宮藤官九郎×水田伸生監督スペシャル対談 「つづく」のか? 映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』のこれから

2023.10.22 15:00

「野心も競争意識も協調性もない」と揶揄(やゆ)される“ゆとり世代”が奮闘する社会派コメディー映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』が10月13日から公開されている。2016年、俳優の岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥らが出演し話題となった連続ドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系列で放映)の映画化だ。もう一度『ゆとり~』で会いたいと願ったキャスト、スタッフと共に映画公開を実現させた脚本家・宮藤官九郎、監督・水田伸生に『ゆとり~』のこれからを聞いた。(一部にネタバレがあります)これまでの対談はこちらから:

■中国から『ゆとり~』に熱い視線?

―― 映画をご覧になった方もきっと気にされていると思うので、単刀直入にうかがいます。最後に「つづく」とありました。続編を期待してよいのですか?

水田 あっ、あれは全然そんな意味合いではないですよ。「彼らの人生はつづく」です。
宮藤 続編があるかは、映画がヒットしないと、ですね(笑)。
水田 我々の気持ちは、ずーっと彼らのドラマが続いているんだ。その一部を切り取っているんだっていうイメージなんです。

―― ではエンドロールも? 英語、中国語、韓国語などで書かれていたので、海外進出もあるのかなと期待してしまいました。

水田 違う違う(笑)。エンドロールにそんな意味はないですよ。宮藤さんが「まりぶ(道上まりぶ、柳楽優弥)が仕込んだキャメラの映像を使ってエンドロールをやったらどうですか」ってシナリオに書いていて、なるほどって思って少し順番を変えたりする中で、だったら、普通のクレジットでは足りないなと思ってあのような表現にしたんです。ただ、この映画は海外でも受けると思っていることは間違いない。
宮藤 海外っていうと……。映画化の前に松坂桃李くんから『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(2009年のアメリカ映画)みたいなのは?と提案されて『ゆとり~』も映画にできるじゃんって水田さんに報告したことが発端でしたよね。ただ、海外ロケは違うんじゃないかって話になって。
水田 改めて考えるとね。
宮藤 そうですよね。(海外に行ったら)ゆとり世代っていうのは通用しないですもの。それで、映画はこういう形になったんですけど。
水田 ただね。ドラマの『ゆとり~』放送後に中国から(放映権を)買いたいって言ってきた会社があるんですよ。中国にはゆとり世代はないのにね。リメイクしたいという話もあった。それを聞いた時に、これは映画で芽があるなと僕は思ったの。
宮藤 日本に世代で若者をくくる文化があるっていうのを、外国の人たちに見たらどう思うのかなっていうのはありますね。特にゆとり世代は日本にしかないですからね。
水田 間違いない。
宮藤 “ゆとり”という教育制度のために“ゆとり世代”ってまとめられた、っていう時代があったっていうのは面白いなって思いますけど、中国の人は『ゆとり~』を見てどう思ったんですかね。どこにそんな引きが……。
水田 わからないね。何かしらマーケティングしているんですよ、きっと。

■いない誰かを話す会話も面白いのが『ゆとり~』

―― ドラマの翌年2017年にスピンオフドラマ『山岸ですがなにか』が放送されていますが、今後そのような形での映像化はあり得ますか?

水田 山岸を超えるのはね(笑)。宮藤さん、『山岸ですがなにか』をものすごいスピードで書きましたよね。1日くらいでしたか。
宮藤 あれはもう、いくらでも書ける(笑)。
水田 すごいな。
宮藤 演じた仲野太賀くんにとっても、山岸ひろむという役はすごく当たっていたし、山岸の成長や変遷とかは書いていて面白いですよね。

―― 映画での山岸は成長著しかったです。

水田 そういう意味では、茜(安藤サクラ)も佐倉悦子(吉岡里帆)も単体で描いているから、当然成長しているんですよ。坂間正和(岡田将生)も山路一豊(松坂桃李)も道上まりぶ(柳楽優弥)も単体で捉えれば成長している。ただ、3人で会うとね。
宮藤 ぜんぜんダメ(笑)。
水田 そうそう(笑)。でもそれは、同窓会で友達に会った時みたいに戻るだけで、それぞれは確実に成長している。変化しているんですよね。そういうもんでしょ。それって男女関係ないと思う。一瞬のうちに戻るでしょ。
宮藤 そうですね。3人が一堂に会するシーンって飲み屋の外で飲んでいて若者に絡むシーンぐらいですよね。
水田 あと酒蔵。
宮藤 あっ、酒蔵で一瞬あるか。あの3人が集まったからできる会話、始まる会話、できあがるムードもあるんだけれど、逆に正和がいなくてまりぶと山路だけとか、それぞれの組み合わせの面白さもあるんで書いていて楽しいです。
水田 山路と茜の二人の場面も相変わらずいいですよね。
宮藤 山路がいなくなって探している時のまりぶと正和とか、いない一人のことをしゃべっている二人というのが、全員そろっているってことも面白いけれど、一人が欠けているってことも面白いって思えるのが『ゆとり~』。だから連続ドラマを書いている時、飽きなかったんですよね。
水田 飽きる時もあるんですか?
宮藤 ありますよ。6話で全部やっちゃったけど、10話まで書かなきゃだめかなとか(笑)。僕はドラマより映画、映画よりドラマという考えはあまりないんです。発表の仕方よりは内容に興味があって、今度もしやるとしたら、彼らがもっと違う立場になった時とか、社会が大きく変わった時に、この3人がどう受け止めるのかっていうのは気になります。これからはちょっと年老いていく、そんな3人も見たいなと、ちょっと思います。

『ゆとりですがなにか インターナショナル』
全国東宝系にて公開中
出演:岡田将生 松坂桃李 柳楽優弥 安藤サクラ 仲野太賀 吉田鋼太郎
脚本:宮藤官九郎
監督:水田伸生

写真:© 2023「ゆとりですがなにか」製作委員会
©entax

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