最強ボカロP syudou×須田景凪が語る ボカロ業界の過去・現在・未来【前編】

2022.6.16 20:00

日本テレビ系で放送中の『バズリズム02』で実施している次世代の歌い手発掘オーディション「NEXT BUZZ AUDITION SEASON1 -Diamond Voice-」。この企画に最強ボカロPとして参加しているsyudouさんと須田景凪さんに、ボカロ業界の過去・現在・未来について詳しく教えてもらいました。

<ボカロとは……>
ヤマハが開発した音声合成技術とその応用ソフトウェア「VOCALOID(ボーカロイド)」の略称。2007年にバーチャルシンガー・初音ミクの登場により利用者が増え、ボーカロイド音楽の作曲家は「ボカロP」と呼ばれるようになった。

■音楽ルーツはJロック。バンド活動からボカロ業界へシフト

――ボカロPとして業界を牽引してきたお二人ですが、いつ頃からボーカロイドを利用して作曲されるようになりましたか?

須田 自分は2013年からです。syudouくんは?

syudou 僕は2012年、高校生のときに初めてボーカロイド曲を自分で作りました。でも、この世界は曲がハネた(ヒットした)のが早い方が先輩だから、須田さんの方が先輩です。

須田 そんなに早かったんだ! でも、2013年頃から、実はお互いの曲はネット上で聴いているので、syudouくんの存在は知っていました。

syudou 僕の曲の再生数がまだまだ低い時期に、須田さんの楽曲のビジュアルを手掛けているアボガド6さんが僕の楽曲をいいね、と言ってくれたのがきっかけだった気がします。須田さんと組んでいるアボガド6さんが気に入ってくださるなんて!とうれしかったのを覚えています。

須田景凪さん

須田 僕は元々、バンド音楽が大好きで、プロのドラマーになりたくて音楽大学に通っていました。音楽のルーツはポルノグラフィティで、他には東京事変、BLANKEY JET CITY(ブランキー・ジェット・シティ)などをよく聴いていて、Jロックが好きだったんです。だから、自分のバンドで世に出たり、スタジオミュージシャンになりたいと考えていました。でも、バンドを続けるうちに、メンバーとの意思疎通がうまくいかなくて……意見が全然通らないので、自分の中のアイデアとかフラストレーションがたまって、それなら自分でやった方が早いんじゃないか、と思って作曲を始めました。
当時はお金がなかったので、ドラムセット一式を売って、それと引き換えにギターや、作曲に必要なパソコンなどを買ったんです。

――表現の手段としてボーカロイドを選ばれたのはなぜですか?

須田 シンプルに自分が思う音楽を曲として作りたかったんですけど、自分の周りには、僕のワガママを聞いて歌ってくれる人はいなかったんですね。その時はとにかく自分の思うものをアウトプットしたかったので、それに適していたのがボーカロイドだったんです。

syudouさんが学生時代によく聴いていたASIAN KUNG-FU GENERATION

――syudouさんはいかがですか?

syudou 須田さんみたいにプロを目指すほどではないですが、僕もバンド活動をしていました。姉が好きだった音楽の影響もあって、小学生の頃からBUMP OF CHICKEN(バンプ・オブ・チキン)やASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアン・カンフー・ジェネレーション)などをよく聴いていましたね。でも、高校生の時にはすでに、僕もバンド活動が向いていないと感じていました。意見のすり合わせが難しいですよね。なんで自分のやりたいことなのに、人の意見を通すために曲げなくちゃいけないの、って感じちゃったんです。プライドが高過ぎたというか……。

須田 わかる、わかる!

syudouさんが影響を受けたアーティストの一人・米津玄師さん

syudou でもプロになりたいわけではなかったので、ただ好きな音楽を続けたくてボカロで作曲をし続けながら学校に通い、普通に就職もしたんです。仕事と並行して続けるうちに、音楽の比重が大きくなったので音楽一本でやっていくことを決めたのが2~3年前のことです。
なぜボカロを選んだかというと、単純に好きだったというのがまず一つ。あとは、働きながら、学校へ行きながらでも自分の時間で作曲を続けられるというのがありました。さらに、自分がすごく影響を受けたアーティストの一人・米津玄師さんが当時“ハチ”という名前でボカロPとして活躍されていたので、僕もボカロをやりたいな、と素直に思って始めたというのがあります。

■『千本桜』『シャルル』のヒットでボカロが一般化

須田景凪さんのヒット曲『シャルル』 イラスト:アボガド6

――お二人は、いつ頃からボカロ音楽が世間に認知され始めたとお考えですか?

syudou ボカロは……僕は2007年に初音ミクが登場したときから知っているので、個人的な自分の肌感覚でしかないんですけど、最初に世間に知られたのは2011年の『千本桜』のブームが大きいと思います。

須田 うん、そうだよね。

syudou それで、次の大きなブームとして、2017年にバルーン(須田景凪)さんの『シャルル』の大ヒットがあると思います。

須田 ありがとうございます(笑)。

syudou それまではニコニコ動画というインターネットのあるコアな部分で局地的に流行っていたものが、ボーカロイドが聴かれるプラットフォームがYouTubeに移ったのと、スマホの普及がちょうど重なった時期なんです。なので、みんな『シャルル』はボーカロイドだと思わずに聴いていたと思うんですよ。

須田 ああ、それはそうかもしれない。

syudou もちろんボーカロイドと知った上で聴いている人もいるんだけど、その意識よりも「あ、いい音楽がある」という感覚で聴かれるようになったのが『シャルル』で、それが本当の意味でボカロが一般化した瞬間だったと僕は思います。5年経った今でも、カラオケランキングで上位に入る人気曲ですからね、『シャルル』は。影響力がすごいですよ。

■「ボカロだから」じゃなく「いい音楽だから」に変化している

syudouさんアーティストアイコン

――ニコ動からYouTubeへとボカロ音楽の発表の場が広がったんですね。その後の変化を含め、お二人が感じる、現在のボカロ業界について教えてください。

須田 コロナの影響もあって在宅でYouTubeを見たり歌を聴く機会が増えたというのはあるかもしれないですが、ボカロを聴いてくれる人の間口はどんどん広くなっている感じはします。
例えば、2020年にsyudouくん作曲でAdoさんが歌ってヒットした『うっせぇわ』や、ボカロPのAyaseくんがボーカルのikuraさんとユニットを組んだYOASOBI。このあたりになると、ボカロだからどうこうじゃなくて「いい音楽はいい」としてとらえられていますよね。なので、今はいい意味でもっとボカロが一般化されてきたのかなと思います。

syudou 今までは、「ボーカロイドを聴こう」と思って聴いていたのが、今は「音楽を聴こう」と思って聴く人の方が増えたんだと思います。音楽ジャンルの一つの選択肢としてボーカロイドがあるという感じ。

須田 そうだね。

syudou 10年前だったら多分バンドをやったり弾き語りをしていたであろう人達も、ボーカロイドを表現手段の一つとして選ぶ段階になっていると思うんです。
それこそ、今回『バズリズム02』の歌い手オーディションに参加している方たちも、インターネット・ネイティブ世代が多いから、「歌い手」を一つの選択肢にしているんだと思うんです。今までだったら他に流れていたかもしれない才能が、ボカロ業界に集まってきているから、ボカロPも歌い手もたくさん出てきているのではないでしょうか。

ボカロの現在から未来については後編へ続く


【syudouプロフィール】
2012年からインターネット上でボカロPとしての活動を始める。
現在までに「邪魔」や「ビターチョコデコレーション」、「コールボーイ」、「キュートなカノジョ」など多くのヒット曲を発表。独自のダークな世界観が人気を呼ぶ。様々なアーティストへの楽曲提供を手掛け、2020年10月にAdoに提供した「うっせぇわ」では、さまざまなチャートで1位を獲得。
2021年3月よりシンガーソングライターの活動も開始する。2022年8月には初となる有観客ライブ『syudou Live 2022「加速」』を開催予定。

【須田 景凪(すだ けいな)プロフィール】
2013年より“バルーン”名義でニコニコ動画にてボカロPとしての活動を始める。
2016年に発表した代表曲「シャルル」は自身によるセルフカバーバージョンと合わせ、YouTube での再生数は現在までに1億回超えを記録しており、JOYSOUNDの年代別カラオケランキング・10代部門では3年連続1位を獲得するなど現代の若者にとっての時代を象徴するヒットソングとなっている。
2017年10月、シンガーソングライター “須田景凪”として活動を開始。

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