成田悠輔「そんなにヤバイこととは…」 眠りマスター・柳沢正史教授が明かす“寝不足”がもたらす深刻な問題

2023.12.20 17:00

「昨日は寝不足でゾンビ状態、今日は寝過ぎで頭が痛い成田です」と始まった『夜明け前のPLAYERS』第11夜。番組MCの経済学者・成田悠輔がこの日リモート対談したのは、睡眠研究の第一人者である筑波大学の柳沢正史教授だ。今、最もノーベル賞に近い日本人と言われる人物との対談に「一流の研究者同士の対話が聞けるのはまじでありがたすぎる」「面白すぎて睡眠時間削って見ました」とネットでも話題となった。

柳沢教授は1998年、脳内で睡眠をつかさどる物質『オレキシン』を発見、睡眠障害の治療薬開発に貢献するなど睡眠のメカニズム解明に挑む世界的な権威だ。そんな柳沢教授を成田は”眠りマスター“と呼び、眠りとは何ぞやという根本的な問いをぶつけた。

昆虫もクラゲも眠る 「進化の過程でも眠らない動物は出てきていないんです」

「睡眠とは具体的にどういう状態で、どういったメカニズムを持っているかは、実はまだきちんとは解けていないんです」と柳沢教授。分かっていることとしてまず、よく言われる「睡眠は脳の休息」という認識は正確ではないと明かした。

脳をコンピューターに例えると睡眠とは、オフラインでメンテナンス作業をしている状態と似ているらしい。脳は24時間動いていて、睡眠中のメンテナンスで記憶が整理されたり、スポーツなど体が覚える技能がうまくできるように機能したりと、睡眠が脳にもたらす良い効果は数々の論文で実証されている。

また、哺乳類はもちろん、昆虫やイカ・タコなどの無脊椎動物も、脳と呼べるものを持っていないクラゲなども含め全ての動物が眠るのだそうだ。「危機回避が困難になるリスクがあるにもかかわらず、全ての動物が寝るというのは不思議だ」と柳沢教授。一方で、動物にとって“睡眠”が重要なことは分かっていながらも、「なぜ眠る必要があるのか」といった単純な問いには、最先端の研究を持ってしてもいまだ答えられないのだと言う。

成田は「睡眠の良い効果を眠り以外で得ている動物はいないのか」「睡眠を取り除く“アンチスリーピング”のようなことはできないか」と質問の変化球を投げるのだが、「進化の過程でも眠らない動物は出てきていないんです。動物から睡眠を消し去ることは、私は不可能に近いのかなと感じています」と柳沢教授に言われてしまう。

2人の会話はさらに、睡眠の反対側に存在するものとして“意識の研究”の話、睡眠の中で起こる“夢”の内容を知る技術の話など多岐にわたりながら睡眠の実態に迫る。この様子に視聴者から「質問の繰り返しで段々と深いメイントピックに迫っていく」「どんどん深掘り、どんどん拡充していく。これこそがホントの対話」と成田の質問術に感心する声が上がった。

睡眠不足によって利他的な行動が不能に 「人間として嫌なヤツになる」

柳沢教授は、睡眠に関する重要な3つの要素、量・規則性・質の中で特に「十分な睡眠量を確保しなければいけない」と量についての見識を語った。睡眠の適量は個人差があるが平均して7時間が目安。6時間以下で良いという“ショートスリーパー”はまれ稀(まれ)なのだそうだ。

「私はショートスリーパーだ」と言う人がいることを成田が指摘すると柳沢教授は、それは自称ショートスリーパーの可能性が高く、自称ショートスリーパーの99%以上が寝不足に対する自覚症状がない人なのだと言う。

本物のショートスリーパーは、柳沢教授の肌感覚では数百人に1人かそれ以下。確かな数字を挙げられないのは、本物のショートスリーパーを見つけ出すことが困難なためにきちんとした論文が出来ていないからだとか。

ショートスリーパーのみならず、問題は寝不足だ。例えばアメリカでは、太陽が出ている時間を有効活用するために日の出時刻が早まる季節はサマータイムとして時計の針を1時間進める。つまり、サマータイムの初日は1日が23時間になり、1時間の寝不足となるのだが、その日のチャリティー寄付額は通常の半分程度に減ってしまうというデータがあるのだそうだ。

「人間として嫌なヤツになるんですよ」と柳沢教授。「睡眠が足りないと脳の利他的な行動をつかさどる領域の活動が下がるという論文もあるんです」と注意を促す。

寝貯め=睡眠の“貯金”はできない!? 「必要な睡眠を取ると起きてしまう」

睡眠不足を慢性的に繰り返す「睡眠負債」が生じると、問題はさらに深刻だ。あらゆることがネガティブに働くという実証がある。アンガー(怒り)コントロールがしづらくなりパワハラが起きやすくなる。メンタルの不調や、メタボリック症候群をはじめとした成人病の発症、認知症やがんのリスクの上昇などが分かっている。

睡眠負債は、睡眠不足の翌日から即座にパフォーマンスが低下するという形で現れる。1日6時間の睡眠を10日程度続けるだけで、脳は完徹(一睡もしない完全な徹夜)した時と同程度にパフォーマンスが下がるらしい。

「日本人はそのくらい(の睡眠時間)でずっと生きている人が、ごまんといると思うんです。日本の働く世代はほとんどが寝不足です」と柳沢教授。必要な睡眠を取れば、本来の自分のパフォーマンスを発揮できるのに残念な状態と言わざるをえないと言う。

意識的に感じる“眠気”は、客観的に見たパフォーマンスの低下ほど蓄積したように感じないというデータがあり、無自覚の睡眠不足はさらに怖いと柳沢教授が言う。睡眠不足の状態に慣れてしまうのだとか。「日本人はすごく多いんじゃないかな」と警鐘を鳴らす。

「例えばジャンクフードを食べ続けるとヤバイという認識はあるけれど、30分や1時間睡眠が減るのがそんなにヤバイことだとは意識していないですよね」と成田も驚いた様子だ。

さらに「寝貯めという言葉がありますが、睡眠は貯金できないんです。寝貯めは睡眠負債を返している状態です」と柳沢教授。つまり、睡眠が充足している場合、自分に必要な睡眠時間以上には眠ることができない。起きてしまうのだそうだ。

本対談は『夜明け前のPLAYERS』公式HPでノーカット版が、公式YouTubeでディレクターズカット版が配信されている。

「夜明け前のPLAYERS」
公式HP:PLAY VIDEO STORES
公式YouTubeはこちら

写真提供:(C)日テレ

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