「マンガ大賞2022」大賞『ダーウィン事変』連載5周年記念!原作・うめざわしゅん×TVアニメ監督・津田尚克によるオフィシャル対談が公開!
2025.6.27 19:15――本作のシリーズ構成は、『暁のヨナ』や『スパイ教室』などで知られる猪爪慎一さんが担当されています。
津田:猪爪さんにお願いしたのは、今までご一緒した作品の中で、ロジカルに物事を考えることに長けた方だからです。アニメはオープニングとエンディングを除くと各話21分ほどの尺と決まっていますから、展開こそ原作に準じたとしても、どうしてもオミットするページが生じてしまいます。特に本作は、一見飛ばしても問題がなさそうな展開であっても、一コマ省くだけで後の展開が成立しなくなることもある難しい作品なんです。なので、猪爪さんにはどうしたら上手く尺に落とし込めるのか、細心の注意を払って書いていただきました。
うめざわ:引きの部分をどこにするのか、尺の都合で構成は変えざるを得ませんからね。でも、シナリオを読んだとき、この面白い話を考えたのは誰だ?と思うほどに素晴らしかったですよ。
津田:先生が考えたんですよ(笑)。オリジナル要素は基本的に入れず、原作がそのエピソードで何を一番伝えたいのか、どのセリフを一番届けたいのかを考えて、シナリオやコンテを作るように意識していました。
うめざわ:たぶん、セリフを声優さんが演じることを前提に組み立てられていることも、いい意味で原作との違いを生んでいると思うんですよ。シナリオだけでもそう感じていましたけど、収録のときはさらに驚きましたね。声優さんが演じたことによって、このセリフにはそんな捉え方もあったのか、と僕がハッとさせられたほどでした(笑)。
――キャラクターデザインを務められているのは友岡新平さんです。監督から友岡さんには何かオーダーはされたのでしょうか?
津田:友岡さんは『ダーウィン事変』の制作を務めるベルノックスフィルムズの社員さんで、その腕を見込んで参加していただくことになりました。原作をとても読み込んで設定に落とし込んでくださっていて、常に『ダーウィン事変』をアニメ化するならどんな線が最も良いのかを模索しながら作業されていますね。そんな彼に僕がオーダーしたのは、あまり原作から要素を省略させないでほしい、ということです。デフォルメするとアニメーターは描きやすいのですが、作品のテーマ性と乖離(かいり)してしまいます。制作カロリーは高くなることは承知で、しっかりと描いていただくようお願いしました。
うめざわ:僕自身そこまでアニメを観るわけではないですけど、いい意味で日本のアニメっぽくないビジュアルで驚きました。僕からは漫画とアニメでは動かしやすいデザインは異なるので、調整していただいても問題ないですとお伝えしていたんですよ。でも、チャーリーという存在を描くと、自然と周囲のキャラクターの人種を描き分けないといけないので、細かいデザインが必要になってきてしまいます。そこをしっかりと掴み取ってくださったので、実際にキャラクターたちが動いた映像を観るのが楽しみでなりません。
――『ダーウィン事変』の制作を務めるベルノックスフィルムズさんは、本作が初めての元請作品となります。これまで津田監督ともご一緒していた元david productionの梶田浩司プロデューサーが率いられていますよね。
津田:確かに梶田さんが元davidではあるのですが、友岡さんのようにSeven Arcsの流れを汲むスタッフもいたり、他のスタジオから移籍してきた方もいらしたりと、多種多様のチームになっています。僕も元々davidで監督をしていましたが、せっかく別のスタジオに来たのだから、同じようなフィルムにはしないよう、新しいものを模索しながら制作中です。
――副監督に『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で監督のおひとりを務められた中山勝一さんのお名前があることも気になりました。
津田:中山さんはこれまでにもご一緒したことがあったのですが、とてもお力のある方なので、刺激を受けられるんです。今回は、僕の監督業務の中でもメインプロダクション――実制作部分を中山さんにかなりの部分を背負っていただいていています。ベルノックスフィルムズはまだ若い会社なので一つずつ試行錯誤していかなければならないのですが、僕や中山さんが一段、もう一段とスタッフの力を引き上げて、素晴らしい映像をお届けできるように頑張っていきたいと思っています。
うめざわ:どんな風にチャーリーたちが動くのか、非常に楽しみです。アクションシーンだけではなく、チャーリーがアメリカの日常に溶け込んでいる姿がアニメだとどう描かれるのかも楽しみです。
津田:アメリカって日本より空間が広いですよね。なので、日本が舞台の作品とはレイアウトも変わってくるので、美術も細部まで気をつけながら進行しています。テストを繰り返して、今よりもっと完成度の高い映像にしていきたいですね。
<あらすじ>
なんで、人間だけが特別なの?
アメリカ・ミズーリ州の片田舎に暮らす少年・チャーリーは、人間を超える知能とチンパンジーを超える身体能力を併せもつ、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」。
15歳になったチャーリーは、人間の里親の勧めで初めて学校に入学。そこでチャーリーは、頭脳明晰だがコミュニケーションが苦手なルーシーと出会う。平穏な学校生活もつかの間、チャーリーはその出自の特異性ゆえに、「動物解放」を掲げるテロ組織・ALAにつけ狙われることに!チャーリーは家族やルーシーを守るため、ALAと対決する道を選択する——
「テロ」「差別」「人権」「炎上」……ヒトが抱える問題に、「ヒト以外」のチャーリーが、ルーシーとともに対じする。
ヒューマン&ノン・ヒューマンドラマが、ここに開幕!!

TVアニメ『ダーウィン事変』
2026年1月より放送開始