『Dr. House』のヒュー・ローリーが多才ぶりを発揮！アガサ・クリスティー原作『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』を映像化！

この記事は、ミステリー専門チャンネル「AXNミステリー」がお届けするコラムです。

“ミステリーの女王”アガサ・クリスティーによる、1934年に発表された「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？」。この小説を、『Dr.HOUSE／ドクター・ハウス』の主人公グレゴリー・ハウス役で有名なヒュー・ローリーが脚本・監督・出演の3役をこなし、映像化しました。

2022年4月に英BritBoxで初公開され、話題となった最新ドラマ『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』。牧師の息子ボビイ・ジョーンズ（『レヴェナント：蘇えりし者』『ミッドサマー』のウィル・ポールター）が、ゴルフのキャディーをしている時、崖下に転落した男性を発見。かすかに意識を取り戻した彼はボビイに「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？」と告げて亡くなってしまいます。その謎に包まれた言葉と、男性の遺品を手掛かりに、ボビイは幼なじみで伯爵令嬢のフランシス・ダーウェント（『ボヘミアン・ラプソディ』『オリエント急行殺人事件』のルーシー・ボーイントン）と一緒に事件の解決に挑みます。

ボビイとフランキー（フランシスの愛称）のコンビはユーモアがあり、幼なじみの二人がお互いに惹かれ合っている様子も見られ、アクションあり、複雑な人間模様ありと、見どころが盛りだくさんです！　演じるウィル・ポールターとルーシー・ボーイントンが魅力的なのも見どころ。

【今回も医者役で出演！】

2004～2012年に米FOXで放送され、エミー賞、ゴールデングローブ賞ほか数々のアワードを総なめにした大ヒットドラマ『Dr.HOUSE』に主演し、圧倒的な存在感でハウスを演じ切ったヒュー・ローリーが、『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』の監督と脚本を手掛け、出演もしていると聞いて、ハウスのファンだった私は非常にワクワクしました！　ヒューは、アガサ・クリスティーの大ファンだそうで、原作に登場するフランキーがお気に入りだと語っています。本作のフランキーは、お転婆で茶目っ気がありながらも品があり、とてもキュート。ヒュー自身は精神科医のジェームズ・ニコルソン役で登場します。『Dr.HOUSE』と同じく医師役ですが、雰囲気は全く違います。

【ヒュー・ローリー、俳優への道のり】

『Dr.HOUSE』で世界的に大ブレイクしたヒューは、1959年6月11日、英オックスフォード出身。名門イートン校、ケンブリッジ大学卒業というエリートで、父親はオリンピックのボート競技で金メダルを獲得したことがあるそうです！

ヒューの俳優としての道は、大学1年の時に、現在はオスカー女優として名高いエマ・トンプソン（『ハワーズ・エンド』『いつか晴れた日に』）と知り合い、コメディ・グループ「Cambridge Footlights」に参加したことから始まったようです。エマとは、その後も友好関係が続き、『いつか晴れた日に』などでも共演。彼女は、今回の『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』にも出演しています。

1980年代からTVドラマや映画で活躍し始めたヒューは、シリアスな作品からコメディまで幅広く演じ分け、数々の作品に出演。『101』『トゥモローランド』といったハリウッド超大作でも、強い印象を残しています。『スチュアート・リトル』シリーズでは、ミスター・リトル役を好演しました。

【「Dr.House」で一躍世界的人気に！英国俳優ブームの火付け役！？】

2004年からスタートした『Dr.HOUSE』で、グレゴリー・ハウスというハマり役を得たヒューは、診断医を主人公にした異色の医療ドラマを大ヒットへと導き、世界中のファンを釘付けに。他の医師が解明できない病気の原因を、優秀な診断チーム（メンバーの中には『シカゴ・ファイア』のジェシー・スペンサーもいます！）を率いて特定し、治療するハウス。天才診断医ですが、人付き合いが苦手な毒舌家で、鎮痛剤依存症など様々な問題を抱えているという、非常に複雑で魅力的な主人公を8シーズンにもわたって演じ切ったヒュー。米FOXのドラマで完璧なアメリカ英語を操った彼を、実は英国人だと気付かなかった人もいたようです。『Dr.HOUSE』の放送当時、私は何度か本作の記事を書くことがあったため、ヒューについて調べたのですが、彼のアメリカ英語の発音は視聴者や評論家から称賛されていて、インタビューなどでブリティッシュ・イングリッシュで話すヒューが（それが本来の姿ですが）ハウスの時とは全く印象が違っていたため、ときめいてしまったのを覚えています。今、振り返ると、後に『SHERLOCK／シャーロック』で注目され、英国俳優ブームを呼んだベネディクト・カンバーバッチよりも先に、ファンを惹き付けた人気英国俳優として、ヒューはパイオニア的存在だったのかもしれませんね。

【俳優だけにとどまらない、多才ぶり！】

ヒューが、名門イートン校、そしてケンブリッジ大学卒業という高学歴のエリートだと書きましたが、今回『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』で脚本・監督・出演の3役を担っていることからも分かる通り、彼は非常に多才な人物です。ヒューは、1996年に「The Gun Seller」という小説を執筆し、ベストセラーになったそうです。文才にも長けているのですね。また、前出の「Cambridge Footlights」時代から親しくなったスティーヴン・フライ（『BONES』の精神科医ゴードン・ワイアット役で海外ドラマファンにはお馴染み）や、『Mr.ビーン』で有名なローワン・アトキンソンらと一緒に『ブラックアダー』シリーズなどでコメディアンとして活躍したヒュー。この情報は『Dr.HOUSE』放送時に知ったのですが、ヒューには、ハウス役からは連想できないコメディアンとしての顔もあると分かり、本当にすごい人だなと実感しました。

さらに、6歳からピアノを習ったというヒューは、ギター、ドラム、ハーモニカ、サックスも演奏でき、歌も得意で、ミュージシャンとしても活動しています。彼は、ブルースアルバムをリリースしており、なんとトム・ジョーンズ、イルマ・トーマス、ドクター・ジョンなどの有名アーティストとのコラボレーションもしているというプロフェッショナル♪　ジャズフェスティバルへの参加経験もあり、彼の演奏は大絶賛されています。

俳優としてのヒューの出演作では、『Dr.HOUSE』以外では、2016年にトム・ヒドルストンと共演したドラマ『ナイト・マネジャー』が特に印象的です。ヒューは悪役で、武器業者の億万長者を怪演しています。見ているとゾッとしてしまうくらい、悪～い役を演じるのも非常に巧いヒュー。『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』でヒューが演じている精神科医のジェームズ・ニコルソンも、親しみやすい雰囲気は全くなく、悪人なのか、そうではないのか、とても気になる存在なのですが、ヒューは巧みに演じています。自身が監督する作品に出演するのは容易なことではないと思うのですが、多才な彼なので安心して観られます！

ヒューは、これまで『Dr.HOUSE』でも2エピソードを監督しているほか、コメディドラマ『Look at the State We’re In!』や『Fortysomething』（ベネディクト・カンバーバッチがヒューの息子役で出演！）などでも監督を務めています。『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』での監督の技も秀逸なので、今後も監督としても、より活躍してほしいと思います。

【生粋のクリスティーファン、ヒューが描く『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』】

アガサ・クリスティーの大ファンであるヒューが、原作を脚色してドラマ化したいと思った理由は、フランキーというキャラクターに夢中になったからだという『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』。英国の階級制度が厳格だった時代に、伯爵令嬢であるにもかかわらず、身分の違いなど気にせず、牧師の息子であるボビイと一緒に謎を解明しようと奮闘するフランキーは、ヒューが夢中になるのがよく分かる素敵なヒロインです。ヒューのアガサ・クリスティー愛が感じられる、彼が脚本・監督・出演の3役をこなした『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？』を、ぜひお見逃しなく！

［文：清水久美子]

■放送情報
AXNミステリー独占放送
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか？」全3話
字幕版：12月25日（日）夕方4:30

特集 アガサ・クリスティーからのXmasプレゼント
リンク先：https://www.mystery.co.jp/recommend/202212.html

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画像クレジット：© Agatha Christie Productions Limited MMXXII
配信元：ミステリー専門チャンネル AXNミステリー