【独自インタビュー】絢香、デビュー20周年「今の自分では書けない言葉」“生まれた瞬間”の音源を初公開
「三日月」「にじいろ」「みんな空の下」。10代でデビューした絢香が書いてきた言葉は、20年のあいだに聴き手それぞれの人生と重なってきた。デビュー20周年を記念した書籍『にじいろのひかり/絢香』と、同名の企画展が9月18日(金)にスタート。同じ日、全国ツアー「絢香 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR」も東京・府中の森芸術劇場で初日を迎えた。これまで書いてきた言葉を、今の絢香はどう読むのか。20年歌い続けた今、音楽とどう向き合っているのか。entaxではその現在地を聞いた。
――20周年の節目に、歌詞、言葉を軸にした本を作ろうと思われた理由を教えてください。
20年経ったということに自分でも驚きで。20年も大好きな歌を歌ってこられたのはとても幸せなことだなと思っています。たくさんの楽曲を残してきた中で、歌詞を改めて掘り下げて伝えることも、それを本という形にすることも今までなかったので。この節目に形として残せるのは私にとっても宝物になりますし、ファンのみんなに「ありがとう」という思いとして届けられるんじゃないかと思い、制作することになりました。
リリースした楽曲をここまで深く聴き返すこともあまりなかったので、当時の自分を思い出したり、このときこんなことを感じていたなと思い返したり。どの時代の楽曲に対しても感じたのは、どんなときもそのときの自分が心からあふれる思いを曲にしてきたんだな、ということでした。だからどの曲を取っても、今の自分が書こうと思っても書けない言葉のチョイスだったりして。音楽と真正面から向き合ってきた20年だったんだと思えました。
――絢香さんの歌詞は、難しい言葉ではなく手の届くところにある言葉が多いと感じます。
そうですね。今回選んだ曲は特に、自分の心から出てきた言葉たちで。自分に言い聞かせるような言葉だったり、その時の自分が忘れたくない言葉だったり。当時の自分が背伸びせずに、ありのままで描いていた楽曲を収録しました。

――書いた当時と今とで、受け取り方が変わった曲はありますか。
初期の曲、たとえば「三日月」や「みんな空の下」は、当時書いたときの思いはもちろんあるんですが、そこから20年が経ち、たくさんの方がその人の人生に重ねて聴いてくださって。そのエピソードもこの20年たくさんいただいてきたので、もう自分だけの曲じゃない、半分みんなの曲だという感覚があります。ライブで歌うときも、曲を聴いてくれたファンの人たちの顔が思い浮かびます。
――今回はイラストレーター・西淑さんの描きおろしや、音楽評論家・小貫信昭さんによる楽曲コラム、ファンからのメッセージも収録されています。他の人の視点を通してご自身の曲を見ることになりました。
まず、イラストが本当に素敵で。西さんが楽曲を聴いて感じたものを描いてくださったんです。言葉からさらに広がりを感じられるようなイラストでした。今回本を作るにあたって、自分としては絵本のような要素がほしいとすごく思っていたんです。絵とともに言葉がすっと入るような。自分も子どもがいるので、読み聞かせをするときに絵のテイストはすごく大事な要素だったから、西さんが入ってくださったのは嬉しかったです。私の曲を絵にするとこんな感じなんだ、1つ1つ完成を見る度にワクワクしました。
小貫さんの楽曲解説も、自分の主観だけではなく、別の視点から曲をとらえて分析してくださっていて、興味深かったですね。
ファンのみんなからのメッセージもうれしいです! 結婚式で曲を使ってくださったお話や、人生のつらいときによく聴いていた曲なんだというようなお話を聞くと、この曲を生み出せて良かったと心から思います。
ライブのときにステージから見えるファンのみんなも、涙を流しながら聴いていたり、家族で来て手をつなぎながら聴いていたり。何を思いながら聴いてくれているのかなと想像すると、ぐっとくる瞬間は多々あります。今回寄せられた具体的なエピソードを読むと、この曲に自分の人生を重ねて聴いてくれていたんだということがより私にも届いて、うれしかったですね。

――歌そのものについて、20年前と今で変わったところと、変わっていないところは。
声の変化は大きいです。初期の楽曲を聴くと、10代だったので響きがまだまだ少女だし、高音が強くて低音が足りないなと、今の私からすると感じたりもします。歌声はものすごく変化していますね。でも変わらないのは、「音楽をやりたい」と思ったときからずっと歌うことが大好きだということ。その気持ちはいまだにどんどん膨らんでいます。
――ステージに立つときのルーティンは変わりましたか。
変わりました。デビューした頃のほうが、そういうものがたくさんあったな。緊張もしていたし、こうじゃなきゃいけない、こういうことをやらなきゃいけないと、自分を縛るものが多かったと思うんですけど、今はほとんどないんです。5分前まで普通に過ごしています。
歌うことが自分の一部というか、すごく自然なこととしてライフワークになっているので、長く続けていくことを思うと今のスタイルに変化したのは良かったと思います。肩の力を抜いて、おうちで歌うのと変わらないぐらいの気持ちでいられたら、ありのままの自分でステージにいられるから。心にたくさん乗っかっていたものをひとつひとつ取って、必要なものだけが残っている感覚ですね。だから今が一番、歌っていて楽しいです。
企画展は西淑のイラストが空間に広がる構成だ。「にじいろ」「みんな空の下」「花束じゃなくキミといたい」などの世界に入り込み、歌詞を味わうことができる。目玉のひとつが「夢幻花火」の未公開デモ音源。聴けるのは、絢香自身がピアノを弾きながら歌った、いわば曲が“生まれた瞬間”の音だ。アレンジが加えられる前の姿がそのまま残されている。

――未公開のデモ音源を流すのはあまり聞かない企画です。絢香さんのアイデアですか。
せっかく企画展に来てくださるので、どういうものなら喜んでもらえるかな、と身近なスタッフとも話していた中で出てきました。正直、私としてはそんなに価値のあるものだとは思っていなかったんです。でも周りのスタッフが、制作の過程が垣間見えるのはきっと喜んでもらえるんじゃないかと言ってくれて、今回初めてみなさんに聴いていただくことになりました。アレンジされる前の音源は本当にできたての状態なので。その空気感が伝わると、また楽曲の聴き方も少し変わったりして面白いんじゃないかなと思います。
――デビュー当時のご自身、そしてお子さんに見せるなら、それぞれ本のどのページを開きたいですか。
全部届けたいですけど、やっぱり最後の「未来へ」というページですね。20年歌っているなんてことを、18歳の私はまだイメージすらできていなかったので。20年を経て、その先の未来を見ている自分を知れたら、もっと安心して、肩の力を抜いてやれたんじゃないかなと思うんです。そういう意味では、最後のページは結構意味が大きいかもしれない。
子どもたちには、「にじいろ」のイラストのページですかね。歌詞も本当にシンプルなので、改めて子どもたちに伝えたいメッセージという意味でも、美しいイラストを楽しめるという意味でも、「にじいろ」のページは好きなんじゃないかなと思います。

――節目の年に20年を振り返ったことで、これからやりたいことは見えてきましたか。
20年続けてこられたことも本当にありがたいことだと思うんですけれども、ここから先も続けていくには、やっぱりどんどん新しいことに挑戦したい。そういう意味では、自分の中に「スペース」をたくさん作っておきたいですね。常にちゃんと余裕があることで、新しいこともキャッチしていけるはずなので。そういう自分を保つこと。それから、どんどん年を重ねていっても元気で歌えるように、健康でいることですね。
体はベースが大事だと思うので、睡眠はこの10年かなり大切にしています。10時に寝て、5時半に起きる。一番大事なゴールデンタイムはほぼ寝ていますね。運動もそうだし、食事もそうだし、基礎的なところから体も大事にしていきたいです。
――本を手に取る方、企画展に足を運ぶ方に、どんな時間を過ごしてほしいですか。
デビュー当時から応援してくださっているファンのみんなとは、この20年、一緒に年を重ねてきたという意識の繋がりがあります。お互いのこの20年を振り返りながら、西さんの素敵なイラストに囲まれて、紡いできた言葉を改めて感じて、ツアーにも会いにきてもらえたらうれしいです。

書籍『にじいろのひかり/絢香』は9月18日に発売。企画展「にじいろのひかり」は9月18日(金)から10月12日(月・祝)まで東京・magmabooks(虎ノ門ヒルズ グラスロック)で開催。10月23日(金)から11月15日(日)は大阪・MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店に巡回する。入場料550円(税込)。
デビュー20周年記念ベストアルバム『20 Lights - The Collection -』は9月9日発売。全国ツアー「絢香 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR」は9月18日の東京・府中の森芸術劇場 どりーむホールを皮切りに、10月25日の大阪城ホール、11月29日の日本武道館まで全20公演。
取材・文:entax編集部