
『かがみの孤城』原監督インタビュー こだわり抜いた『孤城』のモデルはオーストラリアの絶海の孤島に決めた
2022.12.22 18:00辻村深月のベストセラー小説『かがみの孤城』が劇場アニメとなり、12月23日(金)から全国公開される。entax取材班は、監督を務めた原恵一に単独インタビューを敢行! 『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』『河童のクゥと夏休み』『カラフル』など繊細な心情描写で知られ、“泣きの名手”とも呼ばれる原恵一監督。名作小説を劇場アニメ化する際にこだわった点とは……。

【映画『かがみの孤城』Story】
学校での居場所をなくし部屋に閉じこもっていた中学生・こころ。ある日突然部屋の鏡が光り出し、吸い込まれるように中に入ると、そこにはおとぎ話に出てくるようなお城と見ず知らずの中学生6人が。さらに「オオカミさま」と名乗る狼のお面をかぶった女の子が現れ、約1年間の期限内に「城に隠された鍵を見つければ、どんな願いでも叶えてやろう」と告げる。
戸惑いつつも鍵を探しながら共に過ごすうち、7人には一つの共通点があることがわかる。互いの抱える事情が少しずつ明らかになり、次第に心を通わせていくこころたち。そしてお城が7人にとって特別な居場所に変わり始めた頃、ある出来事が彼らを襲う。
果たして鍵は見つかるのか? なぜこの7人が集められたのか?
それぞれが胸に秘めた<人に言えない願い>とは?

■海に浮かぶ孤立したお城のイメージは、オーストラリアの「ボールズ・ピラミッド」がヒントに
――辻村深月さんの小説『かがみの孤城』を原作として劇場アニメ化される際に、こだわった点はどこでしょうか?
「本屋大賞」も受賞してものすごく売れている本なので、その作品を預かるという責任感は感じました。劇場アニメ化は、原作ファンをいかに飽きさせないで納得してもらえるものにするか、というのが僕の一番大事なミッションだった気がするんですよね。アニメならではの映像表現、特にお城の造形やお城がある場所はこだわりました。原作では確か、お城がある場所について、はっきり書かれていなかったと思うんですよ。お城の塔の上から見たら下は雲で何も見えない、といった表現だったと思うんですけど。でも僕は海に浮かぶ孤立した城というイメージが浮かんだんです。実際にそのヒントになるような場所を、テレビで見たんですね。オーストラリアにある「ボールズ・ピラミッド」という、水平線に囲まれた海上に高さ500数十メートルの岩山が突き出ているという場所があって。それを見た時に、あ、この岩山の上にお城をつくったら面白い、と思ったのがこのデザインになったきっかけなんです。

■大人も楽しめる、親子で楽しめる作品づくり
――お城の中は小説のイメージ通りに再現されていると感じました。
時間が許せば、もっと色んなお城の中のお部屋を見せられたとは思うんですよ。せっかくこれだけの規模のお城をつくったから、色んなアングルとかもっとつくれたんですけど、ちょっと語らないといけない会話やストーリーがどうしても優先されますし、長さの制限もあるので……お城の中の造形はもう少し色々見せたかったという気持ちは残っています。
――原監督のアニメは大人も楽しめる、親子で楽しめる作品だと思いますが、そのあたりは意識していらっしゃいますか?
そうですね。 あまり観客の幅を狭めるようなものはつくりたくないかな。
――原監督は、今までの作品から「泣きの名手」といったキャッチフレーズがついています。
本当は「爆笑王」とか言われたいですけどね(笑)。そろそろ路線変更しようかな。
【原恵一監督Profile】
1959年7月24日生まれ。『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)で大きな話題を集め、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(02)、『河童のクゥと夏休み』(07)で日本での数々の賞を受賞。また、アヌシー国際アニメーション映画祭で受賞した『カラフル』(10)、『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』(15)ほか、『バースデー・ワンダーランド』(19)など、海外でも高い評価を受ける日本を代表するアニメーション監督。2018年には芸術分野で大きな業績を残した人物に贈られる紫綬褒章を受章。アニメーション映画監督としては、高畑勲監督、大友克洋監督に次ぐ史上3人目の快挙を成し遂げ、国内外から新作が待ち望まれている。
【作品情報】
『かがみの孤城』 12月23日全国公開
<声のキャスト>
當真あみ 北村匠海
吉柳咲良 板垣李光人 横溝菜帆 ・ 高山みなみ 梶裕貴
矢島晶子 ・ 美山加恋 池端杏慈 吉村文香 ・ 藤森慎吾 滝沢カレン/ 麻生久美子
芦田愛菜 / 宮﨑あおい
<スタッフ>
原作:辻村深月「かがみの孤城」(ポプラ社刊)
監督:原恵一
主題歌:優里「メリーゴーランド」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
脚本:丸尾みほ
キャラクターデザイン:佐々木啓悟
ビジュアルコンセプト/孤城デザイン:イリヤ・クブシノブ
音楽:富貴晴美
企画・製作幹事:松竹 日本テレビ放送網
制作:A-1 Pictures