【独占インタビュー】潤花、世界初演のモーリー・イェストン新作で感じた「唯一無二」
2026年1月から上演される世界初演ミュージカル『ISSA in Paris』。トニー賞を2度受賞したミュージカル界の巨匠モーリー・イェストンが小林一茶の俳句に感銘を受けて創作した本作は、現代と過去を交錯させながら、一茶の知られざる10年を大胆に描くオリジナル作品。
現代の東京で母の死から立ち直れずにいたシンガーソングライターISSAこと海人は、小林一茶の句と“空白の10年”の謎に導かれ、真実を求め、そして自身が前に進むためにパリへ向かう。2人の青年が時空を超えパリで出会うファンタジー・ミュージカルで、ヒロインの一人・ルイーズ役を演じる潤花にentaxが独占インタビュー。
――世界初演のモーリー・イェストンの新作ミュージカル、オファーを聞かれた時の率直な感想は。
潤花: まず、藤田(俊太郎・演出)さんの作品を何度も拝見していましたので、モーリーさんの作品と藤田さんの演出によってどのようなものが出来上がるんだろうという期待ですね。そしてこのキャストの皆さんとご一緒することができ、どんなものになるんだろうな、また新たな自分自身の挑戦でもあるなと思いました。
モーリーさんの楽曲ってメロディーも素敵なんですが、何よりも「音楽を聴いてくださっている皆さん全員をいつも家族のように思う」というモーリーさんのお気持ちがすごく伝わり、今回ご一緒できるのが大変光栄です。
モーリーさんがずっと小林一茶さんを題材にした企画を温めていたということを、稽古に入ってから藤田さんにうかがって。長年温めていらしたものを今このタイミングでこの皆さんと作ることができるというのは、ほかに変えられない唯一無二の作品になるんじゃないかなと身の引き締まる思いで取り組ませていただいています。
――日本人として、小林一茶を題材にした作品に出演することについては。
潤花: 俳句というものになかなか触れてこなかったということもあるのですが、いち日本人として、ちょっとびっくりしたんです。小林一茶さんの俳句というのは、どこか優しさだったり、はかなさだったり、悲しみのようなものを感じるんですけど、最終的に温かいものが残るというのが魅力なんだなって今回の舞台を通して感じています。
――フランス人の父と日本人の母をもつ現地ガイドのルイーズという役について。
潤花: 彼女自身はフランスで日系人として暮らしています。私は日本人で、日本生まれでここで生きて、国籍を理由とした差別はされず生きてきたわけじゃないですか。でもやっぱり国籍が違ったり、両親が違ったりする方々ご本人たちしか感じられない苦しみや、不当だと思うことがあると思うんですね。
それを乗り越えてまでもフランス・パリに居続けて、ガイドのお仕事をしていることに私は意味があるなって。藤田さんがルイーズの仕事をガイドにしたというところも、すごく魅力的だなって思うんです。自分が日系人ということでそれを活かしてお仕事をしている、言葉を伝えるお仕事をしているわけです。通訳やガイドの方って、その言葉の意味をそのまま直訳すればいいかといわれたら、絶対そうじゃない。言葉の意味を超えた感情や「何か」をくみ取って相手に「伝える」という意味で、今回職業にすごくフォーカスしています。
本業はダンサーで振付家でもあるんですけど、踊りで表現して、踊るから芽生える感情があって、言葉を上げられない人に対しての愛情の注ぎ方があるんだろうなと。だからこそ海人のことを誰よりも信じていると思いますし、他のキャラクターとは違った角度で海人に寄り添っていく。小林一茶さんに対しても、時空を超えて共鳴しているんだなと今の時点では思っています。

――共演者の皆さんは今回初共演ですか。
潤花: そうですね。でもなぜか皆さん初めましてな感じがしないんですよね。一言で言えないんですけど、すごくあったかいんです。私、制作発表というものが初めてだったんですけど、皆さんの器の大きさのおかげで変な緊張なくフラットに入れましたし、フラットにいるってやっぱり大事だなと思いました。皆さんの輪にどっぷり入って心地よくいさせていただいているからこそ、制作発表では純粋に皆さんの感情や歌、思いを受けとることができて、明日からのお稽古がまた新たなものになるんじゃないかなと楽しみです。
――稽古場の雰囲気は。
潤花: 世界初演、オリジナルミュージカルを一から作っていくという現場で、藤田さんが皆さんの思いをくんでどんどん新しくいいものにしていこうという動き、思いが素敵なんです。それってすごく大変なことじゃないですか。でもそれを大変って思わず楽しいが勝つ現場なのは、藤田さん、海宝さん、岡宮さん、江理佳ちゃん、キャスト・スタッフの皆さんの雰囲気作りもあって一つの方向に向かっているからなんだと思います。
宝塚時代の、ずっと同じメンバーで作品を作っていく環境では、居心地の良さも難しさもあると思うんです。家族よりも長い時間一緒にいてお互いのことを分かり合っているからこその居心地の良さもあれば、毎回新しいものを作っていく難しさもあれば。
退団して毎回「初めまして」でご一緒させていただくと、その方々のお人柄だったり、温かさだったり、すごさだったり、本当に素晴らしい方々だなっていうのが、より丁寧に繊細に感じるんです。宝塚時代ももちろん感じていたんですけど、やっぱり日々一緒に生活していくとどうしても当たり前になっていく部分があるんですね。退団後は、やっぱり次の作品に全く同じメンバーで集まるってことはないじゃないですか。最初で最後かもしれない今日1日を、皆さんと過ごせている奇跡、ご縁のありがたみをさらに感じます。
――稽古場でのエピソードを一つだけ教えてください。
潤花: …本当にお恥ずかしい、申し訳ない話なのですが…井上芳雄さんのラジオの生放送に私が寝坊してしまい遅れて行ったんですね。もう人生最大の反省で、この先ずっと忘れることはないだろうという出来事だったんです。まだこれをお話できるマインドではないんですけれども、芳雄さんをはじめいろんな方が助けてくださって。藤田さんも急きょ駆けつけて、この作品のお話をしてくださって。お稽古に帰ってからも、海宝さんをはじめとする皆さんがこの件を話してくださったことで、私はものすごく心が救われたんです。救われる立場じゃないぐらい反省しているんですけど、そういう人の温かさって人を助けてくれるんだなって思いました。

――潤花さんのファンの皆さん、これから潤花さんを知る方に「この作品のここを見てほしい」というポイントは。
潤花: 人間誰しもいい時ばかりではないですし、幸せな時ばかりではないじゃないですか。でも舞台を見に来てくださるお客様って、その時間を生きがいや、糧にしてくださってる方が多いと思うんです。そんな皆様にこそ見てほしい作品です。海人があの状態でスタートして、何を得て、何の温かさを知って、最後の海人になるのかというのは、日々悩んでいる方や苦しいことがあったという方に、ものすごく温かいエネルギーをお届けできる作品だと思うんですね。
自分も、誰もが弱い時があっていいし、立ち上がれない時があっていい。だからこそいろんな人に助けてもらって、温かい心をもらって、それをエネルギーに前に進もう、進んでいけるっていうメッセージになっているので、今、幸せ絶頂の方も苦しい環境の方も、観にきていただけたら何かを持ち帰っていただけるんじゃないかなってすごく思います。
――最後にファンの方、楽しみにしている方にメッセージを。
潤花: ミュージカル作品をたくさん観てこられた方もミュージカル作品を観たことがない方も、『ISSA in Paris』を通じてきっと新たな気持ちになりますし、新しい感覚をお届けできるのではないかなと私自身強く思っています。俳句とパリ、時空を超えてのファンタジー作品ではありますが、皆様それぞれの「真実」を受け取って帰っていただけると思うので、ぜひお楽しみになさってください。劇場でお待ちしております。

公演情報:ミュージカル『ISSA in Paris』
出演:海宝直人 岡宮来夢 潤花 豊原江理佳
中河内雅貴 染谷洸太(Wキャスト)
彩吹真央 藤咲みどり(Wキャスト)
内田未来 阿部裕 ほか
【東京公演】日生劇場2026年1月10日(土)~30日(金)
【大阪公演】梅田芸術劇場メインホール2026年2月7日(土)~15日(日)
【愛知公演】御園座2026年2月21日(土)~25日(水)











