「To take a hard step」朝ドラ『ばけばけ』のモデル・小泉セツ&小泉八雲夫婦の人生とは…2人の交わした愛ある手紙や執筆のエピソード

2026.6.8 12:45

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小泉八雲・小泉セツにひ孫、小泉凡さんの写真

6月3日放送の『人生が変わる1分間の深イイ話』復活2時間SPでは、朝ドラ『ばけばけ』のモデルとなった国際結婚夫婦の小泉セツと、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンのエピソードが紹介された。2人のひ孫にあたる小泉凡さんが、2人の乗り越えた数々の困難について解説した。

今年話題となった、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』。暮らしや価値観が急速に変化した明治初期、主人公の松野トキのモデルである小泉セツと、日本に伝わる怪談話を世界に伝えた、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの国際結婚夫婦の日常を描いた物語だ。

今回解説してくれたのは、八雲・セツのひ孫にあたる小泉凡さん。凡さんは島根県立大学で妖怪学なども教える民俗学者で、八雲研究の第一人者。先祖愛が強すぎる“八雲マニア”だ。まず凡さんは、2人が松江での最後の5か月を過ごした、庭のある武家屋敷を紹介してくれた。

畳の部屋に置かれた八雲の机は、普通よりも高く作られていた。八雲は16歳で左目を失明し、右目も近視だったため、大工さんに特注して机を作ってもらい、肉眼を天板に近づいて執筆していたそうだ。

西洋人がほとんどいなかった時代、2人は英語でコミュニケーションを取るのに苦労したことが分かっている。現存している英単語帳はセツのお手製で、八雲の英語の発音を聞きながらセツが一生懸命メモをとっていたことが伝わるものだ。

また、八雲が日本語の単語を覚えることも。実際に、八雲がセツに宛てた手紙には、カタカナとひらがなと漢字を混ぜた暗号のような言葉で、「小・カワイイ・ママ・サマ・」「やいづ・の・パパカラ・カワイ・ママ・ニ・」といった具合にセツへの愛がつづられている。セツが八雲に宛てた手紙も同様に「ヨロコビデ、ワライマシタト、セップン、シマシタ(うれしくて笑顔になり、手紙にキスしました)」というように、八雲が読めるようにカタカナで書かれている。

紀行文と再話文学を得意としていた八雲にとって、セツは執筆活動でも重要なパートナーだった。世界中で読み継がれている『KWAIDAN』はセツが八雲に語って聞かせた民間伝承がもとになっている。

そもそも、アイルランド出身のラフカディオ・ハーンはどのようにしてセツと出会ったのか。幼い頃に両親と離れ離れになり、親の愛情を知らずに育ったハーンは、19歳で単身アメリカへ渡る。そして文才を開花させて新聞記者になり、1890年に出版社の特派員として日本の紀行文を書くために来日した。しかし、松江で英語教師をしながら執筆活動していた際、異常な寒波の影響で気管支炎を患ってしまった。

周囲の人の心配から、ハーンの身の回りの世話をする女中を雇うことになり、白羽の矢が立ったのがセツだった。当時、ハーンは40歳、セツは22歳。最初は雇用関係だった2人の間には、いつしか信頼関係が生まれた。

一方で、西洋人と暮らすセツは人々に好奇の目を向けられ、外国人相手の遊女を指す“ラシャメン”と呼ばれたりすることもあったという。しかし、そんな差別にもセツは気丈に振る舞い、凡さんはセツについて「肝の据わった女性で、世間体に翻弄(ほんろう)されない人」と表現する。

そんな2人をつないだものが、日本に伝わる怪談話だった。セツは古本屋で収集したり、周りの人への取材で知った古い伝承をハーンに語って聞かせた。ハーンは「本を見る、いけません。ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考えでなければいけません」と、セツの生の語りを大切にしていたという。出雲弁でのセツの語りは、英語で書かれた『KWAIDAN』にも反映されている。

2人が一緒に暮らすようになって3年目、長男の一雄が誕生したことで、ハーンは日本への帰化を決断。セツの戸籍に婿入りする形で正式に結婚も果たし、小泉八雲という名前を手に入れた。

その後は東京に住み、八雲は帝国大学(現・東京大学)の英文学講師をしながら執筆活動を続けた。しかし、最高傑作といわれる『KWAIDAN』の出版から5か月後の1904年9月26日、心臓発作により八雲は永眠した。54歳だった。

2人が一緒に過ごしたのは13年8か月で、その時セツはまだ36歳だった。八雲の死後、セツは4人の子どもを育て上げ、八雲とも過ごした自宅で子どもたちに見守られながら64歳で他界した。凡さんは「13年8か月は人生のハイライトだと思いますね。一番幸せな時期だったと思います」と笑顔で話す。

八雲が子どもの教育に使っていた、アンデルセンの童話集に書かれた言葉が、八雲とセツの生き方を象徴している。「To take a hard step ムヅカシイ コト スレ」という言葉は、多くの困難を乗り越えた2人の人生そのものだ。

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写真提供:(C)日テレ
文:entax編集部

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