クリスマスマーケットも開催!東京バレエ団の冬の風物詩『くるみ割り人形』【新入団の二山治雄に独自インタビュー】
東京バレエ団が冬の風物詩として届ける『くるみ割り人形』が、今年も東京文化会館で上演される。2019年の初演以来、〈クリスマスツリーの中に迷い込んだマーシャの驚き〉という独自の視点を基軸に、王道の物語を鮮やかに再構築してきた人気作である。壮麗な美術、幻想的な演出、そしてチャイコフスキーの名曲が織り成す世界は、クリスマスという季節の“魔法”を劇場に呼び込んでいる。

◆ 夢が“実体化”する舞台世界
本作の魅力は、目に見えるファンタジーが劇場空間のなかで次々と“実体化”していく点にある。クリスマスパーティーの温かいにぎわいは一転、真夜中の広間ではツリーが巨大化し、人形たちが動き出し、ねずみたちとの戦いが始まる。舞台いっぱいに広がる雪の国、お菓子の国の色鮮やかな踊り・・・夢の層が折り重なるように展開していく物語は、子どもから大人までを魅了し続けてきた。
◆ 豪華な日替わりキャスト。新入団の二山治雄にも注目
今年はマーシャ役に沖香菜子、秋山瑛、金子仁美、足立真里亜、涌田美紀が名を連ね、くるみ割り王子には宮川新大、池本祥真、生方隆之介、大塚卓、そして今年4月に入団した二山治雄が参加する。特に二山は12月12日(東京公演)と24日(堺公演)に出演予定で、フレッシュな存在として注目される。

入団後、早くも『くるみ割り人形』のくるみ割り王子に抜擢(ばってき)された二山治雄。entaxではリハーサルの真っただ中にある二山に、作品への思いを聞いた。
二山 「毎日色々なダンサーから刺激をもらっています。今年入団したばかりなのに王子の役をいただいたので『ドン・キホーテ』の公演後ですが、いいクリスマス公演になるよう気を張って挑みたいです」

二山は東京バレエ団の『くるみ割り人形』は2024年公演を観客として鑑賞しており、そのときは「まさか自分が踊るとは思っていなかった」という。
二山 「配役をいただいたときは驚きました。せっかくいただいたチャンスなので、自分自身の実りにつなげたいと思っています。」
――東京バレエ団で特に印象に残っていることは?
二山 「これまでパートナリングをしっかり教わったことがありませんでした。先輩方がサポートしてくださるので勉強になりますし、ありがたい環境です。」
なかでも、作品づくりにおいて最も衝撃を受けたのは“表現”だという。
二山 「踊りや表現から“自分を出しなさい”と言われます。人間の内面的な部分を表現するにはどうするべきか、アドバイスをいただきながらリハーサルをしているので充実しています。」
――クリスマスの定番作品に向き合ううえでの今回の挑戦は?
二山 「東京バレエ団の本公演で、東京文化会館の大ホールに立つ緊張と不安はありますし、責任も感じています。でも、こんな機会はなかなかない。だからその幸せを感じながら踊りたいです。」
――本作は“探検”がコンセプト。テクニック的にも難しい部分もあるが、踊るうえでの面白さとは?
二山 「アダージオなどダイナミックな踊りが入ってくるので難度が高いです。バージョンによっては、1幕のくるみ割り人形は別のダンサーが踊り、2幕にだけ王子が登場することもありますが、このバージョンでは1幕から王子が登場して、最後のグラン・パ・ド・ドゥまでつながっていきます。役としても踊りとしても積み重ねていく感覚があり、それがとても良いです。」
さらに、ディヴェルティスマン(各国の踊り)についてはこう語る。
二山 「ちょっとした仕掛けや演出がかわいいんですよ。中国とフランスの踊りにも出演させていただくので、王子だけでなく違う自分を見せられるのは、うれしいです。」
初出演の王子役に向けて、技術だけでなく“心”も磨き続ける二山治雄。
その言葉からは、新加入ながら真っすぐに作品へ向き合い、東京バレエ団の一員として作品を背負う覚悟が垣間見える。クリスマスの魔法に満ちた『くるみ割り人形』の舞台で、彼がどんな輝きを見せてくれるのか期待は高まるばかりだ。

◆クリスマスマーケット開催!
さらに今年の東京公演では、ロビーでクリスマスマーケットが開催されることも大きな話題だ。会場内での限定イベントで、公演チケットを持つ観客のみが入場できる特別な空間となる。マーシャが夢の世界へ誘われるように、観客も劇場に足を踏み入れた瞬間から“クリスマスの魔法”に包まれる仕掛けである。温かい灯りと香りに満ちたロビーは、作品世界への没入をさらに深め、劇場体験全体を豊かにするはずだ。
冬の夜、劇場いっぱいに広がる光と音と舞踊の魔法。東京バレエ団の『くるみ割り人形』は、ただ観るだけではなく、季節の気配を体験する作品だ。クリスマスマーケットで心躍らせ、マーシャと王子とともに夢の国を旅する・・・そんな特別な時間が、今年もあなたを待っている。
写真:Koujiro Yoshikawa /Shoko Matsuhashi
取材・文:和田弘江

≪公演概要≫
東京バレエ団『くるみ割り人形』 全2幕
【東京公演】
2025年 12月11日(木)19:00
12月12日(金)12:30
12月12日(金)18:30
12月13日(土)12:30
12月13日(土)17:30
12月14日(日)14:00
【他都市公演】
12月24日(水) 18:30 フェニーチェ堺大ホール
12月26日(金) 17:30 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
12月28日(日) 15:00 島根県民会館 大ホール
トップ画写真:Koujiro Yoshikawa











