『攻殻機動隊』押井監督と『量子コンピュータ』の権威・大森教授、2人の天才の意外な一面が明らかに・・・大阪・関西万博 スペシャル対談

2025年は量子力学誕生から100年、そして国連が「国際量子科学技術年」と定めた節目の年。同時に、映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の公開から30周年という記念すべき年でもある。そんな特別なタイミングに、大阪・関西万博で夢の顔合わせが実現した。

8月15日(金)、大阪・関西万博のステージに登場したのは、『攻殻機動隊』の押井守監督と、『量子コンピュータ』研究の第一人者である分子科学研究所の大森賢治教授。観覧予約は数分で満席となり、当日は立ち見まで出る盛況ぶりであった。
⸻量子力学100年をめぐる講義
イベントの前半は、大森教授による特別講義「量子力学100年の謎と量子コンピュータへの挑戦」。量子の不思議な世界をユーモアを交えて語り、専門的でありながら観客を引き込む内容であった。量子の基礎知識を学んだ会場は、後半の対談への期待を高めていった。
⸻押井守監督と大森教授の初対談
芸人・くわがた心を司会に、後半は押井監督と大森教授の対談。2人の“意外な一面”が明らかになった。
押井監督は「自分は理数系とは無縁で、高校時代は物理も数学も赤点。テクノロジーだらけの近未来を描いた『攻殻機動隊』を制作したことで、コンピュータやデジタルの専門家だと思われているが全く違う」と告白。会場から驚きと笑いが起きた。
一方の大森教授も「20代の頃はライブハウスで演奏していた」とバンド活動の過去を披露。イベントのBGMとして流れていた曲は大森教授自身の作曲・演奏によるもの。
⸻『攻殻機動隊』は妄想から?
対談では『攻殻機動隊』の世界観についても語られた。大森教授は「古い街並みや雑踏が残りつつ、高度な技術が共存している点に感銘を受けた。現代社会の問題を予言している作品だ」と語った。
しかし押井監督は「理論的に積み上げたものではなく、ほとんどが妄想である」と返す。当時はインターネットが普及しておらず、監督は携帯電話すら持っていなかったという。
「我々の仕事は、言葉をどう視覚化していくかという、単純だけど単純だから難しい仕事。近未来を描くためには、観客の知っているもの、過去のものの組み合わせでしか表現できない」と持論を展開した。
⸻新たな刺激、次回作へ?
大森教授が「今日の対談で気づいたことを次回の作品にぜひ使ってほしい」と語りかけると、押井監督は「使うかもしれないし…」の一言で会場を沸かせた。

押井守監督の“妄想力”と、大森教授の“量子への情熱”。
一見交わらない二つの領域が、大阪・関西万博のステージで重なり合った瞬間であった。未来を考える新たなヒントを持ち帰ったに違いない。
なお、この貴重な対談の模様はノーカットでアーカイブ視聴が可能。
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 分子科学研究所
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日時:2025年8月15日(金)
会場:大阪・関西万博 EXPOメッセ「WASSE」
「エンタングル・モーメント―[量子・海・宇宙]×芸術」展 ステージ
TEXT:喜久知重比呂

押井守監督(映画監督)
東京学芸大学教育学部美術教育学科在学中から自主映画を制作。
ハリウッド映画をはじめエンタメ界に大きな影響を与え続ける存在。
【代表作品】
劇場版「うる星やつら オンリー・ユー」
劇場版「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」
劇場版「機動警察パ トレイバーthe Movie」
劇場版「機動警察パトレイバー2 the Movie」
映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」
映画「イノセンス」

大森賢治教授(分子科学研究所 教授)
東京大学工学部卒業、同大学院博士課程修了。東北大学助教授を経て2003年から分子科学研究所教授。現在「内閣府ムーンショット型研究開発事業」のプロジェクトマネージャーとして新方式の量子コンピュータの研究開発に取組んでいる。