吉本新喜劇、浅草花やしき、ブレイキン…意外なコラボで注目!ヨシオクボ最新ファッションショーは『走る!走る!』
3月16日(月)から21日(土)まで開催された、楽天ファッション・ウィーク東京。日本発ブランドを中心に多彩なレーベルが集まり、2026-27年秋冬シーズンの新作を発表した。東京の“今”を映し出すコレクションが揃う、春恒例のファッションイベントだ。entaxでは参加した全30ブランドの中でも、「Beyond Running」をテーマに、日常という“誰とも違うロングトレイル”に相応する服を提案するランウェイを披露した『ヨシオクボ』に注目した。
ヨシオクボのファッションショーは、常識を超えてきた。吉本新喜劇との異色のコラボレーション、日本最古の遊園地である浅草花やしきでの開催、さらにはブレイキンチームとの共演。ファッションの枠を越境しながら、その都度まったく異なる風景を提示してきた。今回のショーにも期待が集まる。次は何を仕掛けてくるのか。提示された答えは、シンプルだった——「走る」。その裏側には、久保のどんな考えが隠されているのか?



会場に足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは、客席を縫うように直角に折れ曲がった白いランウェイだ。視線を引き寄せるその構造は、服そのものを明確に見せるための装置として機能している。会場には、数々のブランドでアドバイザーやクリエイティブディレクターを務めるファッション業界のカリスマ、ニック・ウースターの姿もあり、このコレクションに対する国際的な注目度の高さを物語っていた。




久保嘉男が手掛ける「yoshiokubo(ヨシオクボ) Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 A/W 2026年秋冬コレクション。テーマは「BEYOND RUNNING」。ショーが始まると、モデルたちは王道のウォーキングでランウェイを進む。これは前回のブレイキンとのコラボで「衣装が見えづらい」という意見を踏まえた久保の決断であった。久保はまるでスポーツチームの監督のような視点でショー全体を構築している。そう、今回のテーマは「スポーツ」。その背景には、久保が読んだという『BORN TO RUN 走るために生まれた』というランナーのための名著にあった。




同書に登場するメキシコの山岳民族タラウマラ族のエピソード。民族衣装のまま世界トップクラスのランナーに勝利した女性たちは、「走るための服」という概念そのものにを覆した。山岳地帯で長距離走が日常である彼女たちにとって、特別なウェアは不要である。この事実が、デザイナーとしての久保の思考に深く作用している。
コレクションは、機能性と審美性の緊張関係を巧みに編み上げている。速乾性やリップストップ加工といったテクニカル素材に加え、ウォッシュ加工やウールなどの上質な生地、さらにマリアケントのジャガードやランナーをモチーフにしたゴブラン織りが用いられる。それらを切り替え、組み合わせることで、単なるスポーツウェアではなく、あくまでファッションブランドとしての均衡を保ったデザインが成立している。




王道のランウェイが終わったその瞬間、空気が一変する。モデルたちがランウェイを走り出したのだ。観客席を縫うように疾走するその姿は、今回のテーマを身体的に体現する演出であり、強い驚きとともに提示されたコンセプトの核心でもある。総勢27名のモデルの中には、実業団選手やランニングシーンで活躍する人物も起用されており、表現にリアリティを加えている。
スポーツを“機能”としてではなく、“概念”として捉え直した久保のコレクション。今回のコレクションも世界から注目されるに違いない。次回、どんなショーを行うのか?早くも期待が高まる。
Text by 喜久知重比呂

久保 嘉男/Yoshio Kubo
2000年Philadelphia University’s school of Textile & Scienceファッションデザイン学科卒業。その後、ニューヨークでオートクチュールデザイナー Robert Danes氏のもと、4年にわたり同氏が発表した全てのコレクションの作製に携わる。帰国後 yoshiokubo 2005年S/Sよりコレクションを発表。

