柿澤勇人『スクールオブロック』のリベンジ公演に「行儀よくとかは取っ払って、一緒にはじけて!」

2023.8.24 15:00

2003年に大ヒットした映画『スクール・オブ・ロック』のミュージカル版が、今年8月から日本版キャストで初めて上演されている。名門進学校に突然現れた破天荒な教師が、ロックを通じて生徒たちの個性や才能を見出し、自分らしく生きるロック魂を伝えるストーリーだ。

2015年にアメリカ・ブロードウェイでミュージカル化されて以来、世代を越えた人気を誇っている。日本版は2020年に初演を予定するも新型コロナウイルス感染拡大で全公演中止に。

リベンジ公演となった今回の舞台には、1452名から選ばれた24名の子どもたちが生徒役として出演。破天荒な教師デューイ・フィン役は、2020年時のキャストのまま、西川貴教と柿澤勇人がダブルキャストで演じる。ミュージカル『ジキル&ハイド』を終えたばかりの今年5月、柿澤勇人に3年越しの作品への思いを聞いた。

■大人になりつつあるかつての生徒たちが、嫉妬するような作品にしたい

―― コロナ禍で全公演中止の憂き目に合った『スクールオブロック』ですが、いよいよ始動しますね。まずは今の想いをお聞かせください。

公演中止が決まった時は稽古が始まる前でしたし、台本ももらう前でした。何もできずに終わってしまったっていう感じでした。

でも3年前は僕らに限らずいろんなことが中止になって、僕もこの作品だけじゃなく他にも中止になった作品もあり、そういう意味では僕らだけではなくみんなが経験したこと。ただ、大人たちはこの仕事を続けていればいろんな作品に出会えるチャンスがあるけれど、一番かわいそうなのは子どもたちでしたね。

生徒役の皆さんは厳しいオーディションを通過して、せっかく選ばれた才能のある人たちだったのですが、声変わりがあったり体も成長するのでその時にしかできないものというのがあって、その出演が絶たれたことにも心が痛みました。だからこそ、今大人になりつつある彼らがもし今回の舞台を観に来たら嫉妬するような、「やっぱり、やりたかったな」と思ってもらえるような作品にしたいと思います。

―― 嫉妬ですか?

いい意味でです。役者をやっていく上で、嫉妬とか妬むことっていうのはエネルギーになるので、大事なことだと思うんです。

@entax

―― 8月からの公演は、新しくオーディションで選ばれた子どもたちと一緒ですね。チームコードと、チームビートの2チームですが、子どもたちの様子はいかがですか?

まだ稽古に入っていない(5月中旬)ので、ビジュアル撮影やイベント出演などで3回程度しか会っていないのですが、ほんとうに素直で、何の色も付いていないピュアなところを持っている元気な子たちです。

みんな、大人ではできないようなことも軽くできちゃうし飛び越えてしまえる年齢。心も体も柔らかい人たちばっかりなので、(これからの稽古で)そこに刺激を受けるんじゃないかな。きっと僕らが学ぶことも多いと思っています。

特にギターの子たちは、二人とも僕なんかよりも数百倍もうまい。数時間ですけど一緒にいてギターを触っているのを見ていると、たぶん天才なんでしょうね。先生みたいな人たちなんで、教わらなければと思っています(笑)。

写真提供:ホリプロ、撮影:田中亜紀

―― 柿澤さんが演じるデューイ・フィンは、熱すぎて落ちこぼれてしまうロックミュージシャンです。常にテンションが高いですが、生徒役の子どもたちも負けずにテンションが高いですね。

生徒役の子どもたちは物おじしないんですよ。こういう作品に出るとなったらいろいろ指導されるだろうし、子役はこうしなきゃいけないみたいなことを教わるはずなんですが、それが今回はあまり要らない気がしています。

そういう意味では今回の子どもたちにそれは、ない、気がする(笑)。もちろん人それぞれですけど、今回の作品においては要らない。だから、締めるところは締めて、あとは騒ぎっぱなしでもいいんじゃないかなって思うんです。

■「気持ちを解放して生きよう」という普遍的なテーマ ロックを知っているか否かは重要じゃない

―― 原作は、2003年にアメリカで上映された映画『スクール・オブ・ロック』です。ミュージカル化されてアメリカやイギリスでも人気ですが、欧米よりもロック文化が浸透していない日本での初上演にどう挑まれますか?

確かにこの作品にはロックアーティストの名前がバンバン出てくるし、日本人になじみのない固有名詞もいっぱい出てきます。ロックが好きな人はもちろん知っていると思うんですけど、ミュージカルが好きな人にとっては何となく知っているけれど、っていう感じかもしれません。

でもこの作品は、ロックの面白さというものを伝えるというよりは、「自分はどうしたいのか」「自分はほんとうは何を思っているのか」というのを音に乗せて、圧力に負けずにその気持ちを解放して生きていくことが一番いい、それがイコール、ロックな生き方なんだよということを表現していると思うんです。

その本質的なテーマはすごく普遍的なものだと思うから、ロックの歴史だとか、バンドだとか、誰誰を知っているとか知らないとかっていうのはあまり重要じゃないのかなと思っています。

当然アメリカやイギリスではそういう単語が出ただけで沸くかもしれませんが、日本ではそれはないと思います。海外の作品を日本でやる場合はどの作品もですが、普遍的なところを探るのが一番大切なのかなと思っています。

写真提供:ホリプロ、撮影:田中亜紀

―― ロック音楽コメディとも言われます。コメディという点ではどうでしょうか。

コメディというジャンルだと、福田雄一さんの舞台や三谷幸喜さんの舞台で演じてきましたが、今回大事なのは先ほどの普遍的なテーマなので、デューイは面白くなくて、イタくてもいいんですよ(笑)。

もちろん客席が沸いてくれればうれしいですが、若干イタくてサムくてもそれが通用すると思うし、デューイ本人はそれを何とも思っていない。そんなもん「ファック!」くらいに思っているんで、別に気にしいないです。ただ、テンションが高いってことだけですかね。そこは、体力的にかなりきついのかなと思いますが(笑)。

写真提供:ホリプロ、撮影:田中亜紀

■子どもたちと繰り出すポジティブなエネルギーを受け取ってほしい

―― 最後に「ここを楽しみにしてほしい」というところを教えてください。

曲調もそうですが、『スクールオブロック』は子どもたちとロックバンドを組んで成長していくガンガン盛り上げる舞台です。ミュージカルってたまに、おしゃれな曲とか盛り上がる前の準備みたいな、ちょっと沈む曲があったりするんですけど、今回は全くない。全部が全部、もう全面に押し出されるので観ていて爽快だと思います。

普段生きていて、嫌なことがあったり、腹が立つことってたぶん、いっぱいあると思うんですよ。そういうのを一緒に発散できるような舞台にしたいと思うし、二幕のラストはライブ会場みたいなことになると思うので、一緒にはじけてもらえたらなと思います。

日本でミュージカルを観るとなると、行儀良くとかマナーとかを気にすることが多いと思うんですが、この作品ではそういうのは取っ払っていただきたいです(笑)。子どもたちはたぶん、そんな客席の熱量に乗っかって負けじと暴れると思うので、そんなポジティブなエネルギーを出せればいいなと思いますし、それを受け取ってもらったらうれしいです。

©entax

■ミュージカル『スクールオブロック』

<東京公演>
期間:2023年8月17日(木)~9月18日(月祝)
会場:東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
主催:ホリプロ/フジテレビジョン/TOKYO FM/キョードーファクトリー
企画制作:ホリプロ
<大阪公演>
期間:2023年9月23日(土祝)~10月1日(日)
会場:新歌舞伎座
主催:関西テレビ放送 新歌舞伎座 サンライズプロモーション大阪
<キャストとスタッフ>
出演:デューイ・フィン役:西川貴教/柿澤勇人(Wキャスト)ロザリー・マリンズ役:濱田めぐみ
ネッド・シュニーブリー役:梶 裕貴/太田基裕(Wキャスト)パティ・ディ・マルコ役:はいだしょうこ※/宮澤佐江(Wキャスト)ほか
※はいだしょうこ:ロザリー・マリンズ役カバー

音楽:アンドリュー・ロイド=ウェバー
脚本:ジュリアン・フェロウズ
歌詞:グレン・スレイター
翻訳・演出:鴻上尚史

【柿澤勇人 Profile】
1987年生まれ、神奈川県出身。高校1年時、授業の一環で観劇した劇団四季ミュージカル『ライオンキング』に衝撃を受け、2007年に劇団四季入所。退団後はミュージカルや舞台のほか、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の源実朝役など、テレビドラマや映画など映像作品にも活躍の場を広げる。2023年には20年以上上演が続くミュージカル『ジキル&ハイド』の主演を、鹿賀丈史、石丸幹二に続く3代目として引き継いだ。来年1月には三谷幸喜氏新作舞台『オデッサ』にて主演を務める。

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