『きみセカ』プロデューサーに単独取材「コロナ期間はゴーレム同士もソーシャルディスタンス」知られざる撮影秘話に“え~そうだったの!”

2024.2.18 15:30

現在上映中の映画『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』の鈴木亜希乃プロデューサー(AX-ON)に、entax取材班が単独取材。日本では珍しいゾンビもののオリジナル作品として、地上波のTVドラマ立ち上げから6年近く『きみセカ』に関わってきた鈴木プロデューサー。地上波ぎりぎりのラインまで攻めた“ゴーレムメイク”や、コロナ期間のソーシャルディスタンス・アクションなど、今だから笑い話にできる撮影秘話を聞いた。

【作品紹介】
日本テレビ×Huluによる共同製作の連続ドラマ『君と世界が終わる日に』。ゾンビ化したゴーレムと戦う極限のサバイバルアクションと、愛する者同士の絆(きずな)を描いたシリーズはSeason4まで続き、今回初の映画化。『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』が全国公開中。

(#1~3の2/#1はこちらから)

■ゾンビの描き方は地上波のボーダーラインぎりぎりまで攻めた

――日本では珍しいゾンビ作品を撮るにあたって、どのあたりが大変でしたか?

鈴木 まず地上波で放送するのに、ホラーに特化するのは厳しいですよね。深夜帯ならまだしも、GP帯(19~23時のゴールデンプライム帯)という誰もが目にする時間での放送だと、どこまでグロテスクにしていいかというさじ加減が難しかったです。

また、Season2の配信につながると言っても地上波のドラマだけで見るのを終わりにする方もいらっしゃるので、いったんハッピーエンドにするまでを描くということは気をつけていました。

逆に言うと、配信になってからは少し残虐なシーンやグロテスクなシーンも登場するなど、明らかに地上波とは表現を変えていきました。

『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』のワンシーン
間宮響(竹内涼真)と柴崎大和(高橋文哉)

――やはりテレビは子どもから年配の方まで見るもの、という前提でドラマを演出しなくてはいけないですよね。

鈴木 はい。でも、そういった制限がある中では攻めた方だと思います。その結果、地上波のSeason1でも怖くて見られないという方もいらっしゃいましたし、逆にゾンビものが好きな方には手ぬるいと見られてしまったり……。そこはドラマの制作班としても勉強になりました。今回のような挑戦的な作品をつくらない限り、地上波のボーダーラインがはっきりとすることはないと思うので。もちろん受け取り方は人それぞれなので正解はないと思います。

私としては、ゾンビものが苦手な方にもゾンビもののおもしろさを伝えたいという気持ちがありました。マニアックなイメージがあって食わず嫌いだった方にも、意外と人間同士の絆や感動がある物語なんだ、と発見してもらって、違うジャンルのおもしろさを提供することはできたのかな、と思っています。

『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』メイキング
間宮響役の竹内涼真

■コロナ期間はアクションシーンもソーシャルディスタンス

――Season1~2の撮影は、ちょうどコロナ禍に重なったと思います。当時撮影で苦労した点を教えてください。

鈴木 規制が多くて大変でした。出演者は20人まで、と決められてしまい、本当だったらゴーレム100人くらいが襲ってくるような迫力ある映像が撮りたかったのに全然できなくて。しかも、一人一人にソーシャルディスタンスを求められていたので、ゴーレム同士も距離があるという(笑)。ゴーレム役はアクション部の役者が演じているのですが、どこまで近づいてアクションできるかも手さぐりでした。そこは撮影部にうまいアングルを考えてもらったり、CGの力も借りたりして成立させたようなシーンばかりでした。

ただシーズンが進むにつれてコロナの規制も緩和されていき、ゴーレムの人数も増えていきました。そして、本当は最初の地上波でやりたかった、大勢のゴーレムが出てくる“ゴーレムパニック”の映像を、今回やっと劇場版で撮ることができました。

――ソーシャルディスタンスを取りながらのアクションって難しいですよね。

鈴木 飛沫(ひまつ)が飛んではいけないというので、最初の頃はゴーレムも本番ギリギリまでマスクをしていました。そこはメイクチームに迷惑をかけた部分ですね。ゴーレムメイクをした状態でマスクをするので、本番前にまたメイクの塗り直しをしてもらっていました。フェイスガードやマウスガードだと硬いので、アクションだと互いに当たってしまうと危ないということでリハーサルもマスクが欠かせなかったです。でも、そうやって色々と気を遣ったおかげで現場からは一人もコロナに感染しませんでした。

『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』メイキング
キャストとゴーレムで記念撮影

■ゴーレムメイクは夜中からスタート

――では特殊メイクチームも大変でしたね。

鈴木 大変だったと思います。特殊メイクや照明さんなど、普段は映画作品をよく手がけるチームに来てもらっていたのですが、そもそも地上波の放送でもOKなゴーレムをつくり上げるということで「怖がらせたいんですか、怖がらせたくないんですか、どっちですか?」と確認されてしまうような発注の仕方になってしまって。地上波のドラマだからこのくらいのメイクで、とお願いしていました。

――コロナの規制がなくなって、最大何人くらいのゴーレムを投入できたんですか?

鈴木 一番多い場面では、ゴーレムと人間合わせて約300人でした。ゴーレムだけでも50~70体くらいです。菅原監督からは、最低50体、ピークで100体のゴーレムが欲しいと言われていましたが、それだとお金もかかるので……コロナの規制がなくなっても、悩みは尽きなかったです(笑)。

『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』のワンシーン
竹内涼真と高橋文哉(後ろ姿)

――ゴーレムメイクを仕上げるのにどのくらいの時間がかかるのですか?

鈴木 そうですね……特殊メイクチームの人数がそこまで多いわけではないですし、ゴーレムメイクが完成するまで一人あたり2~3時間はかかるんですよ。例えば40体のゴーレムが必要、となった場合ですと、午前1時~2時にメイクさんとゴーレム役の方に現地入りしてもらい、撮影開始できるのが午後や夕方になってからでした。一時期、かぶるだけでゴーレムになれるフェイスマスクをつくってもらったこともあるんです。でもそのマスクをかぶってアクションをすると息が苦しく汗をかくので良くない、さらにクオリティも実際のメイクよりは“作りもの感”が出てしまう、とうまくいかず。ゴーレムメイクに関してはけっこう試行錯誤しました。

ゴーレム役の方はアクション部の役者さんなので、他のキャストへのアクション指導などもゴーレムの格好をしたままでやってもらうような状況もありました。スタッフの一員として特殊機材を運んでくれるなど手伝ってもくれる場面もありました。一人何役もこなしながら人員的にもフル稼働でやってもらいました。

(#3へつづく)

【鈴木亜希乃(すずき・あきの)Profile】
日テレAX-ON所属のドラマ制作部プロデューサー。プロデューサーとしての主な作品はNHK BSプレミアムドラマ『お父さんは二度死ぬ』(2013年)のほか、日本テレビ系ドラマ『デスノート』(2015年)『そして、誰もいなくなった』(2016年)『トドメの接吻』(2018年)『トップナイフ 天才脳外科医の条件』(2020年)『ムチャブリ!わたしが社長になるなんて』(2022年)などがある。

【Information】
『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』
全国東宝系にて大ヒット公開中
監督:菅原伸太郎
脚本:丑尾健太郎
出演:竹内涼真 高橋文哉 堀田真由 板垣李光人 須賀健太 黒羽麻璃央 吉田鋼太郎

ⓒ2024「君と世界が終わる日に」製作委員会

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