京都・洛南高校1年生の作品が184万句以上の頂点に!幼少から俳句に親しみ、“俳句甲子園”でも活躍「仲間がいたからこその受賞」【第三十六回 伊藤園お~いお茶新俳句大賞】
国内最大級の創作俳句コンテスト「第三十六回 伊藤園お~いお茶新俳句大賞」の文部科学大臣賞、金子兜太(かねことうた)賞および各部門大賞の発表と表彰式が10月15日(水)、六本木ヒルズクラブにて行われた。最高位【文部科学大臣賞】を授与されたのは、今年の“俳句甲子園”でも準優勝に輝いた阿見果凛さん。本大賞用に詠んだ、時代を下支えしながらも静かに姿を消していく人々に焦点を当てた作品が評価された。
「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」とは、世界初の緑茶飲料「缶入り煎茶」を、より親しみやすい「お~いお茶」に名称変更した1989(平成元)年、お茶を飲むひと時をもっと楽しんでもらいたいという思いから始まった応募作品数国内最大級の創作俳句コンテスト。平成元年のスタートからのべ約1,180万人が参加。応募作品数は第一回の約4万句から回を重ねるごとに増加し、累計応募数は約4,730万句に。
三十六回目となる今回は、国内をはじめ世界61か国から、48万7,670名、184万5,983句もの作品が寄せられた。募集要項テーマは「自由」。感じたことや思ったことなどを、季語や定型にこだわることなく五・七・五のリズムにのせてのびのびと表現する。部門はそれぞれ、小学生の部(幼児含む)、中学生の部、高校生の部、一般の部A(40歳未満)、一般の部B(40歳以上)、英語俳句の部。ハガキ、FAX、インターネットにて、一人6句まで応募ができた。
審査員には、いとうせいこう(作家・クリエイター)や宮部みゆき(作家)なども参加。文部科学大臣賞には50万円、金子兜太賞には20万円、大賞には20万円がそれぞれ副賞とともに授与された。

※応募総数40万3,700に及ぶ作品の中から選出

※応募総数48万3,000に及ぶ作品の中から選出

※応募総数78万9,000に及ぶ作品の中から選出

※応募総数5万200に及ぶ作品の中から選出

※応募総数8万5,700に及ぶ作品の中から選出
また、応募総数3万3,900に及ぶ作品の中から選出された【英語俳句の部】大賞は、ゴー・ビン・アイン・クォアさん(ベトナム)の作品『zoo exhibit monkeys watch humans watch monkeys on smartphones(訳:動物園の展示 サルをスマホで見るヒトを サルがじっと見る)』。※ご本人は当日欠席
俳人・金子兜太氏の功績を讃えるとともに、その意思を引き継ぎ、俳句の大衆化の継続とさらなる発展のため、第三十回より設立された【金子兜太(かねことうた)賞】には、矢野啓介さん(岡山県)の作品『感情の 海に一頭 くじら飼う』が選ばれた。

そして、最高位となる【文部科学大臣賞】には、応募総数184万5,983句の中から阿見果凛さん(大阪府)の作品『凍星(いてぼし)や 歴史に残らない 仕事』が選ばれた。人類の歴史の中で後世に伝えられなかった人々や仕事に想いを馳せるとともに、今活躍している人々でも名前や仕事が歴史に残るかはわからないという切なさを詠んだ作品。阿見さんは、今年の「第28回 全国高等学校俳句選手権大会・俳句甲子園」団体で準優勝を果たした京都・洛南高等学校 俳句創作部のメンバーの一人でもある。
文部科学大臣 阿部俊子氏からの祝辞では、「寒さの厳しい冬の夜空で煌めく星を表す『凍星(いてぼし)』という言葉を使うことで、時代を下支えしながらも静かに姿を消していく人々に焦点を当てた素晴らしい作品」と評価した。

俳人の夏井いつき氏は、阿見さんの作品について次のように語った。
「『歴史に残らない仕事』、このフレーズに対して『凍星(いてぼし)や』という季語が取り合わせられると、この季語はとても深い、いろんな意味合いを持ち始めます。例えば、歴史に残らない仕事なんて自分にできるはずがないわと、このフレーズを受け止める人にとって、凍星(いてぼし)というのは、遠く届かない、冷たく光る、そういう星として認識されます。しかし、いつか歴史に残る仕事をしたいよと、大きな志を抱いている人が詠めば、この凍星(いてぼし)は、遥かな目標や憧れ、そんな意味合い、ニュアンスにも見えてきます」

「そして大多数の、歴史に残らない仕事をしながら自分の人生をコツコツと生きている、そういう人々にとっては、この凍星(いてぼし)という季語が大きな、地球の外から見守っている、そういう厳しくも豊かな存在として受け止めることもできるのではないか。そういうふうに一句を読み解いて参りますと、これぞ文部科学大臣賞なのではないかと、そういう思いを共有してくださる方も多いのではないかと思います。こんな大きな句を、こんなお嬢さんが作っていると、日本の未来は大丈夫、安心していいのではないかと、そんなことまで今日思っている次第であります。もう一度、拍手を送りたいです」
今回の受賞を受けて、阿見さんは「私自身、お〜いお茶を飲むたびに俳句欄を見て、いろんな俳句に勇気づけられたこともあって、私の句が、そういう誰かの印象に残るようなものになればうれしいなと思います」と少しはにかみながら笑顔を見せると、「私は小学生の頃から俳句を続けているんですけども、その時からずっと一緒に続けてくれている仲間がいたからこその今回の受賞だと思っています。仲間と喜びを分かち合いたいです。今回はありがとうございました」と、周囲への感謝を述べた。






