映画『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』W主演の橋本淳×稲葉友に単独取材 出演の決め手も思い出シーンもまったく同じ

2023.6.24 15:00

全国順次公開中の映画『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』主演の橋本淳と稲葉友にentax取材班が独自インタビューを実施した。家に引きこもっている“ちばしん”の元に小学生時代の親友“ながちん”が突然会いに来て、「俺の死体を探して欲しい」と依頼することで始まる不思議な青春ロードムービー。橋本淳が30歳過ぎてもゲーム三昧の青年・ちばしんを、稲葉友がハイテンションな自称幽霊・ながちんを演じた。お互い「友がいるなら」「橋本君が出るから」と出演を決めたという2人。息ぴったりの撮影現場での様子や、印象に残った共演者やシーンについて聞いた。

(前編・後編の前編)

■「友がいるなら」「橋本君が出るから」出演の決め手は互いの存在

――今作のオファーをもらった時の感想をお聞かせください。

橋本 最初に企画書をいただいた時、猪股和磨監督がこの映画を企画するにあたっての思いが書いてあったのが強烈で、それを読んだだけでぜひやりたいと思いました。まだ猪股監督にお会いしたこともないし台本を読む前だったのですが、この人の作品だったら体を預けてもいいかな、と思ったんですね。

それと同時に、相方となる“ながちん”役は稲葉友さんで考えていると聞いていたので、友がいるならより力強いし楽しめるんじゃないかと思って「やります!」とお答えしました。

稲葉 僕も橋本淳君が出るからと(笑)。これは冗談じゃなく本当で、橋本君とは10年前に1度舞台でけっこう長期間ご一緒したんですけど、当時は役で絡むこともあんまりなかったんですね。でもそこから橋本君が出ている舞台は何本も見させてもらっていたので、こんなにガッツリと2人でお芝居ができるのはすごく魅力的だなと思いました。わりと僕はそれだけでこのお話に飛び込んだ感じです。

――相思相愛ですね。

橋本 はい。支えてもらいました。

稲葉 そんな風に言っていただけるなんて……こちらこそです。

©「よっす、おまたせ、じゃあまたね。」製作委員会

■深夜3時にハイテンションで撮影

――実際に共演されてみていかがでしたか?

橋本 すごく楽しかったんですよね。基本的に僕は受け身の役柄で、友君が発するものに対してリアクションをしていくストーリーで、ほぼ順撮りなのが良かったです。最初は感情がモノクロになっているちばしんの心に、ながちんが色々とアプローチをかけてくれて、彼が持つ交友関係すらもこちらに投げかけてくれる。そのうちどんどん、ちばしんがカラフルになっていくのを僕自身も一緒に体験しているような気持ちになるほど、脚本に書かれている以上のことを友君がやってくれて、僕はそれに正直に受け答えしているだけで大丈夫でした。

でも友君はきっと大変だったと思うんですよ。1週間くらいで撮り切るスケジュールだったし、朝から夜まで撮影していて。深夜3時にあのテンションか! という感じでした。

稲葉 いやー、やばかったよね(笑)。

橋本 大変だったよね。僕はあまりリアクションしない役だったので、ながちん役の友君は自分でテンションを上げなくちゃいけないという大変さがあったと思うんですけど、楽しそうにやってくれて。オンとオフは完全にはっきりしているんですけどね。カットがかかった瞬間に電池が切れたみたいになるんですけど、その中で一生懸命やっているのを僕は拾うだけだったので、どのシーンも楽しかったですね。

――確かに夜のシーンが多かったですよね。

稲葉 多かったですね。でも、そのしんどいスケジュールをほぼ共有していたので、それだけで「同じしんどさの人がいる」という心強さはありました。僕が演技を立ち上げて橋本君に渡し続けるというのは確かに大変だったんですけど、これが大変なことだというのを理解してくれて、絶妙なタイミングで「疲れるよね」って言ってくれるんですよ。橋本君が演じているちばしんには、なかなか気持ちが届かないかも、というのはあったんですけど、橋本君自身には何を投げても大丈夫、何とかしてくれるだろう、という信頼があって、実際わりと乱暴にどの球を投げても収めてくれました。

橋本 そうは言っても暴投はしないので。

(左から)稲葉友さん、橋本淳さん

■バラエティー豊かな共演者がエンジン全開で現場入り

――撮影現場はどんな雰囲気でしたか?

橋本 ひたすらテイクを重ねるしかないし、毎シーン色んな出演者が代わるがわるエンジン全開で現場に入ってきてくださるので、僕ら2人が木の幹のようにしっかり立っていないと、という気持ちは保っていました。役柄的にも巻き込まれ型なので、そこは皆さんの演技を正直に受けていました。皆さん、ジャングルに放たれた獣のように(笑)1シーンにかける気合がすごかったんです。ちょっとファンタジックでSF的、不条理な部分があるジャンルレス映画なので、共演者の皆さんの演技に対してはこちらがリアルに受けていかないとおかしくなるよな、という軌道修正は考えていました。参加してくれる方たちが気持ちよく現場に来て気持ちよく帰ってほしい、という意識はしていましたね。眠いながら(笑)。

稲葉 色んな方がクランクインしてはアップしていくという現場でしたね。でもそれはある意味ありがたくて。前半は僕だけテンションの高い演技を立ち上げていたのが、途中から僕よりテンションが高い方たちが入ってくれて、こっちが受け身に回る瞬間もできたので。もちろん台本はあるんですけど、それぞれ皆さん何を仕掛けてくるかわからないという楽しみもありましたし。それを受けてまた次に進んでいくという状況が、まさにロードムービーでした。

撮影現場について語る稲葉友さん

■共演キャスト総勢35名は誰もが強烈!

――道中出会うキャストの方は総勢35名になるんですよね。特に共演シーンが強烈だった方はいらっしゃいますか?

稲葉 市川しんぺーさんでしょ。

橋本 しんぺーさんだね。にんじんしりしり屋さんの。

稲葉 ながちんの東京のお父さんのような存在の役なんですよね。しんぺーさんとのシーンは笑っちゃいましたよね。おもしろかったなぁ。

橋本 朝イチの下北沢にすごい声が響き渡っていたよね。あのシーンだけで市川しんぺーさん、声枯れていましたからね(笑)。それぐらいの熱量でやってくださって。監督にどんどん色んな動きをつけられてテンパり出す先輩の姿がおもしろくて、でも一生懸命「はい!」と返事してやってくださっているのが楽しかったです。

稲葉 ながちん的にはグッとくるシーンだったので、そのエネルギーが自然に生まれたのは助かりました。あとは、タクシー運転手役の中村まことさんも手練れの演技で印象に残っています。

橋本 いっぱいいますね。バンドのシーンもおもしろかったし、道中で自転車盗んだだろうって詰め寄ってくる強面の2人組もだし、とにかく変な人しか出てこないんですよ(笑)。どなたも強烈で順番がつけられないくらいでした。

共演者との思い出を話す橋本淳さん

■1発撮りで目に見えないきずなが生まれた下北沢の路地裏シーン

――映画の中で、個人的に印象に残る、思い入れのあるシーンを教えてください。

橋本 2つあります。1つは、ながちん行きつけのバーに行く前の、下北沢の路地裏での2人のシーン。それまでずっとちばしんのことを勇気づけてきたながちんが唯一落ち込んでいるシーンで、ちばしんが声をかけることで2人の関係性が変わるんですよね。そのシーンは1発撮りだったんです。夕景で撮りたいし、ナイターだとライトの数が足りないような状況で、今撮るしかない、と。なので段取りだけ確認してカメラマンさん、照明さん、音響さんもシビアな状況な中、1発で決められたらいいね、と撮り切ったシーンだったんです。あそこは全部署が「いいシーンが撮れたんじゃない?」と感じて、目に見えないきずなが生まれたシーンとして鮮明に覚えています。

稲葉 僕もまったく一緒のシーンです。

橋本 だよね。あそこは“撮った感”があったよね。

稲葉 全員が「OK! 良かった!」みたいな感じで。でも、あっちゃんが一番大変だったよね、あのシーンは。

橋本 さっき台本開いてそこのセリフ読んだんですけど、よくかまずにこれを言えたなと(笑)。

稲葉 セリフの内容的にも、ちばしんがそこにどうやってたどり着くんだろうね、ということを2人で相談していて、撮ってみたら「本当に良かった」というシーンになって。でも、いま久々にその時の話をして、そういえばあっちゃん、あそこすごく大変だったんだ、と思い出しました。

橋本 そのシーンの前に、移動車の中で2人でセリフ合わせをしていたんですよ。2人とも舞台に出ていることもあって、そういった(セリフ合わせの)積み重ねが好きなんですよ。そういう経過があってすんなりうまくいったシーンになったのかもしれないですけど。そのシーンが鬼門というか、感情がわからない、という気持ちもありました。

でも自分の中で鬼門と思っていただけで、実際に演じてみて、友君の感じを見たら悩んでいたものが飛んでいってクリアになりました。友君に色んなものをいただきながら演じられたシーンでした。

稲葉 あっちゃん、すごい! ってなりました。ここをちゃんと通るにはどうしたらいいか、というのを数日前から話していました。

橋本 もう1つ印象に残ったのは、ラストシーン。セリフも特になく感情を表すシーンなんですけど、僕の中では多くを語っているシーンになったなと。わりと順撮りで撮っていたおかげもあって、友君との(撮影期間の)思い出がぶわっと出てきて。それだけじゃなくて今まで出演してくれた皆さんの顔が思い浮かんで全員のことを考えながら演じられたので、そこは思い入れが強いシーンになりました。けっこう気を張って臨んだシーンだったので、友君はちょっと距離をおいてくれていたんですよ。そういうところが優しいな、と感じたのも覚えています。

稲葉 その日、ドーナツの差し入れがあって「あっちゃんはあのシーンが終わるまで食べないんだろうな」って思ったのを覚えています(笑)。現場にながちんが居ても居なくても影響するな、と思ったので、待機室でじっとしていました。

橋本 色んなことが作用してあのラストシーンになったよね。

稲葉 僕ももう1つ印象に残った場面があって、最後の方でながちんだけがある確信をして、ちばしんを見上げながらしゃべっているシーンです。そこは自分の中から思ってもいない音が出たような瞬間があって印象的でした。最初の頃とは、ちばしんの顔つきも変わっていて、もっと一緒に過ごせたら楽しかったな、と思ったりしました。

【橋本淳(はしもと あつし)Profile】
1987年1月14日生まれ、東京都出身。
2004年にドラマ『WATER BOYS2』(フジテレビ)でデビュー。
2008年、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』でヒロインの弟・正平役を務める。 近年の出演作は、NHK『きれいのくに』(2021年)、TBS『#家族募集します』(2021年)、東海テレビ・フジテレビ『三千円の使いかた』(2023年)、日本テレビ『それってパクリじゃないですか?』(2023年)など。演劇界でも活躍し、舞台『いつぞやは』(2023年8月〜)の公演を控える。

【稲葉友(いなば ゆう)Profile】
1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)にて俳優デビュー後、数々のドラマ、映画、舞台に出演。
近年の主な出演作に、映画『ずっと独身でいるつもり?』(2021年)、『恋い焦れ歌え』(2022年)、ドラマではテレビ東京『みなと商事コインランドリー』、NHK『つまらない住宅地のすべての家』(2022年)、日本テレビ『大病院占拠』(2023年)などがある。MBS/TBSにて放送中のドラマイズム「明日、私は誰かのカノジョ Season2」に出演中のほか、7月25日22:00~放送スタートのNHKドラマ10「しずかちゃんとパパ」に出演。 毎週金曜11:30~生放送中のJ-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』にてナビゲーターを務める。

『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』
6⽉16⽇(⾦)〜 CINE QUINTO(東京・渋⾕)にて1週間限定レイトショー 6⽉23⽇(⾦)〜 アップリンク吉祥寺、kino cinéma⽴川⾼島屋S.C館ほか全国順次公開

<STORY> 30歳を過ぎて家に引きこもり、ゲームばかりやっている青年・ちばしん(橋本淳)。ある日突然、小学校時代の親友・ながちん(稲葉友)が目の前に現れ、自分は幽霊だと言う。ちばしんは理由もわからず彼の思い出の地をたどることになり、戸惑いながらも車を走らせるが……。

<CAST>
橋本淳 稲葉友 安倍⼄ 森⾼愛 マメ⼭⽥ ⼊江雅⼈ 千葉雅⼦ 中村まこと 市川しんぺー ⼋⽊響⽣ 飴

<STAFF>
監督・脚本:猪股和磨 ⾳楽:KiQ|エグゼクティブ・プロデューサー:⽵内崇剛|プロデューサー・編集:篠⽥知典|撮影:平井諒|照明:富⾕颯輝|サウンドエディター:⼩濱匠|スタイリスト:庄司洋介|ヘアメイク:⼭⽥亜美|部屋装飾:藤本楓|助監督:志筑司|制作担当:井⼝慶|スチール:岩渕一輝、中野あき|題字・宣伝美術:橋本興平|企画協力:直井卓俊|宣伝協力:髭野純|製作:「よっす、おまたせ、じゃあまたね。」製作委員会|配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS

映画公式サイトはこちら

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