小野田龍之介が新生『ピーター・パン』のフック船長に 「僕じゃ、かわいすぎない?」

2023.7.29 17:30

見る者を夢の世界に誘うブロードウェーミュージカル『ピーター・パン』。日本版は、1981年に榊原郁恵が初代ピーター・パンとして舞台に降り立って以来、2020年にコロナ禍で中止となったものの毎年公演を続け、43年目を迎える今年は演出・キャストを一新、装いを新たに2023年7月25日から上演が始まっている。11代目として初のピーター・パン役を担う山﨑玲奈(第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン グランプリ)と共に、新フック船長に挑む小野田龍之介に新生『ピーター・パン』の魅力や小野田版フック船長の見どころを聞いた。(取材は6月初旬に実施)

フック船長好きの少年だった小野田 「真似て海賊ごっこをしていたから不思議な感覚」

ピーター・パンの物語は1900年初頭のイギリスで誕生した。空を飛べる不思議な少年ピーター・パンと子どもたちが、おとぎの世界「ネバーランド」で冒険をする。タイガー・リリー率いる森の住人や海賊のフック船長、妖精ティンカーベルといった個性的なキャラクターと過ごす日々は、絵本やアニメ、映画や戯曲、ミュージカルとさまざま形となって世に放たれ、100年以上たった今も世界中の子どもたちから愛されている。

日本版ブロードウェーミュージカル『ピーター・パン』も今年で43年目と歴史が古い。しかし2023年版は訳詞や衣裳も一新され、国際的なクリエーター&パフォーマーである長谷川寧(はせがわねい)が織りなす演出と振り付けで新しい『ピーター・パン』が誕生した。これまでも変化を続けてきた『ピーター・パン』のさらに大きな変革時に、新キャストとして選ばれたのが『ピーター・パン』カンパニー初参加の山﨑玲奈と小野田龍之介だ。

小野田は、幼少の頃からダンスで舞台経験を積み8歳でミュージカルデビュー。数多くのミュージカルに出演し、直近では2023年3月から6月まで上演されていたミュージカル『マチルダ』で、子どもたちを圧制する女教師、トランチブル校長を演じ高い評価を得ている。

フック船長役に決まった際の思いを小野田は、「『ピーター・パン』は、生まれた時から家でビデオが流れていたんじゃないかっていうほど長く触れてきた物語です。特に悪役の典型みたいなフック船長が好きで、海賊ごっことかよくしていたのですごく不思議な感覚でした」と言う。

昨年30歳を超えたこともあり「もうそんな年になったんだなって。すごく光栄なことだなって思ったんです」と感慨深げでありながらも、「たくさんの先輩方が演じてこられた役ですので僕で大丈夫? かわい過ぎない? っても思っちゃって」と笑わせた。

「今回すべてがリニューアルされるということなので、非常に良い機会に『ピーター・パン』に携われるんだと思わず飛び込みました。今までの固定概念みたいなものをなくして挑めたらいいなと思っています」と意気込みを語った。

左から演出・振付の長谷川寧、ピーター・パン役の山崎玲奈、小野田龍之介

久しぶりに会った山﨑玲奈は大人になっていた 「ずっとトマト食べているけどね」

ピーター・パン役の山﨑玲奈と小野田は、昨年上演されて大きな話題を呼んだミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』に続く、二度目の共演だ。『北斗の拳』ではその高い歌唱力で注目を浴びた山﨑玲奈もまた、子どもの頃からミュージカル『アニー』で主演を務めた実力派でもある。

山﨑の印象を小野田は「『アニー』ってメーキングやオーディションの様子を毎年テレビでやっていますよね。山﨑さんの時のがすごく印象深く残っていました。『北斗の拳』ではさらに、当時学生だった山﨑さんが稽古場で学校の勉強をしながら稽古に臨んでいる姿が印象深くて。しっかりした子だなって」と語る。

「でね、久しぶりに会ったら大人になっていましたね。ちょっとですけど。で、ずーっと食べているんですよ。トマトを。タッパーに入れて持って来て、食べながら稽古しているんです(笑)。いいんですかね、トマト」。常に笑いを提供してくれる小野田はサービス精神旺盛だ。

さらに「僕も山﨑さんと同じで子どもの時から芸事をやっているんだけれども、学業はおろそかだったんですよね。だから、学業をちゃんとやって芝居もちゃんとやって、真面目で真っすぐで、こうだって決めたことはやりきるタイプの女優さんでもあったので、そんな彼女がピーター・パンをやるって聞いたときは非常にうれしかったです」と兄のような表情に。

「日本においてもミュージカル業界においても『ピーター・パン』って偉大な作品ですから、先輩方からそのバトンを受け取った彼女と共に『ピーター・パン』の新しい世界を刻めるのもワクワクするし、いちミュージカルファンとしては彼女の成長を守りたいです。その姿を特等席で見守れるのは、やっぱり出演した方が早いですから、そのチャンスをいただけてすごくうれしいです」と小野田。

山﨑版ピーター・パンについてはどうかと聞くと、「山﨑さんの目の集中力と言いますか、ひたむきさがとてもピーター・パンに合っているんじゃないかなと思います。これから稽古で、そのひたむきさにピーター・パンの魂がどんどん染み渡って面白いものになるなあって感じていますね」

フック船長の衣裳をまとった小野田龍之介

大人にこそ観てほしい『ピーター・パン』 家族の絆を見直す豊かな時間に

自身が演じるフック船長については、小野田はどんな作戦で挑むのだろうか。「フック船長は今まで数々の方が演じてこられましたけど、演出家や俳優によって変わる面白い役柄だと思っています。まだ稽古序盤なので分からないですが、「怖いんだぞ」とか「うわー」という野生味があふれるよりも、洗練された貴族的な色気のあるフックになるかなと思っています」

「フック船長って、お話の中ではワニを怖がっているんですけど、ワニを怖がっているように見えて実は時間におびえているんじゃないかと思うんです。ワニは時計を飲み込んでいて、追いかけて来る時にチックタックって音をさせる。ピーター・パンたちからしたらフック船長は大人の代表だから、ワニは実は、時間に追われる大人の恐怖を表しているんじゃないかってね」という話を演出家ともしているそうだ。

「とはいえ今はまだ、自分のフック船長はまだまだ未知数です。ただ、ちょっと思っているのが、誰しもが持っている心の部分をフック船長で演じたいなと。どういうものなのか自分でもまだ分かっていないですけど……ぜひ観てください!」、新しいフック船長誕生が楽しみだ。

小野田はフック船長のナンバーも楽しみなのだと言う。「『ピーター・パン』は基本的にはピーター・パンと子どもたちのお話で、フック船長は要所要所でダークサイドの印象として出てくる。だから出てくる度に曲調が違うし、それが滑稽で魅力なんです。そしてそれが、演出家や振付師によってダンスチックだったり、お芝居チックだったりと毎回アプローチが違うんですよ。今回の長谷川演出になってそのシーンがどうなるのか楽しみです」。ミュージカルファン小野田の目は観客の目になっている。

「長谷川さんって非常にフィジカルな演出家ですから、もしかしたらダンスナンバーっぽくなるんじゃないかなって思っています。僕が踊るかは別としてね。フック船長の毛色の違うこの3つのナンバーがどんなふうに滑稽で、子どもも大人も楽しめるものになるのか、僕自身が一番ワクワクしています」

最後に小野田はこう付け加えた。「今回、演出もキャストも新しいということはありますけれど、『これこそピーター・パンだよね』っていうお客様が見たいものってあるし、俳優も体現したものって絶対にあるわけです。ザ・ブロードウェー、ザ・ピーター・パン、ザ・ミュージカルみたいなね。

だから、そういうものはちゃんと残して裏切らない。けど、新しい演出家だからこそ、新しいスタッフ陣、新しい俳優だからこそ見せられる新たな、視覚的要素だったり、心に訴えかけるものだったりっていうものを大事に作っていきたいなって思います」

『ピーター・パン』は子どもだけでなく、大人にこそぜひ観てほしいと小野田は言う。「子どもたちがネバーランドで過ごす時間を通して、大人だからこそキャッチできる、家族に与えられた有限な時間っていうのを考える機会になると思うんです。お客様だけじゃなく僕たちもね。家族の絆だったり、恋人との仲だったり、友達との仲だったりっていうものを感じながら、『ピーター・パン』に関わっている時間を豊かにしていけたらいいなって思います」

【公演情報】
ブロードウェーミュージカル『ピーター・パン』

●東京公演● 2023年7月25日(火)~8月2日(水) 会場:東京国際フォーラム ホールC
●名古屋公演● 2023年8月5日(土)~6日(日) 会場:御園座
●大阪公演● 2023年8月12日(土) 会場:梅田芸術劇場メインホール
●埼玉公演● 2023年8月16日(水) 会場:ウェスタ川越 大ホール
●長野公演(上田)● 2023年8月19日(土)・20日(日) 会場:サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)大ホール
●新潟公演● 2023年8月26日(土)・27日(日) 会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
●高松公演● 2023年9月2日(土)・3日(日) 会場:レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール

出演:山﨑玲奈(ピーター・パン役)、小野田龍之介(フック船長役)、岡部 麟(ウェンディ役)、須藤理彩(ダーリング夫人役) ほか
原作:サー・J・M・バリによる作品を元にしたミュージカル
作詞:キャロリン・リー、作曲:モリス(ムース)・チャーラップ
翻訳・訳詞:福田響志
演出・振付:長谷川 寧

【小野田龍之介 Profile】 1991年7月12日生まれ。神奈川県出身。幼少よりダンスを始め、ダンスで舞台経験を踏みながら、その後多数のミュージカルに出演。特に最近は『マチルダ』のミス・トランチブル役、『ミス・サイゴン』のクリス役、『メリー・ポピンズ』のバート役と大役が続く。2011年、第1回シルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンクール&コンサートでシルヴェスター・リーヴァイ特別賞を受賞。2020年にはミュージカルデビュー20周年記念コンサートを開催している。

画像提供:(C)ホリプロ

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