レジェンド声優・古川登志夫が自ら選ぶ“印象深い持ち役 TOP3” 声優人生50年に寄り添う“後悔と感謝”【映画『時給三〇〇円の死神』公開記念インタビュー】
映画『時給三〇〇円の死神』(10月2日公開)にて《バリアフリー音声ガイド》を務める声優・古川登志夫に独占インタビュー! 亡き父への後悔、支え続けてくれた周囲への感謝…約50年にわたる声優人生を振り返るとともに、これまで演じてきた数多くのキャラクターの中から“最も印象深い3人”を選んでもらった。実は最近、また新たな“代表キャラ”が──?
映画『時給三〇〇円の死神』は、なにわ男子の西畑大吾と福本莉子のW主演でおくるヒューマンドラマ作品。生きる希望を失った主人公が“死神”のアルバイトを通じて、未練を残した死者たちの“最後の時間”に寄り添いながら自身の人生と向き合っていく。今回はそんな本作の内容にちなんで、古川自身の人生を振り返ってもらった──。
古川が担当する《バリアフリー音声ガイド》は、登場人物たちの動作や表情、情景など、“今どんな映像が流れているのか”を本編のセリフや環境音の合間をぬって教えてくれる、近年注目のナレーションサービス。本作では無料アプリ『HELLO! MOVIE』を通して利用可能。主には視覚的な障がいを持つ人たちへ向けたものだが、“ながら見”をしたい人や声優ファンにとってもうれしいコンテンツになるだろう。
非常に長いキャリアを持つ古川でも、《バリアフリー音声ガイド》を務めるのは本作が初めて。収録直後には「”難度の高い仕事”であり”意義深い仕事”だ」と満足そうな笑顔を浮かべていた。
※幽(かそ)けき演技に寄り添う《バリアフリー音声ガイド》初挑戦インタビューはこちらから

声優は、“天職”
──古川さんは多種多様な、そして数多くのアルバイトをご経験されているそうですが、特に印象的だったものを挙げるとしたら?
古川:️スナックで弾き語りのバイトをしていたことがありました。カラオケのない時代、興が乗ってくるとお客さんが歌い始め、それに慌ててガットギターをかき鳴らして伴奏をつけるんです。これはおもしろいバイトでした! その時の経験が、後々声優仲間と組むことになる『SLAP STICK(※)』の活動へとつながっていきました。
※『SLAP STICK』は、1977年に野島昭生、曽我部和恭、神谷明、古川登志夫、古谷徹の5人で結成された伝説的な男性声優バンド。古川は主にボーカルやパーカッションなどを担当。後には、三ツ矢雄二も参加。声優によるバンドブームの先駆けとなった。
──本作に登場する“未練を残した死者たちの物語”を見た時、古川さんご自身は何か思い当たる節はありましたか?
古川:強く後悔していることは、亡き両親に親孝行ができなかったことですね。親の反対を押し切って13才で故郷を出奔したもので──その時、父からは「自分で立てた志(こころざし)だからな。夢が叶(かな)うまで戻ってくるな」と言われました。父はその後、泣かず飛ばず全く目の出ない僕のことを心配しながら亡くなりました。
後に姉から聞いた話によると、父は生前「あいつはそのうち夢破れて帰ってくるに違いないから、ここで生きていけるように、土地を残しておいてやるか」と言っていたそうです。自分が忙しく仕事をするようになった姿を見てもらいたかったと、今でも思うんですね。それが叶わなかったことは、いくら後悔しても後悔しきれません。
──お父様をはじめ、ご家族の支えがあって今があるんですね。そうしてつかんだ声優というお仕事については、改めてどのように感じていますか?
古川:天職だとしか思えません。まるで天の配剤であるかのように、人生の節目節目に、恩人と言うべき人が現れ助けてくださったからこそ今の仕事ができていると思うと、そうとしか思えないのです。児童劇団に私を誘ってくれた兄。声優という仕事の道をつけてくださった劇団の座長さん。アニメのオーディションで、「主人公は古川で」と決めてくださったプロデューサーさん。僕に間断なく仕事を与え続けてくださったプロダクションのマネージャーさんたち。応援してくださるファンの皆さん方。足を向けて寝ることのできない人たちです。
“50年の声優人生”で、特に印象深いキャラクターは?
──古川さんは、1976年のTVアニメ初主演『マグネロボ ガ・キーン』北条猛役から数えても今年で50年、今も現役でマイクの前に立ち続けてらっしゃいます。普段から何か心がけていることはありますか?
古川:️日々の仕事が同時に訓練になっているとも思いますが、クリスチャンなので毎朝の聖書朗読がルーティーンになっています。聖書はとても分厚く、1日1章を読んでも読了するのに4年半かかります。1日1章だと苦になりませんが、ただ読むのではなく速読しています。これが発声発音、滑舌、動体視力の訓練になると思っています。
──おそらく「古川さんのキャラクターといえば?」という質問の答えは世代によって様々だろうと思いますが、古川さんご自身の中で特に印象深いキャラを選ぶとしたら?
古川:️印象深いキャラは3つほどあります。1つは巨大ロボットアニメの主人公の声を立て続けに演らせていただいていた頃、オーディションでテレビアニメ『うる星やつら』の諸星あたる、という役が決まりました。それまでと違って三枚目の演技を要求されるキャラでした。
2つ目は『ドラゴンボール』のピッコロ。こちらは今までと違って低音を要求されるキャラでした。そして3つ目は『北斗の拳』のシン。完全な悪役でした。これらの作品、そしてキャラは、自分の守備範囲や声の幅を広げてくれた──という意味で印象に残っています。
──ちなみに、近年演じられた中で特にお気に入りだった役や演じていて楽しかった役などあれば、ぜひお聞かせください!
古川:最近やった仕事でおもしろかったのは『からくりサーカス』のフェイスレスという役でした。同一人物の中の4つの人格を演じ分けるという難度の高い仕事でしたが、自分の持てる力のMAXで演じたので、自分の代表的作品と位置付けています。
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【古川登志夫 Profile】
栃木県栃木市出身。7月16日生まれ。青二プロダクション所属。『第十八回 声優アワード(2023年度)』功労賞受賞。『東京アニメアワードフェスティバル2024』アニメ功労部門功労賞受賞。主な出演作に、『うる星やつら』諸星あたる、『ドラゴンボール(シリーズ)』ピッコロ、『ONE PIECE(ワンピース)』ポートガス・D・エース、『名探偵コナン』山村刑事、『悪魔くん』メフィスト2世、『ゲゲゲの鬼太郎(第6期)』ねずみ男、『からくりサーカス』フェイスレス、『PLUTO』お茶の水博士、『北斗の拳』シンなど。
<公式サイト>
<公式X(@TOSHIO_FURUKAWA)>

映画『時給三〇〇円の死神』
2026年10月2日(金)全国公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/ギャガ
<あらすじ>
不幸が重なり人生に絶望していた大学生・佐倉真司(演:西畑大吾)は、同級生の花森雪希(演:福本莉子)から奇妙なアルバイトに誘われる。それは、時給はわずか300円。人生の延長時間(ロスタイム)を与えられた死者たちの心残りに寄り添い、あの世へと導く“死神”の仕事だった──。
<公式サイト>
<公式X(@jikyu_300movie )>
※古川さんの音声ガイドは無料アプリ『HELLO! MOVIE(読み:ハロームービー)』で利用できます。
取材・文・写真:entax