので、試行錯誤が増える分やっぱり大変ではありましたね。その段階ではほとんど喋っていないキャラが、自分のエピソードの1番目から突然すごく喋るとなると、キャラクターとしてどういう風にやっていくか固めるのかが、まだ行われてない状態なので。

──それだけ黙殺と向き合っていると、だんだん親近感を抱いたりも?
中村 全く感じないですねぇ、僕は口数多いので(笑)でも、あんまり感じない方が(似ていない方が)演じやすい気はしますね。自分自身のことをアウトプットする時って、みんなたぶん少なからず“良いように見せようとする”と思うんですよ。だから、キャラクターと自分が“演じさせていただくもの”が似ているとなると、それをいいように見せようとし始めてしまうじゃないかなと──。
中村 僕はあんまりキャラクターを良いように見せたくないんですよね。黙殺だったら、黙殺をただかっこいいとか良い感じにだけ見せるんじゃなくて、弱みがあったりダメな点があったり、人間臭くしてあげたいと感じているので、似てないキャラクターの方が演じやすさがあると思います。

◆2つのエピソードを通してたどり着いた「黙殺」の心根
──では、特に「似てない」と思うところは?
中村 あんなにモノローグしないところ、ですかね(笑) あそこまで自分の中に感情を閉じ込めはしないかなと。やっぱり黙殺という人物が周りに対して──例えば16話(黙殺編 後半)とかでも、心の中では強く思っているけど周囲からの誤解を解くために頑張らない、頑張れないというか…。「ストーカーだ!」って名指しで言われた時も強く否定しない。なんでそこで、ちょっと下がって受け入れちゃうんだと思うんですけど──。
中村 でもたぶん、15話(黙殺編 前編)にあったような、周りがガヤガヤしている環境の中で彼の“黙る”というものが形成されていったことを思うと、やっぱり全部自分の中に“戻しちゃう”んですよね。発信して、そこに参加して、自分も大きい声を出して言い合うんじゃなくて、自分の中に飲み込むことによって状況を終わらせるということをしてきたんだろうなって…。
中村 妻との間にすれ違いが生まれた時も、せめて文字は書けると思うんですよ。でもそういう、弁解するという行動自体が彼の中ではできないものなんだろうなと。だから、ある意味では優しい人物だと思うし、ちょっと主張が弱いというところがいい点でもあり、悪い点でもある人物かなと感じました。

──演じられていた中で、中村さんが特に好きになった黙殺編のシーンを教えてください。
中村 僕は後半16話の方の、ノート(日記帳)にかかるボイスオーバー。ここのところはすごく好きで、アフレコをやっている時も印象的なセリフ群だったなと感じました。15話はどっちかというと、もう固まっちゃっている、凝り固まっている苦い痛みのあるお話をしているわけですけど、16話は娘を見守るお話をしているわけじゃないですか。そういうところに、どのぐらいの彼の愛情みたいなものを乗せるかとか、そこら辺はすごく細かいさじ加減でいかないといけないし、丁寧に演じないといけないなと感じましたね。

──ありがとうございます。最後に、中村さんが思う“ヒーローの条件”とは?
中村 他者よりも優れた何かの力というのは、ある程度必要なのかもしれないですけど、自分の信念に基づいて動いていれば、きっと誰かにとってヒーローなのかなと思います。

【中村悠一】
香川県出身。2月20日生まれ。インテンション所属。
主な出演作として『呪術廻戦』五条悟、『WIND BREAKER』梅宮一、『葬送のフリーレン』ザイン、『チ。-地球の運動について-』バデーニ、『おそ松さん』松野カラ松、『出禁のモグラ』百暗桃弓木、吹き替えでは『アベンジャーズ(シリーズ)』キャプテン・アメリカ(スティーブ・ロジャース)など。

アニメ『TO BE HERO X』
毎週⽇曜朝9時30分〜フジテレビにて放送中
毎週⽉曜12時〜Netflix &Prime Videoにて最速配信中
毎週⽔曜12時〜ほか配信プラットフォームにて順次配信中
【公式サイト】
【公式X(@tbhx_officialJP)】
※推奨ハッシュタグ #TOBEHEROX