東京バレエ団『春の祭典』公開リハーサル ジル・ロマンが語る“生きて踊る”ということ

2026.2.20 12:30

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ジル・ロマンの写真

20世紀バレエを切り拓いた三巨匠の傑作を一夜に集める〈レジェンズ・ガラ〉が、東京バレエ団によって上演される。ベジャール『春の祭典』、ノイマイヤー『月に寄せる七つの俳句』、キリアン『小さな死』という三作品は、それぞれ異なる身体観と精神性を内包しながら、20世紀という時代が到達した芸術の極点を示すプログラムである。

東京バレエ団『春の祭典』公開リハーサルの様子 写真:Shoko Matsuhashi

中核をなす『春の祭典』は、死と再生という生命の根源を爆発的なエネルギーによって可視化した、バレエ史の金字塔である。1月には公開リハーサルが実施され、指導にあたるジル・ロマンのもと、作品の核心へ迫る濃密な時間が生まれた。

この日の生贄役は長谷川琴音と南江祐生。日本デビューとなる二人についてロマンは「素晴らしいと思う。素晴らしい生贄になると思った。純粋さを感じ、本当に役にぴったりで、見ていて心を打たれるものがある」と語る。もちろん「ファーストキャストも素晴らしい」と付け加え、東京バレエ団への信頼をにじませた。

東京バレエ団『春の祭典』 南江祐生 写真:Shoko Matsuhashi

ストラヴィンスキーの音楽は和声もリズムも複雑であり、『春の祭典』はダンサーにとって極めて困難な作品である。ロマンは「振りを覚えて理解し、動きの意図をしっかり理解することが、作品を生きることにつながる」と語り、今回の生贄についても「課題を乗り越えてやっていましたし、純粋な何かを感じました」と評価する。一方で解釈の難しさにも触れ、「女性は女性らしく、でも力強さも持たなければならない。男性は自分を見失っているような存在であるべきだが、力強く踊りすぎてしまう傾向がある。そのバランスを見つけるのが難しい」と指摘する。さらに、モーリス・ベジャールの思想として「女性が男性をリードしていく」という構造を挙げ、「それぞれのキャストがバランスよく演じなければならない難しさ」があると語った。

東京バレエ団『春の祭典』 長谷川琴音 写真:Shoko Matsuhashi

では、時代の違いに応じて作品を変えることはあるのか。この問いにロマンは明確である。「これだけの傑作の場合には、振付と音楽性をそのまま伝えたい。当時の意図や意味、役柄を指導する時は、モーリスが言ったこと、その言葉をそのまま伝えたい」。公開された稽古では、「熊のような姿勢」「車のライトに目がくらんだように」といったベジャール自身の具体的な言葉が、そのまま伝えられていた。

東京バレエ団『春の祭典』公開リハーサルの様子 写真:Shoko Matsuhashi

観客へ向けて佐野志織芸術監督は、「東京バレエ団のダンサーたちが踊る『春の祭典』として、ベジャールの息吹を感じられる力強い舞台にしたい。役柄の力強さや女性のたおやかさというエネルギーを皆様にお伝えできたらと思います」と語った。

ジル・ロマン 写真:Shoko Matsuhashi

最後にロマンはこう言葉を結ぶ。「大変素晴らしい作品です。モーリスのスタイルを伝えようと努めてきました。バレエ団もよい状況で、間違いないと信じています。ベジャールの作品を踊る時は美しすぎてはならず、ロダンの彫刻のようだとも言えるが、ダンサーたちには生のものとして感じながら、一生懸命いきいきと踊ってほしい」。

三巨匠の作品を一夜に集める〈レジェンズ・ガラ〉。『春の祭典』は、いまこの瞬間の身体によって更新され続ける芸術である。劇場で立ち上がる生命の震えを、見届けたい。

(写真:Shoko Matsuhashi)
(取材・文:和田弘江)

≪公演情報≫
東京バレエ団〈レジェンズ・ガラ〉
◆上演作品
「春の祭典」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

「月に寄せる七つの俳句」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:アルヴォ・ぺルト、ヨハン・セバスティアン・バッハ

「小さな死」
振付:イリ・キリアン
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

◆日程
2026年2月27日(金) 19:00
2026年2月28日(土)14:00
2026年3月1日(日)14:00

◆会場
東京文化会館(上野)

◆上演時間
約2時間(休憩含む)

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