ドラマ『明日カノ』入山法子インタビュー “文通、カセット、VHS” 風俗嬢・江美は自分と同じ10代を経験していた

2023.5.18 18:30

昨年、登場人物たちの心理描写がリアル過ぎると話題になったドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』が、シーズン2として帰って来た。人気漫画『明日、私は誰かのカノジョ』(をのひなお/サイコミ)の『洗脳編』と『What a Wonderful World編』の実写化ドラマだ。メインキャラクターの1人、占いに人生を委ねて生きる“江美”を演じる入山法子にインタビュー、同世代の女性としての江美への思いを聞いた。

前回のインタビュー記事はこちら

■江美に不幸へのナルシシズムを感じ 「きちんと成長している姿を見せたい」と監督に直談判

――入山さんが演じる“江美”は、茅島みずきさんが演じる大学生“留奈”が働く高級ソープランドの同僚ですね。さばさばしたお姉さんという印象ですが、実のところどんな人物なのでしょうか?

そうですね。お話の中盤からだんだん江美の色が出てくるのですが、江美は極端に言えば、自分1人では息を吸うことと吐くことしかできず、周りに流され生きてきた人、という感じです。

後悔ばかりが残る人生で、自分のことをすごくかわいそうな人間だと思っている気がするし、「こんな人生しか歩めていない」っていうことに、もしかしたら江美は酔っているふしもあるなと感じています。

でもね。江美自身はそれでいいと思うんだけど、江美を演じる私としては、せっかくドラマにして、エンターテインメントとして視聴者の皆さんに届けるのであれば、そういったナルシシストな部分は少し改善、というか……。

江美がどういった道を選んでいくのかとか、どういった決心を、どこでいつするのかとか、彼女が成長していく、再生していく過程を大事にしたいっていう思いで、撮影現場に臨みました。

――「再生していく過程を大事に」とは?

そうですね。どうしても江美に、自分をかわいそうな人間と思ったままで終わってほしくなくて。

セリフから、そんなふうに読み取れてしまうのでは、と思うところは監督に相談して、細かいところのやりとりをしました。もっと江美が、きちんと成長している姿を見せたいと監督と話してセリフを変更した点もあるんですよ。

――体を売ってお金を稼いでいるという江美の価値観も、初めは、受け入れるのに苦労されたとか。

はい。私が生きている間に一度も触れてこなかった世界で、友人や知り合いにもいなかったので……。だから、吉原などを舞台にしている古い映画をたくさん観たり、今現役の方のSNSを見たりしました。

すると、全然違う価値観で全く別の世界だと思っていたものが、彼女たちには彼女たちの世界があって、そこでの常識や価値観がある。だから江美がこうなってしまったんだなって、なんだか気持ちが分かって。そうしたら、楽しんでお芝居できるかもって思うようになったんです。

江美はこの先、自分の人生と向き合って、今までの自分を自覚して、そこから、人との出会いとかに気づいていくんですけど、彼女がどんなふうに道を拓いていくのかっていうのを、視聴者の皆さんにも、一緒に明るい気持ちになって観てもらえたらなと思っています。

■入山の10代はバンドブーム 江美との共通項に「そうそう、ビデオテープのツメ、折ってた!」

――頭で理解するだけでなく、心から江美の価値観を理解しようとされたんですね。お話では江美の過去も描かれます。10代や20代の姿が出てきますが、年齢の演じ分けはどうされたのですか?

『明日カノ2』は、ビジュアルをすごく大切につくってくださっている作品なので、自分が演じ分けたというより、ヘアメークチームと衣装チームのみんなに魔法をかけてもらった感じでした。それに、江美の学生の頃からの友人も登場するんですが、その彼女も10代20代、40代と変わっていくので、それぞれの年代で周りの方の演技に巻き込まれながらいたことで、年代ごとの江美でいられたんじゃないのかなって思っています。

――10代の江美はバンギャル(ビジュアル系バンドの熱心なファン)だったんですよね。入山さんも学生の頃にバンドを組んでいたそうですが、江美との共通項ですね。

そうですね。バンドブームでしたから(笑)。出待ちとかはしなかったですけど、好きなバンドのCDを夢中になって聴いたり、CDをカセットテープにおとしたり、出演している番組をビデオテープに撮ったりしていましたね。

なので、江美が10代を過ごしていた部屋のシーンがあるんですけど、まさに“90年代のバンギャルの部屋”みたいなのを、美術部さんが細かく再現してくださっていて、すごく懐かしい感じがしました。

セットを見て、「そうそう、ビデオテープのツメ、折ってた!」とか、私もカセットテープを友達みんなで編集してまわしていたなとか、「うわっ、文通している! 私もやってた!」とか。学生の頃のことを思い出したりしていましたね。

江美と私、性格は逆なんですけどほぼ同じ年で、同じ時代を過ごしてきているんです。この役をいただいたことに、ちょっと運命的なことを感じていて、うれしいなって思っています。

――江美と言えば『占い』もキーワードですが、入山さん、占いは?

私も占いは好きですよ。毎週月曜日に届く占いのメルマガを楽しみにしています。12星座の占いなんですが、とっても言葉がポジティブで、すごく肯定してくれる文章で大好きです。今週は注意と言われたら、時間に余裕を持って出ようとか、足元に注意しようとか気にしたりもしますね。

でも、江美のように占いにハマることはないです。「私の運命どうなるんですか」っていうより、友達同士では解決できないような時、何かもう1つアイデアはないかなみたいなことで第三者を挟むのはいいことかなって思っています。

■「年を取ることってすごく楽しい。体のガタも傷も、自分の味になるんだろうな」

――先ほどもお話に出てきましたが、江美と入山さんは同世代。アラフォーですね。お話の中でも若い女性に嫉妬するような様子が描かれますが、入山さんは女性が年を経ることをどう捉えていますか?

昔はこうだったのになと思うことはないですね。若さに執着してしまったり、若かった頃の思い出とか経験とか、そういったものが忘れられなかったり、捕らわれてしまっている人ももちろんいると思うんですけど、私自身は年を取ることってすごく楽しいです。

運動不足もあって「体がさびついているな」とか「関節が」とか、体にガタもきているんですが、その傷もいとおしかったりするんです。なんか、そういう1つずつが私の味になっていくんだろうなと思っていて。

だから、私のそういう思いも含めて、やっぱり江美には前向きになってほしいという気持ちで、現場にいました。

――モデルから始まった入山さんの芸能生活ももうすぐ20年ですね。最後に、これからの目標を教えてください。

来年20周年なんですけど、『明日カノ2』で江美というキャラクターに出会って、こうした役をやらせていただける、任せていただける人物に、自分はなれたんだなってうれしいです。

でも、これからって、そんな大きな野望はないんですよ(笑)。面白いコトをやりたいな。
尊敬できる人たちと、愛情のある人たちと、ドラマや映画や舞台をつくりたいっていう気持ちはずっと変わらないので、誠心誠意、精いっぱい、お芝居や役柄に向き合って、1つずつ積み重ねていけたらいいなって思っています。

■MBS/TBSドラマイズム『明日、私は誰かのカノジョ シーズン2』
2023年5月2日(火)深夜スタート
放映時間:MBS=毎週火曜 24:59~、TBS=毎週火曜 25:28~
出演:茅島みずき、入山法子、綱啓永、新井美羽、稲葉友、石川恋、橋本マナミ、齊藤なぎさ、本田響矢

【入山法子 Profile】
1985年生まれ、埼玉県出身。2004年、週刊誌『週刊朝日』(朝日新聞社 ※現在は朝日新聞出版)の表紙を務めモデルとしてデビュー。2006年からは本格的に俳優としての活動を始め、映画やドラマなどに出演。2022年は人気漫画を原作とした『雪女と蟹を食う』や、詩人・三好達治の生きざまを描く映画『天上の花』でヒロインを演じている。趣味はエレキベースと乗馬。アロマテラピーや和装の有資格者でもある。

クオカードプレゼントキャンペーン2024

  • Youtube
  • Youtube

SNS

featured

text_newarticles

categories