ミュージカル「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」のアフタートークで明かされた意外な事実

2023.6.16 16:30

女性たちが権利と自由を求めて闘う姿を描くミュージカル「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」が、2023年6月5日から上演されている。リーダー的な存在となる正反対の中心人物を、元宝塚のトップスター柚希礼音、そしてソニンが演じている。そのメッセージ性や表現力の高さで2019年、読売演劇大賞優秀作品賞を受賞し、多くのファンが待ち望み再演が実現した。2日目マチネ後に行われたアフタートークで見せたキャストたちの素顔を交えて、本作の見どころを紹介しよう。

■特別な誰かのお話ではない 誰でも前に進める勇気が伝播する物語

物語の舞台は19世紀半ばのアメリカ、ローウェル。ボストンの北西部に実在し、紡績工業の中心として開かれたこの街は産業革命の恩恵を受けて発展、多くの工場が移民や出稼ぎ労働者を受け入れ、その中には、お金や夢を掴むため「FACTORY GIRLS」となった大勢の女性たちがいた。

彼女たちは親の世代とは違い、働く場を手にすることができ、賃金を手に買い物をし、舞踏会にも誘われる暮らしを謳歌していた。一方で働く環境は劣悪。1時間にも満たない昼食時間で14時間労働を強いられ、パワハラやセクハラが横行する中、健康を損ないながら機械のように働いていた。

主人公のサラ・バグリー(柚希礼音)も、貧しい家族を助け自由を手にするために故郷を離れ、アボット・ローレンス(原田優一)が経営する紡績工場に飛び込んだ一人だ。そこには、女性による女性のためのガールズ寄稿集『ローウェル・オウファリング』の編集者であり、サラが憧れるハリエット・ファーリー(ソニン)がいる。夢は広がるばかりだった。

しかし、工場の現状を目の当たりにするたびにサラには疑問が生じる。「なぜ意見を言ってはいけないのか、女性だから?」。まっすぐな性格で周囲に食って掛かるサラの姿は、雇用を餌に声を出す力を奪われていた周囲の女性たちの目を開かせる。「男性も女性も同じ人間、それだけは譲れない」と。

19世紀の物語ではあるが、現在の働く環境にも同じテーマが当てはまる。サラの疑問や苦悩に「そうそう!」と共感する人は多いだろう。さらに本作の共感は、芯の強い特別な女性だけのお話ではないと表現されているところにもある。

さまざまな事情を抱え、損得を考え流されるのが安全だと現状に目をつぶる普通の女性たちがたくさん登場する。弟の手術代を稼ぐために働くしっかり者のアビゲイル(実咲凜音)や、女性寮を管理するラーコム夫人の娘で、天真爛漫なルーシー(清水くるみ)、華やかな生き方に憧れるマーシャ(平野綾)が、闘いを決意し立ち上がる。

微力でも手を取り合えば前に進めるとの想いがダンスに現れ、歌声が一つに重なってコーラスなった時、その勇気が客席に伝播し観ている者の心も立ち上がるのだ。

■柚希、ソニン、実咲、清水、平野のアフタートーク 「この後、茶しばく?」

3時間にも及ぶパワフルな上演の後、時を空けずにアフタートークが始まった。
舞台上には椅子が6脚。まずは司会として、工場長役の原田優一が「原っぱの原に、田んぼの田、一番優しい男と書いて、原田優一です」と軽妙なトークで登場。役柄の嫌味な印象を「トークショーの間にイメージを良くして帰っていただきたい」と目標を語り、客席を沸かした。

アフタートークに参加したのは、柚希礼音、ソニン、実咲凜音、清水くるみ、平野綾。

まずは、再演ということも含めて2公演を終えた感想について聞かれた出演者の、それぞれの答えを紹介しよう。

ソニン:初演の初日、緊張していて最後の「♪させないわ〜」のところ、声が裏返りそうになって。ほんとうに衝撃的というか、(初演は)すごく思い出深いものだったんですけど、今回、再演の初日は割と落ち着いてできたんですよね。ゲネプロやって、1日目やってって、こうグワッと熱がある状態でやるからよく“二日落ち”ってあるじゃないですか。だけどそんな言葉とは無縁な感じで、(今日は)全然違うパターンだなと思ったんです。

柚希礼音:初演から3年半の間にいろんなことがあったんだなって思うぐらい、稽古中から初演メンバーの台詞の言い方も何もかも違っていて、自分自身も捉え方が違っていたから、いろんなことを詰め込んでやろうと思って……みんなのお芝居もしっかり拝見しています。

実咲凜音:3年半の間に自分もいろんな経験をして、戻ってくると感じ方がこんなに変わるんだなって。本当に同じように私も思っていて。さらにセットも変わったりとか、新しいキャストも増えていたりするっていう部分もあって、新しいものを作っている感覚だったんです。だから初日の一幕の頭と二幕の頭に、オーバチュアっていうか、バンドさんの曲があるじゃないですか、あれで“うぉーっ”てなりました。

聞いていた柚希も「それ、分かる!」と同意。

清水くるみ:なんか家族みたいです。家族みたいになりました。自分がやった役を再演でもう一回やるっていうのは初めてで。それに何人か新しい方もいますが、ほぼ同じキャストで、ファミリー感みたなのが強いなって思っていて……。それにニンニン先輩(ソニンのこと)とも、こんなに喋ってなかったのが、あの、何ていうんでしょうか。めっちゃ……。

言葉を選んでいるのか、なかなか言葉が出て来ない清水に原田が「距離が近づいたってことでしょ」と助け舟を入れつつ、慣れた様子で初参加の平野に駒を進めた。

平野綾:私すごく人見知りなんですけど、今、楽屋が3人部屋(実咲、清水、平野の3人)なんですけど二人が放っておいてくれないんです!(笑)楽屋がすごく賑わっておりまして。今日もこれが終わったら、茶しばこう(関西弁でお茶をするという意味)って話をしていて!

すがかさず柚希とソニンが「楽屋で茶しばくの?私入ってもいい?」と言うと、楽屋3人組から「もう、ぜひぜひ!」と声が飛ぶ。

平野綾:で、稽古場からめちゃくちゃ盛り上がっていたじゃないですか。だからこの感じで私も皆さんの中に入って行けばいいんだなって思って。あんまり気負うことがなくて。再演ということで、初演の土台がある上で芝居の方向性を提示していただいた状態で入っていけたので、やりやすかったです。

アフタートークはキャストの仲の良さが醸し出され、女子会さながらだ。原田のちゃちゃも加わって、客席は終始笑いに包まれる。しかし15分間とされたアフタートークは、感想を聞くだけで時間を費やし、残りの時間で原田が「これやっちまいましたとか、ありました?」と話題をふると。

清水くるみ:今日、こけた。
ソニン:わたし昨日こけました。
清水くるみ:えっ? 芝居かと思ってました!
ソニン:関係者の方も、プラン変えたのかな。だから、芝居だと思っていたみたいなの。一幕の最後「私の声を聞いて」のソロの時バーっとこけてね。そのまま立ち上がるとこけたって思われるから、そのまま「♪自分に自信が~」っていい感じに(笑)。
原田:まさかソニンさんがこけると思っていないからね。
ソニン:びっくりしました。自分でも何でこけたのか分からなくて。
原田:こける人って、なぜか分からないですよね。稽古中もこけている人結構いたじゃないですか。
ソニン:いました!私あの時、目撃してた。私の相手役、ベンジャミンです!
原田:いない人の話をするのは何ですけど、彼が稽古中の「鉄の絆」の歌の時に、わーって前にきてトーンとこけて、そのまま歌っていた。そんなことがありましたね。

とそこで終了を告げるベルがなり、アフタートークが終わった。
キャスト陣も喋り足りない様子を見せていると平野が「失敗談が一人しか話せませんでしたが、この続きは福岡公演のアフタートークで披露できるかなと思いますので、東京公演中にどんなネタが溜まるか楽しみにしていてください。」と気の利いたアピールでみなの留飲を下げた。

【公演情報】
ミュージカル「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」
●東京公演●2023年6月5日(月)~13日(火) 会場:東京国際フォーラム ホールC
●福岡公演●2023年6月24日(土)、25日(日) 会場:キャナルシティ劇場
●大阪公演●2023年6月29日(木)~7月2日(日) 会場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

作詞・作曲:クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニー
脚本・歌詞・演出:板垣恭⼀
出演:柚希礼⾳、ソニン/実咲凜⾳、清⽔くるみ、平野 綾/⽔⽥航⽣、寺⻄拓⼈/松原凜⼦、⾕⼝ゆうな、能條愛未/原⽥優⼀、⼾井勝海/春⾵ひとみ 他
企画・製作:アミューズ

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