
『あなたの番です』プロデューサー単独インタビュー 秋元康氏と強力タッグ 映画製作の舞台裏
2022.11.18 12:002019年に社会現象にまでなった大ヒットドラマ『あなたの番です』。その劇場版が11月18日の『金曜ロードショー』で地上波初放送される。entax取材班は、ドラマだけでなく劇場版でもプロデューサーを務めた鈴間広枝さん(日本テレビ)に、劇場版につながった背景や、ドラマ、劇場版を通して感じたキャストの変化といったことについて語ってもらった。
■ふたご座流星群に託したのは、劇場版のヒット祈願
――映画化に関しては、当初は考えていらっしゃらなかったそうですね。
そうなんです。ドラマが終了して燃え尽きていましたし、「もう、これ以上やることはないでしょう」といった感じだったんですけれど、ありがたいことに映画化のお話をいただいて。大好きなキャラクターたちがかなり死んじゃってるから、「ここから新たに2時間、どうすればいいのか?」という感じだったんですけれど、『あなたの番です』というタイトルの映画だったら、やっぱりヒロインの菜奈ちゃんは欠かせないだろう、という話になって。菜奈ちゃんに出てもらうには、パラレルワールドにするのはどうか、と。それで「みんな生き返ってもらえれば、また2時間のお話が作れますね」となったんです。
あと、見た人がスッキリするというか、「ああ、面白かったね」と言って帰ってもらいたいという気持ちはすごくありました。ちゃんと結論を出して「え?」となることがなく、読後感のいい映画にしたかったですね。

――劇場版の撮影に入る際、出演者の皆さんからどんな声がありましたか?
物語の中で生き残っていた人たちは、「やっぱりやることになったんだ。頑張ろう」みたいな感じなんですけれど、亡くなっていたキャストの方々は「え、出れるの?」と驚きが大きかったです。菜奈ちゃん役の原田知世さんが「私は出れないと思っていたから」とびっくりしていらして。でもすごく喜んでくださったんですよ。
――今回の舞台は船上ということで、撮影にはいろいろ制限があったと思うのですが、いかがでしたか?
撮影は12月、1月だったので、ものすごく寒かったんです。キャストの皆さんは待ち時間が長く、船酔いされている方も多かったんですよね。本当に皆さん頑張ってくださって。それからコロナにならないように、かなり注意をしながら撮影していました。 そういえば、途中でふたご座流星群が見えるタイミングがあったんですよ。思わず「映画があたりますように!」と願ったら、「色気のないプロデューサーだ」と言われました(笑)。

■田中圭さんのまっすぐさと思いやりが作品をひっぱってくれた
――ドラマの後半で重要な役割を担っていた黒島沙和役の西野七瀬さん、二階堂忍役の横浜流星さんですが、ドラマから劇場版まで長い期間お付き合いされて、どのような変化があったと感じられましたか?
西野さんはドラマの初めはすごく緊張していたのですが、回を追うごとに女優さんとしてさらに磨かれていって。でも、可憐でたおやかな空気感を持ちつつ、怖いこともできてしまうという彼女ならではの雰囲気は、ずっと失われませんでした。
劇場版の撮影ではみんな顔見知りだったので、最初からリラックスして臨んでいました。ただクランクインしたら、いきなりヘビーなシーンからだったので、申し訳なくて「いきなりこれで、ごめんなさい」とお詫びしました(笑)。
横浜流星さんもドラマと映画版の間に何本も主演作品を経験し、ぐんと頼りになる役者さんとして今回の撮影に戻ってきてくれました。『あなたの番です』で最初に来た時は、素直でまっすぐな男の子で、どーやん(二階堂)の頼りなさとか、黒島ちゃんを愛する気持ちと疑う気持ちの間で揺れ動くところとか、当時の彼には非常にフィットしていたと思うんです。でもそこから1年半くらい経過して劇場版の撮影となり、今度のどーやんはよりカロリーの高い役だったわけですね。相当集中して臨んでくれていたと思うんですけれど、実際の演技を見て、さすがだな、と思いました。

――そして、主人公の手塚翔太を演じる田中圭さんはいかがでしたか?
一貫して本当にいい俳優さんです。クライマックスのシーンも、すごくストレートなことしか言っていないんですけれど、それだけで泣けるというか。直球を直球で投げて、ちゃんとストライクを気持ちよく取ってくれる人で、それは多分、田中さんが持っているまっすぐさとかパーソナリティがないと、なかなか表現できない、という感じがするんです。あとは相変わらず、相手のためにお芝居をしてあげる人。一緒に芝居をしている人が、すごく活かされるお芝居をされるんです。
――どういうところで感じられますか?
ドラマ後半は西野さん、横浜さんと一緒のシーンが多かったのですが、その時に自分がどうやると彼らがやりやすいのか、気持ちをもっと出せるのか、といったことをすごく考え抜いて、相手が“上がる”お芝居をする。それはキャリア20年以上の積み重ねの結果であり、主演以外の経験も豊富、というところが田中圭さんの強みでもあるのかもしれない、と感じています。
あと水中のシーンは、以前、別の作品での水中撮影が怖くてトラウマだったようで、今まで見たことがないほど恐怖で震えていました。しかも以前の撮影は日中のシーンだったので明るかったんですけれど、今回は真っ暗だったんですよ。もちろんダイバーの人はいるんですけれど、一人で泳がなくてはいけないとなった時に、真っ暗で何も見えないし、自分がどっちを向いているのかも分からない。もちろん息はできない。だからすごく大変で。でも何十テイクも撮ったので最終的には、「慣れた」とおっしゃっていて。すごくいいシーンにしてくださいました。
■親子の会話も生み出すコミュニケーションツールに
――『劇場版 あなたの番です』は11月18日に『金曜ロードショー』で放送されます。地上波初放送ということで、視聴者の皆さんには、どういった点を楽しんでいただきたいですか?
『あなたの番です』のいいところは、会話のネタになることなんだと思うんです。テレビで同時に見ることで、誰かとまた、ああでもない、こうでもない、と話していただけたりすると、より楽しいのではないかと思います。
――改めて『あなたの番です』のプロデュースに関わられて、どのような手ごたえを感じられましたか?
特にすごくいいなと思ったのは、今ドラマは、好きなデバイスで好きな時に一人で見る時代じゃないですか。そんな時に『あなたの番です』のことだけはお父さんが「思春期の娘と話せた」とか。そういう話を聞くと、ああ、良かったなと思って。
家族の中のコミュニケーションのツールになっているのは、すごくテレビドラマらしい感じがします。オンタイムでテレビの前に集まるなんてことも、もうほぼない状況だと思うからこそ、とてもありがたいことだったと思います。
【鈴間広枝 Profile】
日本テレビ プロデューサー 日本テレビ入社後、情報番組を6年半ほど経験し、その後バラエティへ。『ザ!世界仰天ニュース』を担当している途中でドラマの企画が通り、単発ドラマの現場に行くことに。ドラマ制作のプロデューサーについて、脚本作りからキャスティング、現場と一通り体験し、その面白さに魅了されてドラマ制作に異動。『東京タラレバ娘』(2017年)、『私たちはどうかしている』(2020年) 、『真犯人フラグ』(2021年)など数々のドラマ作品のプロデュースを手掛ける。
11月18日(金)よる9時00分~11時54分(60分拡大)
『あなたの番です 劇場版』(2021)地上波初放送・本編ノーカット
◆企画・原案:秋元康 ◆脚本:福原充則 ◆監督:佐久間紀佳
◆音楽:林ゆうき 橘 麻美
◆出演:原田知世 田中圭 西野七瀬 横浜流星 浅香航大 奈緒 山田真歩 三倉佳奈
大友花恋 金澤美穂 坪倉由幸(我が家) 中尾暢樹 小池亮介 井阪郁巳
荒木飛羽 前原滉 大内田悠平 バルビ― 袴田吉彦 片桐仁 真飛聖
和田聰宏 野間口徹 皆川猿時 / 門脇麦 酒向芳 田中哲司 徳井優
田中要次 長野里美 阪田マサノブ 大方斐紗子 峯村リエ 竹中直人
木村多江 生瀬勝久