北野武監督、初参加の中村獅童に容赦なし「溺れ方が…」体当たり演技を本編でカット

2023.4.16 18:00

歌舞伎役者・俳優の中村獅童が14日、都内で行われた映画『首』(北野武監督、23年秋公開予定)の完成報告会見に、共演の西島秀俊、加瀬亮、浅野忠信、大森南朋とともに出席。憧れの北野監督に対する熱い思いを語った。

写真撮影に応じるメーンキャスト(左から大森南朋、中村獅童、西島秀俊、北野武監督、加瀬亮、浅野忠信)

『首』は北野監督の最新作で、構想に約30年を費やした戦国スペクタクル。「本能寺の変」を戦国武将や忍(しのび)、芸人や農民といった多彩な人物の野望、裏切り、運命とともに一大スケールで描く。

北野監督は「“構想30年”というのは“3週間”の間違いだと思いますけど…」と冗談交じりに切り出し、「時代劇は大河ドラマをよく見るんですけど、すごくキレイな出世物語にして、人間の業(ごう)とか、欲とか、裏切りとかはあんまり描かれていないので、自分としては面白くない」と持論を展開。そのうえで「“自分が撮ればこうなる”というような発想でやろうということになって、結局だいぶ苦労したんですけど、どうにか出来上がって。とにかく今回の映画ができたのはスタッフ並びに役者さんのおかげだと思っています。ありがとうございました」と周囲の頑張りに感謝した。

「カンヌ国際映画祭」への出品も決定し、再び世界に挑む北野武監督

今作は、『第76回カンヌ国際映画祭』(現地時間5月16日~)の「カンヌ・プレミア」に日本人監督の実写作品として初めて出品される。同部門は2021年に設立されたもので、世界の歴史、民族、風土、生活習慣、信仰など現代社会を取り巻くテーマを描いた作品が選出される。

北野監督は「俺はコンペティションに出て優勝したいなと思って。『菊次郎の夏』(1999年)とかを落とされたので腹立たしかったんですけど、あれは監督が選ぶもので“ヤキモチで落とされた”と、いまだに思っている。知り合いのカンヌの人に聞いたら、今回は“そういうコンペの枠に当てはまらない強烈な映画だ”ということで、“プレミアという名前をつけて別個にやりたい”という話で。その話を聞いて“世界的に当たるな”と、“当たればひともうけだな”と、うれしい限りです」と野望を口にした。

北野武監督の話に耳を傾ける出演者(左から大森南朋、中村獅童、西島秀俊、北野武監督、加瀬亮、浅野忠信)

撮影が行われたのは、2021年4月から9月。「本能寺の変」を策略する羽柴秀吉役を北野監督自身が務めたほか、狂乱の天下人・織田信長を加瀬が、信長に複雑な感情を抱く明智光秀を西島が、秀吉を支える軍師・黒田官兵衛を浅野が、秀吉の弟・羽柴秀長を大森が演じるなど、北野組の常連メンバーを中心に豪華な顔ぶれが勢ぞろいした。

北野監督は撮影で苦労したことを聞かれると、「衣装さんもメイクさんも顔をこんなに(近い)ところで仕事をするわけで、もしコロナにかかった人が出たら撮影が何ヵ月も延びてしまうので、それがちょっと心配だった。年なので、一番心配している俺が一番危なかったりする。死んじゃったりしたら嫌だから」と答え、「役者さんも田んぼの中で、裸でワーワーやってもらったりして、ひどい目に遭った人もいっぱいいるので、かわいそうだった。まあ、映画のために頑張っていたっていう…。みんな映画のせいにしちゃえばいい、(製作の)KADOKAWAのせいにしちゃうとか…」と北野節全開で会見を盛り上げた。

北野組初参加の中村獅童

獅童は、秀吉に憧れる農民・難波茂助役で北野組に初参戦。もともと北野監督の大ファンで、「僕はずっと若いころから北野監督作品が大好きで、役者としても“いつか出演させていただきたい”と長年の夢でした」と語った。

獅童の北野監督に対する思いは、常連出演者である大森に北野作品に出演するための“秘策”を相談するほど。「大森さんとは若いころから仲良くさせていただいていて、会うたびに“監督の映画に出たいんだけど、どうすればいいかなぁ”と話をしていまして、“バラエティとかで会った時に、出たいですって頼んだらいいよ”とアドバイスをいただいていたんですけど、おこがましくて。ごあいさつはもちろんさせていただいたんですけど、自分の口から言うことができなくて…」と振り返り、「そんな時に、緊急事態宣言の時だったと思うんですけど、“ここ3年ぐらい歌舞伎の仕事ばかりだったので、また映画の仕事を少しずつ増やしていきたいね”と言っていまして。“監督の作品のオーディションがあったら行きたいので、そういう情報を事務所にも集められるといいね”なんて話をしていたんですね。その翌日に北野組のお話をいただいて、“こんなことってあるのかな?”と思うような出来事でした」と明かした。

北野組常連の大森南朋(左)と、初参加の中村獅童(右)

茂助は侍大将に成り上がるため戦(いくさ)に身を投じるという役どころで、獅童は「たぶん今までで1番、汚い役と言いますか。歯も汚いし、沼にも沈められるし…。でも、本当に楽しかったです。監督がそれで笑ってくださったりすると、すごく幸福感(がみなぎる)というか、夢のような現場でした」と撮影を回想。北野監督のことを思って身体を張ったこともあったそうで、獅童が「作品の中で秀吉がちょっと嘔吐(おうと)する場面があって、そこが沼というか流れの弱い川みたいな現場で、(共演の)アマレス兄弟に沈められるところだったんですけど、そこは監督が嘔吐(おうと)した所とあまり離れていなくて…。でも、大好きな監督ですから喜んでやらせていただいたんですけど、本編ではカットされていました」と無念の思いを口にすると、北野監督は「ちょっと溺れ方が下手だったんです」と理由をジョーク交じりに語って笑わせた。

●原作 北野武「首」(KADOKAWA 刊)
●監督・脚本 北野武
●出演
 ビートたけし
 西島秀俊 加瀬亮 中村獅童
 木村祐一 遠藤憲一 勝村政信 寺島進 桐谷健太
 浅野忠信 大森南朋
 六平直政 大竹まこと 津田寛治 荒川良々 寛一郎 副島淳
 小林薫 岸部一徳
●製作:KADOKAWA
●コピーライト:ⓒ2023KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd
●公開日:2023 年 秋全国公開

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