錦織一清 単独インタビュー 初の著書を『演出論』にした まじめな理由

2022.12.13 21:30

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舞台演出家・俳優として活躍する錦織一清が、初となる著書『錦織一清 演出論』(日経BP)を11月28日に発売。今年上演された舞台、ファンミーティング、植草克秀とのディナーショーなどに密着取材してきたentax取材班は、単独ロングインタビューを実施。著書についてや、今年話題となった舞台『サラリーマンナイトフィーバー』についてなど話を聞いた。

>>単独インタビュー①はこちら

■役者が変わる度に何度も同じことを言っていたから形に残したかった

――著書『錦織一清 演出論』を拝読して、後進の演劇人への温かい目線や愛情を感じました。この本を執筆されたきっかけを教えてください。

錦織 僕自身、ちゃんと演劇を習ったとかそういう経験がなく、とにかく実践、実践でやってきたというのがありまして。いわゆるメソッド的なことを教わった経験や、こういう『演出論』的な書籍も(昔から)あったんでしょうけど、僕はその存在に気づいてなかった。世の中にはリー・ストラスバーグ(アメリカの演技指導者)のアクターズ・スタジオがあったり、ストラスバーグ・メソッドといった難しい演劇理論はありますけども、そうではない、もっとやさしく(簡単な伝え方でも)芝居が好きな人だったら演劇ができるんじゃないか、というところからスタートしています。もう一つは、僕も割と若い人たちと仕事をする機会が多かった中で、メンバーが変わるとその都度同じことを言っている自分に気づいたりして、じゃあ、これは何かに残しておいた方がいいかな、と思ったので。僕なりの解釈なんですけどね。

――若い方にもわかりやすい演出論として提示したいということだったのですね。

錦織 僕は難しい説明とか全然できない人間だからね。役者さん達は、演じる前に“自分の中に落とす”っていう作業があって、稽古が始まって1週間くらいだと「すみません、ちょっとまだ自分の中に落とし切れていないので」って言ったりする言葉をよく聞いたので、何か“落としやすい”ような言い方がないかな、と思ってね。

――今年上演された『サラリーマンナイトフィーバー』は著書の最後に台本も載っていますが、出演者の皆さんが、錦織さんは自分らしさを生かした演出をしてくださる、という話をされていました。著書の中にも“演出は応援である”と書かれていたので、そのあたりは意識されているところでしょうか?

錦織 素材という言い方をするとすごく失礼な気もするんだけれど、やはり(役者さんは)素材ですから。魚に例えるなら、その人がイサキなのにマグロになってください、とは言わない、ということですかね。

■脚本・演出・出演の三役をこなすと損をする!?

――『サラリーマンナイトフィーバー』では脚本を書き演出をしながら、ご自身も5年ぶりの舞台出演をされました。三役こなすのは大変でしたか?

錦織 労力はもちろん大変なんですよね。本来、僕のスタンドインとかそういう方を用意していただけるんだったら、ちょっとそれは助かったんですけどね。どうしても自分を客観視できませんから。僕に限ってなのか、『サラリーマンナイトフィーバー』に限ってなのかわからないですけれど、脚本・演出・出演の三役をこなすと、金銭的には損ですね(笑)。それがわかりました。三人分の仕事をしたと思うんですけれど、損ですね。これ、もしかして今後おやりになろうとされている方がいらっしゃったら言っておきます。(カメラ目線で)損ですよ! 僕は損しました(笑)。

■舞台の「間」というのは、お客さんとの間合い

――舞台はお客様と一緒につくり上げていくものだと、以前のインタビューでおっしゃっていました。『サラリーマンナイトフィーバー』も千秋楽へ向けて変わっていきましたか?

錦織 これは著書にも書いてあるんだけど、芝居の「間(ま)」というのは、お客さんとの「間」であると僕は言ってるんですよ。舞台の芝居というのは、お客さんとやっていると思うんですよね。お客さんと芝居しないといけないと思うんです、僕は。他の役者さんはそういう言い方はしないですよ。「俺はお客さんと芝居してる」なんて。だって、冗談みたいなシーンでもっとアドリブやりたくなっちゃうっていうのは、お客さんが影響していて、一緒に間合いを取っているから(アドリブ)やりたくなっちゃうんでしょう。口にはしないかもしれないけれど。舞台の「間」というのは、お客さんとの間合いなんですよね。登場人物、共演者は(同じ舞台上に)いるけれども、気持ちはお客さんに向かっている、ってみんなもっと言ってもいいんじゃないですかね。だから、お客さんがセリフを噛みしめてくれるんじゃないですか。

多分、お客さんも誰かになっているんじゃないですかね。好きな登場人物になったり、今(セリフを)言われている立場になったりとか。だから気持ちが動くんじゃないでしょうか。今自分が言われているような気持ちにならなければ、心が動かない気がする。その分、舞台のお芝居というのは、映像よりおもしろさがある気がする。若干、地方によっても違いがありますからね。大阪の人の感じ方と、東京の人の感じ方と、名古屋の人の感じ方って多分違うと思うんですよね。だからおもしろい。

(逆に)お客さんがいないとつくりにくいんじゃないですかね、舞台芝居って。コロナ禍の時代だから舞台の配信もやりましたけど、収録した映像を分かち合うものではないと思ってます。だったら映画をやればいいじゃない、と思うし。収録で見せるなら、もっとアップにしたり物に寄ったりもできるので、映像は映像なりに親切につくった方が僕はいいと思う。何個か定点カメラを置いて映像にして、というのを僕らもしていましたけれど、舞台ってそういうものではない、という気がして仕方ない。配信をやるんだったら、カメラを何個置けるかわからないけど、見ているお客さんがカットを選択できるとおもしろいですよね。そういうのだと、演劇を映像で見せるという意味があるんじゃないかな。

>>単独インタビュー③へと続く。

【錦織一清Profile】
1965年生まれ。東京都出身。小学生でジャニーズ事務所に入所。アイドルグループ『少年隊』のリーダーとして人気を博し、テレビドラマや舞台を中心に俳優としても活躍。1999年に出演した、つかこうへい演出『蒲田行進曲』をきっかけに、舞台演出にも積極的に関わるようになる。2020年12月31日に、43年間在籍したジャニーズ事務所から独立。2021年から同時期に独立した植草克秀とYouTubeを配信し、2022年10月には二人でディナーショーも開催。2022年11月28日、初の著書となる『錦織一清 演出論』(日経BP)を上梓した。

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文&取材:entax編集部

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