SF超大作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』 独自インタビュー~原作者が語った舞台裏とビートルズをめぐる秘話~
■ハリウッドの才能が集結したSF超大作
公開に先駆け観た世界中の評論家たちが絶賛しているSF娯楽大作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が3月20日金曜日、日米同時公開される。
アカデミー賞7部門にノミネートされた映画『オデッセイ』(監督:リドリー・スコット、主演:マット・デイモン)の原作などで知られる作家、アンディ・ウィアーの世界中でベストセラーになった大ヒットSF小説を映画化。

■映画のあらすじ
未知の原因によって太陽エネルギーが奪われ、地球は数十年後、氷河期に突入し人類は滅亡してしまう。人類は、原因を解明するために11.9光年先の星へ向かうしかなかった。計画「ヘイル・メアリー(イチかバチか)計画」に抜擢されたのは、優勝な科学者だが学会を去った中学教師のグレース。

グレースは、80億人の運命を背負い、遠い宇宙でたったひとり奮闘する。そこで、同じく母性を救おうとしている異星人に出会う。グレースは異星人をロッキーと名付け、ともに難題に挑んでいく。いつしか友情が芽生えたグレースとロッキーに大きな試練が待ち受ける。
主人公のグレースを演じるのは、『ラ・ラ・ランド』『バービー』のライアン・ゴズリング。監督は、「スパイダーマン スパイダーバース」シリーズのフィル・ロード&クリストファー・ミラー。ハリウッドのヒットメーカーが集結して制作された映画の舞台裏など貴重な話を、原作者で映画のプロデューサーでもあるアンディ・ウィアーにインタビュー。アメリカとオンラインで行った。
■原作者アンディ・ウィアーにインタビュー
――アンディさん、お会いできて光栄です。
アンディ:(日本語で)アリガトウゴザイマス
――ニホンゴが上手ですね。
アンディ(笑)

監督のロード&ミラーは、大作映画にありがちなブルースクリーンやグリーンスクリーンを使わず、できる限り実物で撮影したという。宇宙船は内部の外部も丸ごとセットが製作された。グレースの相棒となる異星人ロッキーもCGではなく、全編パペット&アニマトロニクスで製作されている。この撮影方法によって、映画によりリアルで演技にも深みが出たという。

――初めて完成した映画を観たとき、どんな気持ちでしたか?
アンディ:私はこの映画のプロデューサーなので、すべての編集段階を見てきたんです。 一番最初のカットも見ましたが、あの時はまだかなり粗くて、特殊効果が施されてなかったり、「ここでこういうことが起きます」という絵コンテが仮で入っているだけでした。そうやって、作品が徐々に形になっていく過程をずっと見守っていました。前回の映画『オデッセイ』の時は、制作に深く関わっていなかったので、 完成版を“映画として一気に観る”という体験ができました。 でも、今回は制作過程で見ることが私の仕事でした。 テンポや構成、シーンのつながりなどについて、私の意見をフィードバックをするのが役割だったんです。

――アンディさんは、撮影セットに毎回のように足を運ばれたそうですね?現場で特に印象に残っているエピソードはありますか?
アンディ: 驚いたのは、監督のクリスとフィルが1つのショットにかける時間が長いことでした。彼らは1テイクに、14分や17分もかけるんです。カメラを回しっぱなしにして、主演のライアン・ゴズリングがアドリブで演技をしたり、とにかく色々なパターンを試すんです。映画『オデッセイ』の時の、リドリー・スコット監督は「アクション!……はい、カット!次!」という風に超高速スタイルだったので、その差には本当に驚きました。

――主人公を演じたライアン・ゴズリングとの仕事はいかがでしたか?
アンディ: 彼は驚くほど親切で、誰に対しても丁寧に接する素晴らしい人物です。そして、真のプロフェッショナルでした。撮影中は毎日12時間働き週に1日の休みしかなかったんです。家に帰ってもライアンの娘たちが寝る前のわずかな時間しか一緒に過ごせないほど多忙だったのに、彼は一切妥協しませんでした。毎朝私のところへ来て、「今日のシーンは、主人公グレースは何を考えている? どんな感情なんだ?」などと細かく確認しに来ました。とにかく真剣に、役を自分のものにしようとしていました。彼以外のグレース役はもう考えられませんね。

――映画では主人公グレースと異星人ロッキーの友情が描かれます。この物語の大きなテーマは「友情」だと思います。
アンディ:あなたが言う通り、これは「友情」の物語であり、それが核心です。
――それと思う一つの大きなテーマは「選択」ですよね?この物語を作る上で大きな選択に迫られることはありましたか?
アンディ:私は原作を書き始める前にラストシーンまで決めていたので、執筆自体はスムーズでした。
――小説を読んだ時、主人公の相棒となる異星人の「ロッキー」を映像化するのは非常に難しいのではないか思いました。完成した映像を見てどう感じましたか?
アンディ:これはひじょうに重要な点でした。 実は、私は視覚的な想像をするのがたいへん苦手なんです。頭の中でリンゴを思い浮かべようとしても、ぼんやりした塊になってしまうくらいなんです(笑)。だからロッキーも、執筆時は「5本の脚がある形」程度にしか考えていませんでした。
映画のスタッフたちは、「ロッキーの描写がこの映画の成功か失敗を決める」と全員が考えていました。結果、この難題を彼らは完璧にやってのけたんです。初めて映像で見たとき、「ああ、ロッキーってこうだったんだ!」と私自身が一番納得しました(笑)。

■“ビートルズ”が映画の随所に登場
――劇中、ビートルズの曲が1曲だけ、ひじょうに象徴的に使われていますが、これにはどんな意図があったんですか?
アンディ: 映画で使ったビートルズの曲は1曲ですが、曲の使用料が信じられないほど高かったんです(笑)。
――そして、曲だけでなく、ビートルズが劇中に散りばめられていますね?
アンディ:原作でも、全13枚のアルバムタイトルをこっそり文章の中に忍ばせているほど、私はビートルズの大ファンなんです。地球に戻ってくるたくさんの探査機は “ビートルズ” と呼んでいるんです。探査機ひとつひとつを、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴという名前にもしたんです。
――小説を読んだ時にもビートルズのファンなのだろうと思いました。
アンディ:その通りです!(日本語で)ビートルズガ、ダイスキデス!
――日本の皆さんにメッセージをお願いします。
アンディ:迫力の宇宙のシーンやCGを使っていないリアルな宇宙船など、なるべく大きなスクリーンで、映画館で楽しんでほしいです。
インタビュー・文:喜久知重比呂
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(ソニー・ピクチャーズ配給)
2026年3月20日金曜日日米同時公開
公式サイトはこちら

