冬の定番料理なのに一体なぜ?シチューをレストランで全く見ない意外な理由とは
クリームシチューを提供する数少ない店のひとつ、東京・新宿にある洋食店「はやしや」の店長・小林幸雄さんに話を聞くと、その理由が分かった。
クリームシチューを扱う店はなぜ少ないのか、店長によると「まず仕込みとしては比較的手間がかかるソース。白く仕上げるので、色がついてはいけない」「作り出したら手が離せない。火から外しても、自分の熱で焦げちゃう、かき回してないと」と、調理が非常にデリケートであると語る。
さらに店長は「牛乳とか、乳脂肪分が高いので非常に痛みが早いというか、味が落ちやすい」とつづける。時間がたてばおいしくなるカレーやビーフシチューと違って、できたてが一番おいしく日持ちもしないクリームシチューは作り置きがしづらく、店での提供には向いていないのだという。
また、レストランがビジネスであるための難しさもあるとのこと。日本洋食協会会長の岩本忠さんは、「お店独自のものはやりにくい」と話す。牛乳やバター、小麦粉といったシンプルな構成ゆえ、店ごとの独自性が出しづらいのだとか。
クリームシチューはなぜ家でしか食べないのか、大体の理由が出そろったところで、しかしまだ疑問は残る。プロが作っても、本当に家庭の味と大差ないのか?最後に残ったこの疑問を解消すべく、今回は徹底的に検証を実施した。
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家庭的な味で、作り手によって差が生まれづらいことからレストランではあまり提供されないクリームシチュー。しかし一流のプロが本気で料理すれば、さすがに大きな差が生まれるのでは?という仮説のもと、今回の番組では最強の料理人を招集した。
オファーに応じてくれたのは、7年連続ミシュランガイド東京で一つ星評価を受けた、恵比寿のフレンチレストラン『アムール』で総料理長を務める、後藤祐輔シェフ。後藤シェフは「プロですので、シチューといえどもおいしく作る方法、調理技術をもちろん知っているので自信はあります」と、強気に語る。
後藤シェフのシチューとの対比に使用するのは、番組スタッフが市販のルウを使用して作る、ごくごく一般的なシチュー。一般の老若男女20人に食べ比べをしてもらい、どちらがおいしいのかを判定する。
後藤シェフは長年の経験をフル活用。白ワインや丸2日かけて仕込むという特製コンソメを使用。調理法もフレンチの技法をふんだんに取り入れ、珠玉のシチューが完成した。
対するスタッフの用意したシチューは、ただルウの箱に書かれたレシピに従っただけ。なんの工夫もなく、見慣れた一皿があっさり完成した。
出来上がった2つのシチューを、何も伝えずに食べ比べてもらう。後藤シェフは「まぁ、本気で作ったんで大丈夫でしょう」と余裕を見せていたが、果たして。









