成田悠輔と柳沢正史が“日本の研究”についてぶっちゃけトーク 「この映像を文部科学省に送りつけたいと思います」

2023.12.22 17:00

経済学者・成田悠輔がMCを務めるトーク番組『夜明け前のPLAYERS』。第11夜は睡眠学者である筑波大学の柳沢正史教授とのリモート対談だ。過眠症や不眠症の治療薬につながる物質の発見などで2023年、国際的な学術賞である「ブレークスルー賞」を受賞している。番組初の学者VS学者の対談に、成田の頬がいつもより緩んでいるように見えた。

ネットでも「研究者同士の対談で成田先生が楽しそう」と成田ファンをにぎわせたその日、番組が設けたテーマは“睡眠”だ。社会は夜型人間に不利にできていると実感している様子の成田は、教授の言葉をいち生徒のように真剣に聞いていた。しかし成田には個人的にどうしても柳沢教授に聞きたいことがあったようだ。研究者として成功者である柳沢教授だからこそ話してほしい、日本の研究環境についての苦言だ。意図をくんでか柳沢教授も、忌憚(きたん)ない考えをぶっちゃけた。

■日本の研究力衰弱の原因は研究者の忙しさ?! 「これほんとうにヤバいですよ」

まず成田は、世界と日本の研究環境の違いを柳沢教授につまびらかにしてほしかったようだ。「先生はアメリカで長く研究をされていて、10数年前に日本に拠点を移されました。そのご経験を踏まえて日本の研究の世界や大学についての批判とか、ここをこうしたらどうかという提案はおありですか」と成田。

柳沢教授は、31歳で渡米してから約24年間の研究者生活について「いろいろラッキーなことがあって31歳からPI(※)としてやらせていただいたのですが、アメリカにいた時代っていい意味で暇でしたよ」と言う。研究室での研究以外に義務や責任はあまりなく、教鞭(きょうべん)も執っていたが授業数も年に数コマ、大学運営などに関する管理的な活動義務もなく、定期的に開催される教授会もほとんどなかったのだそうだ。
※PI:Principal Investigatorの略。独立した研究室を持ち、研究実施から予算管理までを担う責任者

それが日本に戻って来て「なんで大学の先生がこんなに忙しいんだ」と感じたのだとか。久しく“日本の研究力が衰弱している”と言われていることに触れ、「最大の原因は、研究者に暇がなさすぎる、研究以外のことに費やさなきゃいけない時間が長すぎることだ」と自身の考えを明かした。

「私のような年齢になると、研究といってもマネジメント的な作業が生じ、若い方を応援することがメインになるので管理的なことも仕方がない」としつつも、日本はメールで済ませても良いような必要のない会議が多いとぶっちゃける。1つの時間が短くても、いくつも重なることで相当の時間が費やされ「日本の場合、それが30歳代の、バリバリやってほしい優秀な研究者にふりかかってくる。これ、ほんとにヤバいと思います」と若手研究者の現況を憂いた。

■「日本の研究のことを言い出すと愚痴ばっかりになる」柳沢教授に成田は大満足

研究予算の配分も気になるところだ。「賛否両論が激しい“選択と集中”についてどう思われますか?」と成田。「柳沢先生は“選択”の王者(配分予算が多いことを例えている)みたいな部分があるので、聞くべき方を間違っているかもしれないですが」と言いつつ答えを迫った。

柳沢教授は「アメリカでは、一人のPI当たり年間どのくらいのグラント(競争的資金)があると、コスト当たりの成果が一番出るかのデータがはっきりと出ているんですよね」と言う。それは、為替による変化はあるものの円換算すると年間5,000万円程度。「(日本も)そういうことをきちんとやるべきなんですよ。選択とか集中とかではなく、最も望ましい額を配るべき」と語る。

さらに「日本は1件当たりの研究費が小さすぎる」と指摘。「若手の研究者が、きちんとした研究費を1つ取っていれば、それだけで生きていけるというのが本来の姿ですよね」と柳沢教授。アメリカでは例えば、世界的な医学・生命科学の研究機構であるアメリカ国立衛生研究所の研究助成金を1件取っていれば生き残れるのだとか。

逆に、日本では大きな予算を投じる場合、その額が極端に大きいとも指摘する。「私もそういうものの一部をもらっているので恐縮なのですが」と笑いながら、「二極化の真ん中辺りにまとめるのがいいんじゃないかと思う」と提案した。

さらに問題なのは、研究者が予算を得るために必要な“評価”に関する作業だと言う。研究者のファンディング(資金調達)では、学術論文や研究報告書を同じ分野の研究者が評価・審査するピアレビューがある。お互いに評価し合って良いアイデアを採択する競争資金のシステムとしてとても重要だが、それは事前評価にとどめるべきだと柳沢教授は主張するのだ。

というのは、現在の日本では事前評価のほか中間評価、事後評価と“評価”に対して膨大な時間を費やさざるを得ない。成田も「みんな、この報告書づくりがメインな仕事みたいになっていますよね」と賛同。アメリカで大きなファンディングを得ても同様の経験はしなかったという柳沢教授は、「(特に事後評価を指して)あの評価を誰が読んで何に使うんだよってことですよ。意味がないんですよね」と柳沢教授も語気を強めた。

柳沢教授の本音トークを聞けて「この部分だけ切り取って、文部科学省の窓口に送りつけたいと思います」と成田は満足な様子。「日本の研究のことを言い出すと愚痴ばっかりになる」という柳沢教授も「ほんとですよ」と賛同した。

睡眠に関する注意点も含め本対談の様子は『夜明け前のPLAYERS』公式HPでノーカット版が、公式YouTubeでディレクターズカット版が配信されている。

「夜明け前のPLAYERS」
公式HP:PLAY VIDEO STORES
公式YouTubeはこちら

写真:@entax

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