「“できない”を“できる”に変える力がある」パラリンピック6大会出場!元日本パラリンピック委員会委員長でありスポーツ庁長官を務める・河合純一氏が語るパラスポーツの可能性とは
◆「上達したい気持ちに差はない」
また、河合氏は「スポーツには、心の垣根を自然と溶かす力、参加しやすい効果があると思う。そういった部分をどんどん発揮していくことが大切だと思う。例えば(2025年11月に東京で開催された)デフリンピックでは、聴覚障害の方が走るときに、号令では反応が遅れてしまう。だからスタートランプが開発され、同じようにスタートを切ることができるようになって、同じようなプレーができるようになる。これも一つの合理的配慮だと思う。視覚障害の水泳だとまっすぐ泳げない、もしくは壁が見えないので、ぶつかってしまう。そこでタッパーと呼ばれる人が、頭を叩いて、ターンやタッチのタイミングを伝えてあげる。そのような配慮をすることで、安心安全に競技をすることができる。」と話した。
「速くなりたい、強くなりたいという気持ち、オリンピックもパラリンピックも含め、スポーツが好きなら上達したいという気持ちに差はない。そこに気づくことができれば、スポーツそのものが持っている価値や魅力をみなさんと共有することができる」と期待を示した。

◆「障害を含めた個性や特性に応じた教育を行おう」
パラスポーツ・地域・子どもに焦点を当てた共生社会実現への取り組みについて聞かれ、「東京に住んでいると地域とのギャップを改めて感じる。地域ごとの実情も違うので、それぞれに応じた取り組み方があるべきで、それをサポートしていかなきゃいけない。」と話す。
特に河合氏は、少子化がもたらす学校教育やスポーツ環境への影響が強いと語る。「少子化によって学校の体育やスポーツ環境がどんどん難しくなってきている。スポーツ庁も中学校の部活動改革、地域展開を進めているが、リソースがない、指導者がいないなど、ないないづくしな状況にある。子どもの数に応じて教師の数が決まる以上、このまま同じやり方や同じ数を維持することは当然難しい。そういった中で、それぞれの地域にある体育施設や兼職兼業を希望する教師等のリソースをどのように柔軟かつ充実させ、スポーツをできる場所やネットワークを広げていくか、という視点が改めて求められている。」と現状の課題について話した。
続けて「その中に障害のある子どもたちも含まれていなければいけない。それがどうしても見落とされがちで議論が進められてきた。でも、東京オリンピック・パラリンピック、東京デフリンピックをきっかけに大きく舵を切られつつあると思う。」と語った。
「『学習指導要領』の改定が検討される中で、大きな柱の一つが『それぞれの子どもの特性に応じて行うべき』だということ。今まで行ってきた最大公約数にどうやって時間を短く、有効に気づかせて学ばせていくかという教育から、障害を含めた個性や特性に応じた教育を行おうと取り組んできている。なかなか揃わない人や指導者の問題、施設の問題なども含めて解決できるように、これから取り組んでいかなければいけない。可能性はまだまだあると思っている。みなさんと実情に応じて取り組んでいくことが大切だと思う」と話した。
◆「違いを力に変えていくこと」
また、久下アナウンサーからリバース・エデュケーション(子どもが学校教育で学んだことを大人に発信すること)の話が。「子どもたちからパラスポーツが普及していくことが、子どもたちへパラスポーツを普及していく意義なんですよね」と問われると、河合氏は「やっぱり、子どもたちは将来の大人なんですよ。子どもたちがそのような感覚でこれから大人になって社会の担い手になっていくことで、『違いを力に変えていくこと』への理解が進むと思う。」と答えた。
そして「DE&Iの実現には1つだけ課題がある。時間がかかるんです。丁寧にコミュニケーションするので、早く進まない。でも成熟してきた日本の社会でスピード感だけを求めるのが、今の社会の効率なのかと問われていると思う。」と話した。
最後に、2029年に群馬県で開催される『湯けむり国スポ・全スポぐんま2029』について「大会というのは終わった後が大事と言われている。多くの選手と準備に関わった人、観客になった人、すべての人の心に残るレガシーを作って、誰もが暮らしやすい群馬県になって、他の県のモデルになってほしい」と述べた。

『湯けむりフォーラム2025』パラスポーツ分科会
2025年12月14日(日)に開催

