「マンガ大賞2022」大賞『ダーウィン事変』連載5周年記念!原作・うめざわしゅん×TVアニメ監督・津田尚克によるオフィシャル対談が公開!
2025.6.27 19:15
2026年1月から放送開始のTVアニメ『ダーウィン事変』の原作5周年を記念し、原作者・うめざわしゅんとTVアニメで監督を務める津田尚克の対談が公開された。
本作は、講談社の月刊コミック誌「アフタヌーン」にて連載されている大人気ヒューマン&ノン・ヒューマンドラマ。「マンガ大賞2022」大賞、「このマンガがすごい!2022」オトコ編第10位、「第25回文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞、「出版社コミック担当が選んだおすすめコミック2022」第2位、フランス第50回アングレーム国際漫画祭にて実施された「BDGest‘Arts」アジアセクションと、各漫画賞を総なめし、日本のみならず海外でも高い人気を誇る。昨年にはアニメ化が発表。2026年1月の放送開始に向けて、アニメ映像やティザーPV、ティザービジュアルなどが続々と公開されている。
原作の連載5周年を記念して、原作・うめざわしゅんと、TVアニメ『ダーウィン事変』で監督を務める津田尚克の対談が実現。人間とチンパンジーの交雑種(ハイブリッド)・ヒューマンジーのチャーリーを中心に、世界が揺らめいていく様を描いた本作はどのように生まれたのか。そしてどのようにアニメーションで表現されていくのかを原作者目線と監督視点でたっぷりと語った。
♦原作・うめざわしゅん×アニメ監督・津田尚克 オフィシャル対談
――そもそも、『ダーウィン事変』が生まれたのは、以前にうめざわ先生が描かれた短編『もう人間』発端だったそうですね。
うめざわ:生命倫理にまつわるテーマで何かを描きたいな、と元々考えていたんです。『えれほん』という短編集を出す際、そのアイデアから『もう人間」という作品を作ったのですが、描き終わった後、そのテーマをもっと広い世界観で描きたいなと感じるようになって。そこでWebや文献を漁って知識を増やしつつ立てた企画が『ダーウィン事変』でした。すぐに企画を何社かに持ち込んだんですけど、ほとんどの編集者さんが「面白いとは思うけど、どうやって売るか見当もつかない」とおっしゃるので、私も頭を抱えてしまい……。ただ、月刊「アフタヌーン」の担当さんは興味を示してくださって、連載につながることとなりました。
津田:月刊「アフタヌーン」で連載が始まったときのことは、今でも覚えていますよ。当時は純粋な一読者として作品に触れましたけど、こんなに映像化が難しそうな作品が始まるとは……という印象を受けました。いや、それもある意味「アフタヌーン」っぽい作品なのかもしれませんけどね(笑)。僕はどのマンガにもアニメ化するならどういうアプローチをするのか軽く考えてしまう職業病がありますけど、『ダーウィン事変』はいい意味でアニメ化が難しい作品だなと感じていました。ハリウッドで映画化ないしドラマ化ならあり得るかも、と。
うめざわ:元々海外ドラマっぽく見える構成を目指していたので、そう思っていただけたのであれば成功です(笑)。
――そこから連載が進行していくわけですが、『ダーウィン事変』を描く上でうめざわ先生が最も大事にされていることは何ですか?
うめざわ:情報感度ですかね。扱っているテーマの軸はブレずとも、そのテーマをどう受け取られるのかを考えるようにしています。例えばヴィーガンという単語がこの作品には出てきますが、連載開始時点と現在とではそれに対する知識や出来事もどんどん変わってきていますよね。なので、ちゃんとその移り変わりを時事的に捉え、対応するように描いていくことが大事だと感じています。
――津田監督はそんな『ダーウィン事変』のアニメ化を手掛けられることになりました。まず、監督のオファーが来た際の心境をお教えください。
津田:実は、「どの原作でアニメを作りたいですか」といくつかの作品をプロデューサーから渡されたことがあって、その中の一作が『ダーウィン事変』でした。僕としても、難しいことは百も承知で、やりがいのある作品はこれだろうと『ダーウィン事変』を推したんです。僕らが日常生活の中で考えなければいけないテーマをしっかりと描いている、当たり前のようだけど難しいことにうめざわ先生が挑んでいるので、同じ船に僕も乗ってみたい。その思いから『ダーウィン事変』の企画が始まりました。
うめざわ:連載が始まった頃、全くアニメ化するとは思ってもいなかったので、お話を伺ったときにはとても驚きましたね。それと同時に、取り扱っているテーマから逃げずに真正面から描いてほしいこと、その上で差別的な表現にしないことはもちろん、そう受け取られてしまいかねない描写にも気をつけてほしい、とお願いしました。特に後者はマンガを描いている際にも意識しているのですが、作者側に差別的な意図がなくとも、一コマだけ切り抜かれて「酷いことを言っている!」と言われてしまう可能性があります。個人的にアニメはマンガよりもその危険性が高いと思っているので、細心の注意を払ってほしいと津田監督にお願いしました。
津田:なので、シナリオ会議ではこの表現はどうなのか、スタッフ一同で意見を出すようにしました。これまで携わった作品の中でも最もロジカルなやり取りが求められるので、とても根気がいる現場ですね。