【独自インタビュー】笹森裕貴「“笹森くんじゃないみたい”が最高の褒め言葉」――ハイロー新作で山賊に挑む
ドラマ放送から10周年を迎えた総合エンタテインメント・プロジェクト『HiGH&LOW』。その舞台最新作『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』で、山賊・斑目一派の頭領・斑目笹玖(まだらめ さく)を演じる笹森裕貴だ。ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズや『ロミオ&ジュリエット』など数々の舞台で実績を重ねてきた笹森が、「金が全て」という歪んだ価値観を持つ狡猾な山賊をどう捉え、どう演じようとしているのか。稽古真っ只中の現場で、entaxが独占インタビュー。
――斑目笹玖は「金が全て」というかなりクセの強い男ですが、台本を最初に読んだときの第一印象はいかがでしたか。
もう「ザ・山賊」って感じですよね。今回の舞台『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』の世界には叢雲颯斗(小野塚勇人)も謝羽良彩音(彩風咲奈)も盗賊や海賊として登場しますが、世間一般がイメージする”賊”像とはちょっと違うパターンだと思うんです。でも笹玖は本当に“賊”。そこは自分の想像していたとおりというか、台本を読んだ段階からしっくりくる感覚が強かったです。
――クリーンな役ではないことへの抵抗はなかったですか。
一切ないです!山賊をやることへのためらいはまったくなくて、むしろこういう役はやってみたかった。悩むのは「賊であること」じゃなくて、中身の部分――キャラクターの内面をどう作るかというところですね。
――そういう意味では今回のメインビジュアル、笹森さんの印象がこれまでとかなり違いますよね。
そうなんですよ。でもこれ、すごくうれしくて!こういう感じのビジュアルは今までやったことがなかったんですけど、僕の中では「笹森裕貴の根幹にある部分」が出ているなと思っていて。誰しも普段生きていて、心の中でこんな目つきになるときがあるんじゃないかなと思うんですよ。もちろん表には出さないけれど。今まで見せたことのない顔ができるというのは楽しかったですね。
――実際、撮影現場のスタッフ間でも「あれ、笹森さんだよね…?」とざわついていたとか。
めちゃくちゃうれしいです。「笹森くんじゃないみたい」って本当に最高の褒め言葉ですよ。「こういうのもできますよ」というのを見せたいということもあります。母親にビジュアルを見せたときも「やばい!」って言われましたし、ファンの方からも「え、どこにいるの?」という反応をいただいて。ビジュアルでのインパクトは一応残せたので、あとはもう中身をしっかり作り上げていくだけです。

――役の影響は私生活にも出るタイプでしょうか。
これ、本当によくないんですけど、役者をやっていろんな役をいただいていると私生活がちょっとずつ変わってくるんです。明るい役をやればめちゃくちゃ明るくなるし、静かな役なら「今日おとなしいね」と言われたり。今回は稽古が始まって2週間で、家族に会ったら「目つきが悪くなった」と言われました。「ありがとう」って返しましたけど。ちょっと賊っぽくなる夏を過ごすことになりそうです(笑)
――兄の松竹(八木将康)にはかなり当たりが強い役柄ですが、八木さんとはどんな話をしていますか。
演出家ののりさん(平沼紀久)から「兄弟のあり方は台本に描かれていない部分が多いから、自分たちでどんどん作っちゃって」と言っていただいて。それってすごく大事なことで、八木さんとは何か思いついたら二人で話し合うということを繰り返しています。家族構成はどうだったのか、ほかに兄弟がいたのか、こういうエピソードが過去にあったんじゃないかとか。その積み重ねで芝居は結構変わってくるんですよね。山賊としての顔とは別に、笹玖が兄に圧をかけるときって、弟の顔が出ているんだと思うんです。観ている人は「怖い」と感じるかもしれないけれど、怒る人って、本質的には自分に余裕がない人だと僕は思っていて。だからまだ未完成で未熟な部分がある、若い年齢設定として今は演じています。これから稽古でどう変わっていくかはまだわからないですけど、そういう部分は八木さんとしっかり話し合いながら進めています。
――手下の麟と天を演じる伊勢大貴さん、納谷健さんとの関係や、斑目チームの雰囲気はいかがですか。
役柄とは真逆というか、現場自体が本当に明るいんですよ。ほんわかしていて。キャストのほとんどが僕より年上なので、先輩たちの胸を借りるような気持ちで、とりあえず自分の思うことを全力で表現してみようとやっています。それに合わせてくれる先輩方の懐の深さにも助けられていますね。今回は共演経験のある方がほとんどいなくて、ほぼ初めましてです。イベントなどでお会いすることはあったんですけど、お芝居をするのは本当にほぼ全員が初めましてです。よく話すのは八木さんや納谷くんかな。でもコミュニケーションを取っていない人がいないくらい、全体的にすごくいい空気感の現場ですね。

――これまでさまざまな舞台で殺陣を経験してきた笹森さんから見て、今回のアクションはいかがですか。
すごく楽しいです(即答)もちろんハードではあるんですけど。アクション監督の栗田さんとは今回が初めましてなのですが、色々なところでお名前は目にしていたので、一緒にできることがうれしくて。初めてやる動きもめちゃくちゃ多いし、殺陣の数も単純に多いので、やりがいしかないです。膝がアザだらけになって、初めてサポーターを買いました(笑)。僕、女性と立ち回りをするのが初めてなんです。彩風さんと戦うシーンで殴る手(動き)があるんですけど、これが怖すぎて。刀ならまだ距離があるんですが、拳だと近いので……。さらに桔梗(佐藤日向)をさらうシーンではナイフを突きつけたりもするんです。ひどいですよね(笑)ですが芝居でもなかなかやらないことなので、新たな挑戦だと思っています。稽古が始まって2週間くらい。今は全体の大枠をとらえるところですが、ここから本番に向けてさらに詰めて、磨いていきたいと思っています。
――“ハイロー”はドラマ放送から10周年。その世界に入ることについて、また見え方の変化はありましたか。
やっぱり「不良の世界」というイメージが強かったですし、LDHさんとお仕事をするのも初めてだったので、企画からしてめちゃくちゃイケイケなのかなと想像していました。でも実際に中に入ってみたら全然違って。演出家ののりさんをはじめ、演劇への向き合い方がすごく核心を突いているし、「うぉー!行くぜ!」みたいな勢いの良さはあるけれど、それ以上に本当に真面目に、正直に、真摯に作品を作っていらっしゃるんだなと感じました。その一員として携われたことはすごく光栄です。これまでに経験してきた2.5次元の作品やグランドミュージカルとのギャップは、正直そこまで大きなものはなかったです。お芝居をすること、殺陣をすること、歌を歌うこと、踊ること、その根本は一緒なので。むしろそれが全部できるということのうれしさの方が強いです。前回の作品から引き継いでいる魂はもちろんあるんですけど、リスペクトを込めつつも、あまり意識しすぎないようにしています。「一番おもしろくする」という気持ちでやらせてもらっていますし、シリーズの途中から入ること自体はやっぱりプレッシャーのかかるものだと思います。でも、台本をいただいたときから、この作品をよくするために笹森裕貴が、斑目笹玖が何をすべきかというのは、自分の中では結構すぐに見えてきたんです。そこは多分間違っていないと思うので、ぶれずに続けていきたいなという感じですね。
――昔から笹森さんを応援しているファンに、今回どんな姿を見せたいですか。
「姿勢」ですね。舞台に立ったとき、その人の性格や生きてきた道って姿勢に出ると僕は思っているんです。自信がない人はうつむくし、自信がある人はどっしり構えているし。だからどんな役でも姿勢にはめちゃくちゃこだわってきました。元々姿勢がよくない方なので、正す訓練も受けましたし。でも今回は、これまでと姿勢自体が全く違うと思います。「笹森裕貴を感じさせたくない」ので、まずはそこに注目してほしいです。
――では、今回初めて笹森さんを知る人には、どこに注目してほしいでしょうか。
一番はシンプルにお芝居です。歌よりもダンスよりも殺陣よりも、まずは芝居だと自分の中では思っているので。各役者さんのファンの方がそれぞれの推しを観に来る中で、お芝居でちゃんと見せられる役者でありたい。そこをしっかり届けたいです。
――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』、舞台ならではの「生」感というか、殺陣があって、歌があって、踊りがあって。戦国時代の物語を通して、キャストの熱がすごくダイレクトに伝わりやすい作品だと思います。ぜひ劇場でリアルに体感してほしいです。お待ちしています!

『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』公演概要
演出:平沼紀久
出演:小野塚勇人 笹森裕貴 彩風咲奈 山田健登 蒼木陣 小澤竜心 八木将康 うえきやサトシ 土井ケイト 夏川椎菜 佐藤日向 伊勢大貴 納谷健 川久保拓司 伊達暁 伊藤正之 ほか
公演日程:2026年7月15日〜30日 東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場) 2026年8月7日〜9日 大阪・梅田芸術劇場メインホール 2026年8月14日〜16日 愛知・御園座
公演HP

