多国籍バンドALI単独インタビュー 1st アルバム『MUSIC WORLD』は「遺作のつもりで作った」

2023.5.2 12:00

多国籍バンドALIが自身初となるフルアルバム『MUSIC WORLD』をリリースした。本作品は人気アニメタイアップソング『LOST IN PARADISE feat.AKLO』や『NEVER SAY GOOD BYE feat.Mummy-D』はもちろん、ALIらしくロック、ラテン、ヒップホップなど多彩な音楽を15曲収録。「この1枚を聴けば、ALIというバンドが分かるようになっている」と語るメンバー、LEO(Vo)、CÉSAR(Gt)、LUTHFI(Ba)に、ファーストアルバム制作に対する思いを聞いた。

■点で受け取っていた音楽がすべてつながっていたことに気づく

――まずはアルバムのコンセプトについてLEOさんは「音楽で天国に。音楽で世界を、宇宙を一周するような気持ちにさせたく一生懸命作りました」とコメントされていましたが、“世界を、宇宙を一周する”というコンセプトは、どんなところから生まれたのでしょうか?

LEO 音楽を聴いていると景色が浮かんだり、いろいろな感情が動いたりすると思うんですけれど、そういったものがやはり好きで。ALIは多様なジャンルや国のルーツがあって、いろいろな時代のものを吸収してきました。それで多様な表現をしている中で、僕が好きなアーティストや好きな場所が、すべて心の中でつながっている気がしていて。そこにアルバムを聴いている人を、なんとか連れていきたいな、と思ったんです。

あと亡くなっている人とかも、音楽とか、絵とか、映画とかで残るじゃないですか。作り手が精神を削って何かを作ろうとすると、自分が好きだった、もう今はこの世にいないアーティストたちに思いをはせて“こうだったんじゃないか”と考えたりする。つまり天国にいる自分が好きなバスキア、ゴッホ、坂本九といった偉大な先人アーティストたちは同じ泉にいるんだな、と思って。だからこのアルバムは、天国も一周するという意味も込めています。

ALIは「どんなジャンルか分からない」と言われがちなんですけれど、このアルバムを聴いてもらえば、ALIが分かる名刺というか。最初のアルバムなのに、遺作のつもりで作らせてもらいました。

――ALIの音楽は今の最新のテイストは入りつつも、ルーツを大切に扱うというか、歴史を非常にリスペクトしていることを感じます。

LEO 日本ではずっと点で音楽を受け取っていた感じがしたんですよ。けれど年齢を重ねるにつれて音楽のことをちょっとだけ勉強していくと、ブルース、ジャズ、ソウル、ヒップホップ、ディスコとかがずっとつながっていて。ブラックカルチャーは、それがおじいちゃんと孫の関係だったり、お父さんと子どもの関係だったりする中で、みんなで遊んでいる感じがするんですよね。それが1番あこがれとして強くて。

俺はアメリカではなく東京育ちだけれど、別に音楽はその国境を超えて参加できるものだから、“悪いけど、一緒に遊ばせてもらうよ”とリスペクトの気持ちを持ちながらやっていて。そういったものを意識して、ALIというバンド自体も結成しました。

――もともとALIの音楽は、ジャンルが多様だと言われますよね。

CÉSAR でも結局ジャンルというのは、後でつけていくものになりますし。どうしても枠で囲っていくことが多い中で、ALIもいろいろな音楽を聴いて「これいいよな、あれ、いいよな」と自分たちなりに解釈して、1つのパッケージで出しているんですよね。だからあまり深く考えず、聴く人が素直に「かっこいいな」という感じで、子どものように聴いてほしいなと思って作っているかもしれないです。

ただ一方で、僕がブラジルのハーフで、LUTHFIさんはインドネシアのハーフで、東南アジアのラテンを含んだリズムが得意だったり。LEOさんはLEOさんで、レコードをすごく掘っていて。自分を形作る音楽は、やはり育った環境やルーツといったものと密接にリンクするから、僕らは幅広くいろいろ音楽を聴けている環境にあるのかな、とも思います。

LUTHFI(左)、LEO(中央)、CÉSAR(右) ©entax

■小さいころに聴いた音楽には特別感がある

――LEOさんとLUTHFIさんは昨年お子さんが生まれましたが、そういったことも歴史や引き継ぐことに対する思いに影響していますか?

LEO 去年TVアニメ『ゴールデンカムイ』のオープニングとして『NEVER SAY GOODBYE feat.Mummy-D』という曲を出させてもらったんですけれど、その時に僕もLUTHFIも子どもが生まれて。『ゴールデンカムイ』はいかに死ぬか、みたいなテーマだったんですけれど。それはいかに生きるかと一緒だと思うので。幸い子どもを授かって生まれたので、そういうテーマで書かせてもらいました。

LUTHFI そういえば、LEOは親がレコードを聴いていて、それでレコード好きになったみたいで。そういうのもつながっていますよね。

僕もLEOとCÉSARの影響で、「レコードってそんなにいいの?」となったんですよね。それでCÉSARからいただいたレコードプレイヤーを1回聴いて、レコードも好きになって、今はちょっとずつ集めています。

――LUTHFIさんのレコードへの興味は、お2人の影響だったんですね。

LUTHFI そうです。もともとレコードは聴かなかったんですけど。

LEO 子どもにも聴かせているの?

LUTHFI そう今、子どもに聴かせていて。レコードを聴いている時だけ、泣きやむんですよ。サブスクとかを流している時は、ずっと泣いているんです。

CÉSAR 小さい頃に聴いていた音楽って、そこから先に聴く新しい音楽とまったく違う聴こえ方がする、というのはありますよね。どうしてもノスタルジーになるというか、絶対に浮かぶ風景みたいなのがあったりする。

僕もオトンが乗っていた古いエスティマの助手席に乗るのが好きで。そこで絶対流すのがマーヴィン・ゲイの『What’s Going On.』。この曲を聴くだけで、その時の匂いとか助手席の風とかがフラッシュバックして、幼少期がよみがえるんです。そういうのがつながっていくのが、やっぱりいいですよね、音楽って。

(インタビュー記事②はこちら

【ALI Profile】
VoでリーダーのLEOを中心とした全員ハーフの多国籍バンド。東京/渋谷発。FUNK、SOUL、JAZZ、LATINなどのルーツミュージックをベースにHIP HOP、ROCK、SKAなどをミックスしたクロスオーバーな音楽性で注目を集めている。TVアニメ『呪術廻戦』第一期EDテーマの『LOST IN PARADISE feat.AKLO』が日本のみならず世界的バイラルヒットとなった。

写真:©entax

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