精神が擦り切れそうなほどの慟哭――高橋怜也 初主演舞台『逃亡者は北へ向かう』開幕【ゲネプロリポート】
2026年6月12日(金)~21日(日)に、東京芸術劇場 シアターウエストにて上演される舞台『逃亡者は北へ向かう』。主演を務めるのは今作が初主演となる高橋怜也。entaxではゲネプロの模様をリポート!本舞台をこれから見る方へ、注目ポイントをネタバレなしでお届けする。【写真20枚】
原作は『孤狼の血』などで知られる柚月裕子による小説『逃亡者は北へ向かう』(新潮社刊)。
震災直後に殺人を犯し、死刑を覚悟しながらも“ある人物”を探すため姿を消した青年・真柴亮。刑事の陣内康介は津波で娘を失いながらも真柴を追う。 “逃亡者”となった男が北へ向かう姿を通して、「罪と赦し」「喪失と再生」、そして“人が生きること”の意味が描かれる――。
本舞台の脚本・演出は吉村卓也、音楽をTAKE(FLOW)が担当。そして主人公・真柴亮役は本作がストレートプレイ初主演の高橋怜也が務める。
■高橋怜也の真骨頂『慟哭』の芝居

真柴という男を千穐楽まで生き続けたら、高橋の精神は擦り切れてしまうのではないか――。そんな不安を覚えてしまうほど、2時間の高橋の芝居からは、凄まじいまでの感情のほとばしりが伝わってきた。特に圧巻だったのは、慟哭・泣きの芝居だ。
しかも嗚咽で喉が狭まるかと思いきや、セリフの聞き取りやすさは全く変わらない。アーティストとしても活動していた高橋の強みである“声”、そして抜群の滑舌が、遺憾なく発揮されていた。逃亡中の全身を使う表現から、繊細な目の動きまで、一瞬たりとも「高橋怜也」を感じさせず「真柴亮」として舞台で生きている姿。空間を共にする観客一同、高橋の『感情が伝播する芝居』に引き込まれること間違いない。


波岡一喜演じる陣内康介は、津波で行方不明になった娘を探すか、刑事として容疑者を追うか迫られるという役柄。感情を押し殺して“刑事”であろうとする陣内の複雑な感情のながれを、波岡は重厚感を持って表現。舞台を引き締めつつ、観客を『3.11後の東北』の世界へ引き込んでゆく。

高橋健介演じる藤島は、自身は震災で誰も失わなかったからこそ、周囲の被災者たちに対し負い目を感じ、葛藤する刑事。物語の進行役という側面もありつつ、葛藤を吐露するシーンでは藤島の実直さを感じさせる、高橋の素直な表現が光る。
■スポットライト外の演技にも要注目!
限られた尺におさめるためシーンの取捨選択はしつつも、原作の重要な描写は取りこぼさない、秀逸な構成であった。また、シーンの転換および状況説明の二役を、電話やラジオの声が効果的に果たしていたのも印象的だった。これにより、キャストに説明的なセリフを与えずとも、原作ではト書きで描かれているキャラクターの心の動きが、舞台でも追いやすいつくりになっていた。
さらに本舞台は、スポットライトが当たっていないところで行われている芝居にも注目してほしい。物語や登場人物の関係性を補完する原作の要素が、そこでも存分に描かれている。配信では映りにくい、生だからこそ見ることができる要素のひとつかもしれない。
開幕に寄せ、出演者からコメントも到着した。
《真柴亮 役:高橋怜也コメント》
舞台「逃亡者は北へ向かう」が、いよいよ幕を開けます。
僕自身、初の主演舞台。正直なところプレッシャーや緊張はとてもあります。
ただ、稽古中カンパニーの皆様に支えてもらい大切に作り上げることができました。
大きな挑戦となる本作ですが、この物語とそして真柴亮と、真摯に向き合い届けたいと思います。
劇場でお待ちしています。
《陣内康介 役:波岡一喜コメント》
今まで多くの刑事をやってきましたが、震災を背負っての刑事は初めてです。
この年齢になっても、新しい挑戦や刺激をもらえることを嬉しく思います。
また、ベテランと若手で、真摯にぶつかり合い稽古を重ね、胸を張ってお届けできる作品になっております。
皆様、劇場で観て頂けると嬉しく思います。
■公演情報
舞台『逃亡者は北へ向かう』
公演日程:2026年6月12日(金)~6月21日(日)
劇場:東京芸術劇場 シアターウエスト
※6月21日(日)15:30千穐楽公演は生配信も実施
原作:柚月裕子『逃亡者は北へ向かう』(新潮社刊)
脚本・演出:吉村卓也
音楽:TAKE(FLOW)
出演:
真柴亮:高橋怜也
陣内康介:波岡一喜
藤島:高橋健介
目黒:松田大輔
郷田:八十田勇一
村木直人:山村翔/中谷薫風
村木圭祐:前川泰之
日沼正行:山寺宏一【声の出演】
アンサンブル:中島弘輝・樽見ありがてぇ・守山龍之介・飯山真衣・須田拓也・伽代子・仁志有皇麻・鶴目悦子・撫咲来/柿田光凜
写真・取材・文:entax編集部















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