謎解きクリエイターはどんなことを考えている? 東京メトロの謎解きイベントも手がけるクリエイター集団「NazoLock」が明かす“内”と“外”【独自インタビュー】
クイズ王・伊沢拓司氏率いる「QuizKnock」から生まれた謎解きクリエイター集団「NazoLock」の主要メンバー、山本祥彰(よしあき)氏と川上諒人(りょうと)氏に独自インタビュー!「クイズ」と「謎解き」の違いとは? 普段のアイデア探しやこだわり、それぞれが振り返る“謎解きの原点”などを聞いた──。
初心者でも楽しめる“入り口となる謎解き”を作ることに重きをおく「NazoLock(ナゾロック)」は、これまで東京ドームシティで過去3度にわたって開催された『トーキョーディスカバリーシティ!』など、大規模な周遊型イベントの謎解き制作をいくつも担当。
4月27日(月)から開催中の、東京メトロの駅や沿線の街に隠された様々な謎解きに挑戦しながらゴールを目指す周遊型謎解き『東京メトロ謎解きガイドブック 宝石をたどる路線図』(〜7月31日まで)も手がけている。

|大事なのは、“パッと見の楽しさ”と“納得感”
──まずは改めて、「NazoLock」立ち上げの経緯についてお聞かせください。「QuizKnock」でも“謎解き”のコンテンツはありましたよね?
山本:はい。「QuizKnock」にも「謎解き制作班」のようなものが以前からあったのですが、「謎解き」の楽しさをもっと広めたいと考えたときに、「クイズ」を名に冠した「QuizKnock」という名前を使いすぎるのもどうかという感覚もあり、「謎」という言葉がついた新しいブランドを作った形になります。
川上:本当に謎解きが好きな人が集まっていて、謎解きクリエイターとしてやっていこうという気持ちが溢れているように思いますね。
山本:普段からメンバー同士で謎解きに遊びに行ったりもするよね。好きだからこそ、みんなが謎解きについて色々なことを考える、という良い循環で回っているチームだと思います。最近だと、川上たちチームメンバーにガツガツ作ってもらって、僕がチェックするという感じで回すことが多いですね。本当にいい謎、いっぱい作ってくれています!
川上:「作れません、作れません!」と言いながら作ってます(笑)

──いい謎解きを作るため、普段どんなことを心がけていますか?
川上:やっぱり、パッと見の楽しさですね。「謎解き」ってある意味、人を選ぶ趣味なところがあるじゃないですか。会社の同僚や友達を「謎解きに行こうよ」と誘ってみても、“優秀な人じゃないと…”みたいな──。本当はそうじゃないよって、まず伝えたいんですよね。そのためにも、パッと見で楽しいことがあるんだよと、内容だけでなく見た目のワクワク感みたいなのも重視していますね。
山本:あとは、“納得感”みたいなものも大事だよね。「謎解き」に慣れていない方や、初めて挑戦するという方は、やっぱりなかなか解けないこともあって──。じゃあ、どうしたらその“解けなかった謎解き”を楽しんでもらえるかと考えたときに、「あっ、もうちょっと考えれば解けたじゃん!」という気持ちになってもらうことが大事だと思うんです。そうすれば、きっと考える楽しさが芽生えて、もうちょっとやってみようかなと前向きになれると思うので。謎自体は難しかったとしても絶対に納得感があるように設計していますね。
──逆に「謎解き」を作る側としては、どんな時にテンションが上がりますか?
山本:やっぱり解いている人の顔を見る、「楽しかったよ」という声を聞く、これがうれしいですね! 作ってよかったなという気持ちになりますし、逆にそこまでは不安の連続です(笑) 「謎解き」のことを一番考えているのは作り手である自分たちなので、謎のことも分かりすぎちゃって、これ本当におもしろいのかなと自信がなくなってくることもあるんですよ。でも、自分たちを信じて出したものが、本当におもしろく感じてもらえたんだなと分かると安心して、よかったなと!
川上:僕らは周遊系の「謎解き」を作ることが多いんですが、イベントが始まったばかりのときに(イベント自体が)うまく回っているかのチェックで見回りに行った時とかに、会場で直接お客さんの顔を見られる時があります。本当に解いてくれているんだなというのが伝わってきて、それがうれしくて続けていますね。
── 「謎解き」のエゴサーチ的なことはしたりしますか? (笑)
山本:自分が作ったやつは見ますね(笑) 辛辣(しんらつ)な意見も真摯(しんし)に受け止めてます! 難しい、不親切、分かりづらいといった指摘も、「貴重な感想ありがとうございます!」という気持ちで次に活かしています。

──ズバリ、「クイズ」と「謎解き」の一番の違いはどこだと考えますか?
山本:「クイズ」を“知識を使って答えを導くもの”と定義した時に、「クイズ」は知らなかったら終わりのものが多いですが、「謎解き」は基本的に“まったく知らないこと”がなく、いかに問題と向き合い、どう考えて解決方法を探るのかという部分に焦点が当たっているところが、両者の大きな違いかなと思います。自分の中の当たり前だったものがふとしたきっかけでつながる──「謎解き」を解くためのヒントになるんです。
──「謎解き」は、諦めない限りは解くチャンスがやってくるということですね。
川上:「クイズ」は知識欲と結びついていますが、「謎解き」は成功体験に重きを置いていると思っています。知識に頼らない分、“自分の力で解けた”という記憶が強く残ると思うんです。
山本:早押しクイズの大会とかだと、10問用意したとしても、そのうち3問は答えが出なくても成り立つゲームなので、実は答えが出る想定で作っていない問題もあるんです。でも「謎解き」は、基本的には答えを出してほしいと思って作っていますね。ぜひ諦めずに解いてほしいですね!
| “外側”を知っていると、おもしろい「謎解き」が作れる?

──おふたりの“謎解き(制作)の原点”が気になります。いつ、どんな体験だったのでしょうか?
山本:小学校4年生くらいのとき、親に暗号みたいなものを出していたことがあって、それがクリエイターのスタートだと言えるかもしれないですね。例えばひらがなの「や」が九つ書いてあって、答えが「野球(や・きゅう)」である…みたいなレベルのものでしたけど(笑) もともと、ワクワクするからという理由で“解くこと”が好きだったと思います。それで、自分もそういうワクワクするものを作ってみたいと思って、見よう見まねでやってみたんですよね。
川上:僕は中学生の頃、クラスの“レクの時間”に脱出ゲームみたいなものを担当したときがあって、図書室にいろいろ貼ったり隠したり──それが最初にちゃんと作ったというか、もちろんちゃんとはしてないんですけど(笑) それが原点なのかなと思います。
──自分から「担当したい」と手を挙げたんですか?
川上:自分でもやりたかったんですが、当時は先生が優しい人で“打席”を与えてくれた形でした(笑) あとは、テレビの影響もあったと思います。子どもの頃は『IQサプリ』(脳内エステ IQサプリ/フジテレビ系)のような、ひらめき系の問題がたくさん出る番組が流行っていましたし、中学生の頃には『リアル脱出ゲームTV』(TBS系)も見ていました。そういったものが自分の中では結構大きな存在で、影響された気がします。

──「NazoLock」の活動も、子どもたちに影響を与えているかもしれませんね。これから謎解きを作ってみたいという方々へ向けてアドバイスなどはありますか?
山本:僕が謎解きを作るときは、結構“謎解きの外”から持ってきた知識が活きることも多いと感じます。美術館などで何か体験をしたときに「これっておもしろかったし、謎解きにできないかな?」と考えるみたいに、謎解き以外のものを謎解き側に持ってくる作業を結構しています。“外側”をたくさん知っている人は、絶対におもしろい「謎解き」を作れると思うんです。もし何をすればいいか迷ったら、謎解き以外のいろんなことを体験してみるのが良いのかなと思います。
──美術館で言うと、具体的にはどんなことに注目したのですか?
山本:例えば、ゴッホの《ひまわり》の展示で“ひまわりの香りがした”とか、そういう体験をあるテーマに結びつけて「謎解き」にできないか、と。他にも“ハサミの構造”とか、“科学館にあった、容器の外側を握ったら水に沈むおもちゃ”とか。いろんなところにアイデアの種があって、それをいかに見つけて結びつけられるかというのが、「謎解き」作りには言えるんじゃないかなと思っています。

川上:僕も、別のジャンルのものは参考にしていますね。「謎解き」には、“謎を解くことじゃない楽しさ”もほしいので、日常の中のパッと見の楽しい出来事なんかを取り入れたいなといつも思っています。
山本:最近のもので言えば、“ふくらPが解けるまで出られない”という動画*を出したんですけど、それは「六角形のラックってオシャレだな」とずっと思っていたのがきっかけになりました。六角形1個と、その周りに6個置いたら魔法陣みたいになって、数学的なおもしろいパズルが作れそうだなとなんとなく思って──そんな感じで、日々の「なんかいいかも」が実際に形になることが多いですね。
*『ばら撒かれた漢字と謎のラック。脱出せよ。』2026/4/30 公開(QuizKnock公式YouTubeチャンネル)
──ありがとうございます。では、最後に「NazoLock」の今後のビジョンについてお聞かせください。
川上:もっと「謎解き」という世界に人が増えるといいなと思っています。去年は『ナゾトキマーケット』(2025/11/8〜9 @東京ドームシティ)という即売会があったり、『ゲームマーケット*』にも近年謎解きの出展が多かったりと盛り上がっているので、もっと業界全体が盛り上がるように、人を呼べるように頑張りたいです!
*ゲームマーケットは日本最大規模のアナログゲームイベント。電源を使用しないアナログゲームの振興と、ユーザーの交流を目的とする。
山本:業界自体もどんどん広がってきていて、自治体とコラボした「謎解き」が全国各地でやられていたりしています。僕自身も、「謎解き」に触れたことない人にまで届けたいという気持ちがベースとしてありますし、もっとたくさんの人に、「謎解き」を通して考えることの楽しさを知ってもらいたいですね!

【山本祥彰 Profile】
1996年生まれ。日本漢字能力検定1級。謎解き制作チーム「NazoLock」のリーダーで、知的エンタメ集団「QuizKnock」のメンバー。早稲田大学先進理工学部卒業。早稲田大学高等学院在学中に、第34回「全国高等学校クイズ選手権」にてベスト4入りを果たす。2017年「QuizKnock」に加入し、YouTubeチャンネルへの動画出演に加え、謎解きやクイズの制作・監修を担当。2024年に「NazoLock」を立ち上げた。
【川上諒人 Profile】
2000年生まれ。東京大学理学部卒業。2022年に知的エンタメ集団・QuizKnockに加入し、現在は主にQuizKnock発の謎解き制作チーム・NazoLockでディレクターを務める。2022年の「謎解き能力検定」で満点を獲得。趣味のオセロでは初段を取得している。気象予報士の資格を持つ。
