【想像を超える困難が!】日本×フィンランド国際共同製作ドラマ『BLOOD & SWEAT』 ~ WOWOW・日テレ アックスオンが語る国際共同製作の最前線~

2025.11.7 12:45
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MIPCOM(フランス)、ATF(シンガポール)と並び、アジアを代表するB to B向けコンテンツ国際見本市、TIFFCOMが10月29日(水)~31日(金)東京・浜松町で開催された。200社を超える出展者、1000人以上の業界関係者が集う中、2026年にWOWOWで放送予定の日本×フィンランド国際共同製作ドラマ『BLOOD & SWEAT』の制作チームが30日(木)のセミナーに登壇した。

本作はWOWOWとAX-ON、としてフィンランドの制作会社・ICS Nordicが共同で手掛ける完全オリジナル作品。日本とフィンランドを除いた世界のセールスエージェントをBoat Rockerが務め、フィンランドの放送局・Nelonenでの放送も予定されている。

セミナーにはWOWOW の高嶋ともみ(エグゼクティブプロデューサー)とAX-ONのダニエル・トイヴォネン(プロデューサー・監督・脚本)が登壇。トークショー形式で国際共同製作の体験談・苦労話などを披露し、200席満員御礼となった会場の耳目を集めた。

(株)WOWOWコンテンツプロデュース局ドラマ制作部 チーフプロデューサー・高嶋ともみの写真
高嶋ともみ(株)WOWOWコンテンツプロデュース局ドラマ制作部 チーフプロデューサー
(株)日テレ アックスオン 企画戦略センター企画戦略部 チーフクリエイター・ダニエル・トイヴォネンの写真
ダニエル・トイヴォネン(株)日テレ アックスオン 企画戦略センター企画戦略部 チーフクリエイター

以下、当セミナーで披露された話のポイントをまとめた。

脚本開発は英語と日本語、翻訳の行き来を繰り返す

国際共同制作のプロセスにおいて、最も苦労した点として挙げられたのが脚本開発。2024年3月に開発が始まり、12月には撮影開始というタイトなスケジュールで、実質9カ月弱で全8話の完全オリジナルストーリーを完成させる必要があった。全体のプロットを英語で作成し各話の脚本を執筆。執筆された脚本はプロデューサーたちの度重なるチェック・コメントを元にまた2〜3回書き直してはチェックに回す、というサイクルが何度も繰り返された。ようやく完成した英語脚本は日本語に翻訳されてから、俳優が喋って不自然でないよう台詞のリライト作業を実施。その中で「辻褄が合わない」箇所があれば都度修正していくという、英語⇔日本語の翻訳を繰り返す途方もない作業を繰り返し行った。

フィンランドの厳格なスケジュール・労働環境への順応

フィンランドでは労働組合が非常に強力であり、人件費を含む厳格なルールが定められている。撮影体制は「サステナブル(持続可能性)」を重視しており、今回の撮影では当初「1日実働は10時間迄」が原則だったが、撮影時間を「10時間→12時間」に伸ばす代わりに「実働週4日」というルールを設定し徹底。これにより、制作チームは「月曜~木曜=撮影、金曜=準備、土曜・日曜=休み」というサイクルで進行することとなった。特に撮影の時間管理は厳しく、フィンランドでは「数分オーバーでもアウト」であった。また、クリエイティブ面でも違いがあり、フィンランドでは各パートの担当スタッフがクリエイティブな意見を積極的に発信する文化があり、監督のビジョンに寄り添いたい日本の制作スタイルとの根本的な違いを感じることができた。

日本での撮影は「文化の正確性」を追求

日本での撮影ブロックでは、フィンランドチームが自国の体制と異なる日本の労働環境に合わせる必要があった。また今回フィンランド人監督をはじめ海外スタッフが多く来日したため、英語が話せるスタッフを集める必要があるなど、通常よりも準備に労力と時間がかかった。特に重要だったのが、文化的なフォロー(認識の違いを埋める作業)だった。海外チームがイメージする「日本の姿」が、現代の日本の実態と異なる場合もあり、例えば「(ロケで利用した)広大な日本庭園のある家は現代の日本において多くは存在しない」といったような点をつぶさに日本側がチェックし、フィンランドチームと話し合う必要があった。

国際共同製作成功の鍵は「役割」の明確化

「今回の共同制作ではクリエイティブな課題をじっくり話し合うことで解決したが、かなりの時間を要する作業になってしまった」(ダニエル)。国際共同製作では、「誰がどの部分の最終決定権を持っているか」「この部分の予算は誰が責任者なのか」といった“明確な役割”を早期に話し合うことこそ肝要であることに気づいた。(※会場で頷く人も多かったことから、国際協調にかかわらず制作現場で起きうる話なのだろう)


<紹介>日本×フィンランド共同製作ドラマ『連続ドラマW BLOOD & SWEAT』

日本と北欧のフィンランドを舞台に、連続猟奇殺人事件を追う刑事たちの姿を描いたクライムサスペンスドラマ『連続ドラマW BLOOD & SWEAT』。本作は、WOWOW、日本の制作会社・AX-ONとフィンランドの制作会社・ICS Nordicが共同で手掛ける完全オリジナル作品であり、全く新しいサスペンスの世界観が展開される。主演は国内外で活躍する俳優・杏と、フィンランドを代表する人気俳優ヤスペル・ペーコネンの国境を越えたダブル主演にも注目。

日本×フィンランド共同製作ドラマ『連続ドラマW BLOOD & SWEAT』
放送・配信:2026年予定
公式サイト

<スタッフ・キャスト>
脚本:リク・スオカス、ダニエル・トイヴォネン、岩﨑マリエ、ヘイキ・シリヤ
監督:リク・スオカス、ダニエル・トイヴォネン、岩﨑マリエ
出演:杏、ヤスペル・ペーコネン ほか
製作:WOWOW、AX-ON、ICS Nordic

写真:©TIFFCOM 2025

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