アニメ『多数欠』制作Pが本音をぽろり…(笑)リテイクしまくりの“因縁カット”?“天使すぎる”原作者の素顔とは?
“理解するほど面白い”とSNSで話題──毎週火曜 深夜25時59分より日本テレビにて放送中のアニメ『多数欠』(BS日テレ、RAB青森放送他にて順次放送)。“多数派”が死亡してしまうという謎のゲーム【多数欠】に巻き込まれてしまった少年少女たちの戦いを描く本作は、勢力同士の頭脳戦に加え【特権利】と呼ばれる異能の力も絡み合う複雑怪奇なストーリー。多数欠を裏で操る“皇帝”との直接対決もいよいよ迫り、第1クールが佳境へ向かう今──entaxでは本作のプロデューサーを務める高野健一氏(過去に『サクガン』『 Helck(ヘルク)』等を担当)に独自インタビュー!アニメの世界と同じ“過酷”な制作現場について語ってもらったほか、制作スタッフたちの心の声を写し取った“カウントダウンイラスト”を深掘り!さらに、原作者・宮川大河氏の“天使すぎる人柄”まで幅広く聞いた。
(以下、アニメ最新話までのネタバレを含みます)
本作における高野氏の役職は、主にクライアントや“製作委員会”から預かったお金とスケジュールをもとに現場を管理する“制作プロデューサー”。監督やキャラクターのデザイン、演出を誰にお願いするのかなど、その人が“作品に合ってるかどうか”も含めアジャスト。すべてのスタッフがスムーズに仕事を運べるよう状況を整理しながら、アニメのクオリティーアップに貢献している。
今回のインタビューでは、本作でキャラクターデザイン総作画監督を務める林奈美さんが書き下ろした“OAカウントダウンイラスト”を軸に、制作現場のこだわりや今だからこそ笑える裏話を制作Pの立場から明かしてくれた。
カウントダウンイラストは、2024年6月27日〜7月2日(第1話放送日)までの6日間、アニメの公式Xに順次投稿されたもので、放送時間などの告知とともに、アニメキャラクターを制作スタッフに見立てた現場の様子がコミカルに描かれている。

◆もはや何かの祟り…!? 総動員で“リテイク”した激ムズカットとは
──カウントダウンイラスト内の現場はかなり大変そうですが、実際どれくらい忙しいのでしょうか?
高野 正直言って、もっと厳しいです! 林さん、かなり柔らかく描いてくれてるなと思いますよ(笑) 例えば「来週V編のようね。今日は金曜。つまり?」「土日中に検査を終わらせろってことだろ」というやりとりがありますよね?(※カウントダウンイラスト『OAまであと4日』参照)。V編とは、わかりやすく言うと“納品しないといけない日”で、この作品の場合は木曜日がそれに当たります。ただ現状は「明日V編。今日は水曜。つまり?」という場合がほとんどです(笑)
高野 第1クールでいうと第4話の時はさらに短くて、「3時間後V編のようね。今は昼の12時。つまり?」「1時間で終わらせろってことだろ」と…そんな感じでした(笑)

──そんなアニメーション制作の現場で、“一番聞きたくないワード”を挙げるとしたら何でしょうか?
高野 やっぱり“リテイク”がかなりキツイですね。特に、“俯瞰(ふかん)で、かつ全身で歩いている”や“階段を登る”などのカットがあった時に、「ちゃんと歩けていない」「階段を登れてない」みたいなリテイクが出るんですが、こういうのがとにかく難しくてなかなか直らないんですよ。
高野 “制作進行”のスタッフは、とにかくリテイクを出さないでくれって願っていると思います。第4話の時なんかは、“ハイ”になってましたね! ふと、コンビニで2000円くらい買い物してくるんですよ。弁当とか栄養ドリンクとか。やけ食いというか、やけ買いというか。「えっ…、それにそれを合わせて食べるの?」みたいな(笑)

──第1クールの中で、最も“リテイク”に苦しんだカットを挙げるとしたら…?
高野 めちゃくちゃ覚えてますよ! 第4話のワンシーンなんですが『パソコンが台に置いてあって、周りに5人いる』というもので、これがもうガタガタで…(笑)複数人がいっぺんに同じカットに存在していて、しかもワイワイしゃべるっていう絵は本当に大変なんですよ。

高野 まず、最初の“上がり”の時に、パソコンがないんですよ! 5人のキャラも全員が“ガチャガチャ”で…。しかも八木橋がパソコンに手を置いて触っているはずなんですけど、パソコンがある場所を触っていない…みたいな(笑) 第4話の中で2回も3回も出てくるシーンなので、直さないわけにもいかなくて…。もう総動員でやりました!
──だいぶ印象深いカットになったようですね(笑)
高野 聞かれて、すぐ浮かびました(笑) おそらく“テイク6”くらいまでやってじゃないかな。なかなかそこまでいくのはないですね。もう因縁のカットです!祟(たた)りですよ(笑)

◆高野「200%くらい美化されてて(笑)」 原作者・宮川大河の“天使エピソード”
──カウントダウンイラスト内に「(原作の)宮川先生は天使です」との記載がありますが、これは…?(笑)
高野 この作品に関して言えばですね…本当に先生はありがたい! マジありがたいんです(笑) 例えば“シナリオ打ち”の時、「(放送の)尺に収めるためにこういう風な変更・改変をしようと思うんですけど…」というこちらの相談に対して、逆に先生から「ここのやりとりは削っていいですよ」「原作の中のこのセリフは切っていいですよ」とプランを出してくれるんです。
高野 読んだことのある方はわかると思いますが、原作では吹き出しの中にセリフがバーっと入っていて、当初は「これが本当に尺(20分)に入るのかな…」と気にしていたんですけど、先生のおかげでものすごくスムーズにいきました。
──それはあまりないことなんでしょうか?
高野 結構珍しいんですよ。「セリフはもらさずやってほしい」という先生もいらっしゃいますので。ただ、そうすると“40分”のアニメになっちゃいますからね…(笑) そういう部分でも宮川先生の姿勢は本当にありがたかったです。

──アニメの絵柄も原作とはかなり異なりますが、宮川先生のチェックはどうでしたか?
高野 実はそこ、アニメーションプロデューサーとして一番気になるポイントなんですよ。“キャラクターデザインをどうするか”…ここに関しても宮川先生には良くしていただきました。
高野 本作のキャラデザは、スタッフ内のコンペで林さんに決まりました。その後「こういう感じで実篤(さねあつ)描きました。紗綾(さあや)描きました」と先生に見ていただいたんですが、それには元々の先生の絵から変えている部分もあるわけですよ。だけど、そういう部分に関しても先生は好意的に受け取ってくださって、すごく助かりました。

──宮川先生の“天使エピソード”は色々ありそうですね。
高野 いや、もうほんとに!(笑) アフレコにも、初回や最終回など節目の時には来られていましたし、声優さん全員にお礼と一緒に絵を描いてくれて手渡ししてくれたり…。アニメに対して愛を持って接してくれているのがすごく伝わりました。
高野 ちなみに、宮川先生が描かれた“アニメ現場ルポ”というのが漫画でありまして、シナリオ打ちに参加することになった先生のエピソードが2ページくらいで描かれていているんですが…その中の佐藤竜雄監督がもうすごいキラキラしてて! 200%くらい美化されてたんですよ(笑)
高野 製作委員会の方から「このタッチでいいか、監督にチェックしてもらってください」と言われたんですが、悪いわけがないぞと(笑)そういうのも含めて、宮川先生はすごいなぁと感じましたね。

【高野健一(たかの けんいち) Profile】
1977年生まれ、神奈川出身。ケチャップや野菜ジュースを作る会社を経て、株式会社サテライトに入社。 これまで制作進行として『キスダム -ENGAGE planet-』『バスカッシュ!』『あにゃまる探偵キルミンずぅ』等、デスクとして『AKB0048』『アクエリオンロゴス』等、制作プロデューサーとして『サクガン』『 Helck(ヘルク)』等を手がけている。
文&取材:entax編集部