
『あなたの番です』プロデューサー単独インタビュー 新ドラマは誰でも楽しめるクラシック音楽の魅力が満載
2023.1.10 19:002019年に社会現象にまでなった大ヒットドラマ『あなたの番です』。そのプロデューサーをつとめたのが鈴間広枝さん(日本テレビ)。entax取材班は、長年ドラマ制作に携わっている鈴間さんに、プロデューサーとしてのこだわりと、さらに新たに手掛ける1月11日スタートの水曜ドラマ『リバーサルオーケストラ』の見どころについても語っていただいた。
■1シーンでも好きな芝居があればその人に注目してしまう
――『あなたの番です』のプロデュースに携わられてさまざまな思いがあると思いますが、鈴間さんにとって特に印象的だったことは何でしょうか?

『あなたの番です』は、いろいろなタイプのすばらしい俳優さんたちとご一緒できて、「またお仕事をしたいな」という方々とたくさん出会えたと思います。何度もお願いしすぎじゃないか、と自戒の念を込める部分もあるんですけれど、やはりドラマ制作では絶対的に信頼できる人とやりたい、といった気持ちがあるので。もちろん、まったく新しい人との出会いも楽しみなんですけれども。
――鈴間さんといえば、何作品もドラマを手掛けていらっしゃいますが、ドラマのプロデュースをするにあたって、一番大切にしていることは何でしょうか? たとえばキャスティングをするにあたっても、それこそすでに有名な方から、これからの方もいらっしゃいますが、どうやって情報をインプットされているのでしょうか?
キャスティングでいうと、その方が出られた過去の作品で好きなシーンが1シーンでもあれば、という感じです。新人の方だったら実際にお会いして、その人自身が魅力的だなと思うかどうかを大事にしています。
――他社のドラマなどもご覧になられますか?
もちろんです。ただ純粋にドラマを見るのが大好きなんですけど、ドラマや映画のたとえ1シーンだけでも、すごく印象に残るお芝居されてる方がいたら、知らない人だとすぐ検索しますし、「この人が泣いている時、私もすごく泣いたなあ」といったことだけで、その俳優さんを好きになったりして、「一緒にお仕事をしたいな」と考えることはすごくあります。
――海外のドラマも見たり、どんどん情報をインプットされているということですね。
確かに海外ドラマについては、「へー!こうやって作っているんだ」といった点に注目しているかもしれません。見て、楽しんで、なんでハラハラしたんだろう?なんでワクワクしたんだろう?と振り返って「ああ、なるほど!」と思うことが多いかもしれないです。

■1月期スタート『リバーサルオーケストラ』はクラシックを聴かない人も楽しめる内容
――『あなたの番です』では、2クールという、日本テレビとしては画期的なことに挑戦されましたが、1月期にスタートする『リバーサルオーケストラ』(門脇麦/田中圭主演の一発逆転の音楽エンターテイメントドラマ)ではどんな挑戦をされましたか?
やはりオーケストラだと思います。日本テレビではこれまでないですよね。ドラマ『のだめカンタービレ』(2006年フジテレビ系)以来、17年ぶりだそうです。私は基本、新たな企画を考える時は、自分が見たいと思うものを題材にすることが多いんです。だから「着物が見たいな」という発想から和菓子のドラマだったりとか(2020年に日本テレビ系で放送された水曜ドラマ『私たちはどうかしている』)。
それに医療ものや刑事ものは、私より上手に作ることができる人がたくさんいらっしゃるので、別にあえてそこに入っていかなくてもいいかな、という思いがあります。今はわりと似通った感じのシチュエーションのものが多い中で、「久しぶりにオーケストラとか見たくない?」といった気持ちで企画書を書いたんですよ。でもいざ作るにあたっては、本当に日々勉強です。
――「オーケストラを見たくない?」と考えるきっかけは何かあったのでしょうか?
ずっと本格的な音楽ものをやりたい、という気持ちはあったんですけれど、なかなか企画が通らなくて(笑)。オーケストラとかクラシック音楽って、なんかカッコイイじゃないですか。外から見てると、一般人には分からない感があるというか。でも取材していくと、私たちと同じような悩みがあったり、共感できる部分もすごくありました。そして、なんと言っても音楽には、やっぱり人の気持ちを動かせるすごいパワーがありますよね。

――オーケストラは大人数ですが、撮影は大変そうですね。
一番大変なのは、キャストの皆さんだと思います。“何年もやってきたプロ”を演じなくてはいけないので、何か月も前から楽器や指揮を練習してくださっていて。撮影中、一緒に演奏して下さっている神奈川フィルハーモニー管弦楽団の方々からも褒められるまでになっていて、本当にキャストの皆さんすごいです。演奏シーンはこの作品の肝になりますので、キャストの皆さんの頑張りを私たちスタッフが全力で、迫力のあるリッチな演奏映像として、皆さまにお届けしたいと思います!
――普段はドラマをあまり見ない、クラシック好きな方にも満足いただけるようなレベルにされたいということですか?
そうですね。そうなるといいなと思いつつ、普段はJ-POPやヒップホップを聴いている人にも、興味を持ってもらえるようにしたくて。どうしても「クラシックって敷居が高い」とか「眠くならない?」といったイメージがあるじゃないですか。でも日々CMとかバラエティで聴いている曲がどんどん出てくる予定です。だからまったく眠くならずに楽しめると思いますし、「あ、この曲ってこんなタイトルなんだ」とか「こういうふうに演奏されているんだ」ということが分かるようにもしたいな、と思っています。
――確かに『のだめカンタービレ』が放送された当時は、若い人もクラシックに興味を持つきっかけになった、という話はよく聞きましたね。
そうでしたよね。『リバーサルオーケストラ』で、再びクラシック音楽のブームがくるといいですけれど。「いい音楽って、聴くとワクワクするね」と思って頂けたり、見て下さった皆さんが少しでも元気に、前向きになれるようなドラマになれば、と思います!
【鈴間広枝 Profile】
日本テレビ プロデューサー 日本テレビ入社に入社し、情報番組を6年半ほど経験し、その後バラエティへ。『ザ!世界仰天ニュース』を担当している途中でドラマの企画が通り、単発ドラマの現場に行くことに。ドラマ制作のプロデューサーについて、脚本作りからキャスティング、現場と一通り体験し、その面白さに魅了されてドラマ制作に異動。『東京タラレバ娘』(2017年)、『私たちはどうかしている』(2020年)『真犯人フラグ』(2021年)など数々のドラマ作品のプロデュースを手掛ける。
「リバーサルオーケストラ」
日本テレビ系列にて1月11日~毎週水曜よる10時放送
元天才ヴァイオリニストの市役所職員・谷岡初音(門脇麦)が変人マエストロ・常葉朝陽(田中圭)に巻き込まれ地元のポンコツオーケストラを立て直すことに。主人公達が数々の障害と強敵を乗り越えていく崖っぷちの音楽エンターテイメント。
脚本:清水友佳子 音楽:清塚信也 啼鵬
出演:門脇麦 田中圭 永山絢斗 瀧内公美 坂東龍汰 恒松祐里 前野朋哉 /
濱田マリ 岡部たかし 津田健次郎 / 平田満 原日出子 生瀬勝久 ほか