細田守最新作『果てしなきスカーレット』 原点はシェイクスピアの傑作“復讐劇” 「僕自身の『ハムレット』を探しだす旅が始まった」

2025.9.12 13:30
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細田守の写真

カナダ・トロント国際映画祭で、9月10日(水)20時45分(現地時間)に細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』の公式上映が行われた。細田監督は2015年の『バケモノの子』以来、2度目の参加となった。

♦細田監督と“スカーレット”が交流

公式上映に先立ち、本作の世界配給を担うソニー・ピクチャーズが主催するディナーパーティーに招待され、多数のハリウッドスターや映画製作人と交流。『ジュラシック・ワールド/復活の大地』で主人公・ゾーラ役を務めたスカーレット・ヨハンソンとは、過去出演作のエピソードを語るなど大いに盛り上がり、本作の主人公が同じ名前であることを伝えると、スカーレット・ヨハンソンは驚いて作品に興味を持った様子だった。

スカーレット・ヨハンソン、細田守の写真

北米プレミア前にレッドカーペットに登場した細田監督は「トロント国際映画祭は世界中から映画好きの方が集まって観てくれるので、どんな風に『スカーレット』を受け止めてくれるのか、非常に楽しみです」とコメントし、上映される会場についても「音響が良く、映像も綺麗な劇場と聞いていて、すごくいい状態で観てもらえると思いますし、大きな会場で(ファンの)皆さんと一緒に見られるのはうれしい!」と、北米プレミアへのよろこびをあらわに会場に向かった。

ロイヤル・アレキサンドラ劇場で行われた公式上映。上映前に司会者によって細田監督の紹介がなされ、監督が手掛けた過去作のタイトルが1作ずつ読み上げられると、そのたびに歓声と拍手が起こりました。上映前に登壇をした細田監督は、観客に向けて「この作品は“生と死”が混じり合う場所で、一人の女性が生きる意味を見つける映画です。是非皆さんこの映画を楽しんで観てください」とあいさつ。

細田守の写真

本編が始まるとスカーレット役の芦田愛菜や聖役の岡田将生、クローディアス役の役所広司ら日本を代表する俳優陣による大迫力な声の演技合戦と、製作陣によって細部まで緻密に描き込まれた圧倒的な映像美に、観客はすぐさま作品世界に引き込まれていきました。ストーリー終盤では、ヴェネチア国際映画祭同様、鼻をすするような声が聞こえてくるなど、会場は感動に包まれた。

♦「僕自身の『ハムレット』を探し出す旅」

上映後には細田監督と観客によるQ&Aも実施。企画の始まりについて聞かれると「復讐について考えたとき、復讐の連鎖はどうやったら終わるんだろうと“復讐劇”を作ろうと思いました。復讐劇の元祖である『ハムレット』をベースに、現代だったらどういう解釈の物語がありうるだろうかと考えたのがきっかけです。ハムレットが別の選択をしていたらどういう風になるのかと、僕自身の『ハムレット』を探しだす旅が始まりました」と、本作が『ハムレット』をモチーフとしていることに言及。

続けて、出演キャストについて質問されると「声のキャストは、ほぼ全員シェイクスピア劇や『ハムレット』に出演したことのあるキャストであり、初めてだったのは主演の芦田さんだけでした。(本編の)お芝居としても『ハムレット』とすごく繋がっているのではないかと思います」と、キャスティングの裏側についても明かした。

また、本作に世界へのメッセージが込められているのかと問われた監督は「今世界で争いや復讐が起きて、それに直面している中、どうやったらこの負の連鎖から僕ら人類は抜け出せるのか。皆が平和を願っているのにどうして争いが起こってしまうんだろうかという問題意識は、実はハムレットの中にもあると思っています。『ハムレット』が書かれた約400年前から現代はどういう風に変化したのか、皆と一緒に考えたいと思ったんです」と熱く語った。

細田守の写真

芦田愛菜、岡田将生とともにヴェネチア映画祭に参加後、単身で臨んだトロント国際映画祭。「場所が違えば受け取り方も違うということを感じ、映画の解釈が膨らんでいるところが面白いです」と、細田監督は2つの映画祭に参加した印象を話した。

「“復讐と赦し”が現代にとって重要と感じたとおっしゃる方もいるし、アニメーション表現の今までにないルックについて興味を持って観てくださった方もいて、様々な見方をする方がいるんだなと、新鮮な視点を聞かせてもらってこちらも勉強になりました」と感銘を受けたと様子を見せた。

また、特に印象に残った観客からの感想として「この作品は現代を表した作品ではないかと、社会で今起こっていることに対して重要な作品なんじゃないかとおっしゃる方がいたことが印象深かったです。作り手としては、復讐の連鎖からどうやって抜け出すのか、ということを普遍的に考えて作っていましたが、今まさにみんな(世界が)心配していることとどこかリンクしているところがあるから、そのように受け止められたのかと思うと感慨深いです」と振り返った。

トロント国際映画祭 公式上映
9月10日(水)20時45分開催(現地時間) ロイヤル・アレキサンドラ劇場にて開催

『果てしなきスカーレット』
11月21日(金)公開

【公式HP】
【公式X】

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