【独自インタビュー】華優希、宝塚退団から5年「もっと自由な場所に行きたい」 『星影の人』で再び柴田作品へ

幕末の京都。新選組一番隊組長として剣を振るう沖田総司と、芸妓・玉勇。二人が心を通わせる束の間の日々を描く宝塚歌劇の名作ミュージカル『星影の人』-沖田総司・まぼろしの青春-が、2026年11月19日に東京国際フォーラム ホールCで開幕する。1976年の初演から半世紀、繰り返し再演されてきた柴田侑宏の代表作の一つを、今回は宝塚とは異なる座組で上演。潤色・演出を内藤裕子が手がけ、沖田総司を岡宮来夢、玉勇を華優希が演じる。玉勇役の華優希は元花組トップ娘役。2021年の退団後は舞台と映像に活動の場を広げてきた。entaxでは『星影の人』への思いから、退団後5年で広がった芝居への向き合い方まで聞いた。

――今回のオファーを受けたときは、どのようなお気持ちでしたか。

『星影の人』は、私がまだ下級生の頃に雪組公演を博多座で拝見しているんです。そのときの私、チケットを取らずに博多まで行ったんですよ。今までそんなことをしたことはなかったんですけど、なんだか絶対に見なきゃと思って。当日券があるかどうかも分からないのに向かって、幸運なことに観劇できて。だから勝手に不思議なご縁を感じています。柴田先生の作品が宝塚ではない場所で上演されるんだという驚きもありましたし、宝塚を卒業してから、柴田先生が描かれる作品で、それもヒロインをさせていただけるということには大きな喜びがありました。

――在団中にも『新源氏物語』『仮面のロマネスク』『あかねさす紫の花』と柴田侑宏先生の作品に出演されています。改めて柴田作品と向き合う中で、感じていることはありますか。

この作品が決まったときに、柴田先生はどういうふうに作品を作られているんだろうと思って先生のインタビューをいろいろ読ませていただいたんです。宝塚は男役さんがやっぱり中心にいらっしゃって、それがすてきな舞台だけど「主役の男役を魅力的たらしめるものはヒロイン」という柴田先生の言葉があって。だからこそ深く描き込まれたヒロインたちなんだなと思いました。

今回は宝塚での上演ではないので、演出の内藤さんや共演者の皆さんがどう作られていくかによって、いろんな変化があると思います。でも柴田先生がどうお考えになってこの物語を作り、玉勇さんを作ったのか。そこは大事にしたいなと思っています。柴田先生がどういう方だったのか、下級生ながら自分の目でお会いできていた時間があるというのは本当に貴重な財産です。

――玉勇は、境遇も家族のことも台本に細かく書き込まれてはいません。華さんの目に、玉勇はどのような女性として映っていますか。

しなやかな女性だなと思いました。芸事をする人でもあるけれど、お客様と接するお仕事でもあるので、相手に合わせられる柔らかさがあると思うんです。それでいて、自分は孤独なんだと運命を受け入れている強さもある。総司さんと出会って、今まで感じてこなかった温かい思いに心が揺れ動く。どこにでも動けるような、しなやかな強さのある女性だなと思っています。

雪組の早霧せいなさん、咲妃みゆさんが演じられていた舞台を拝見したときは、沖田総司さんも玉勇さんも美しく潔く生きたかっこいい人たちだという印象がありました。当時の台本をいただいて読み返してみると、細やかな人間ドラマがあって。美しさだけじゃない葛藤や人間としての可愛らしさも散りばめられていたので、私も丁寧に演じていけたらと思っています。

――ご自身と重なる部分は感じていますか。

稽古が始まっていない現時点ではまだこれと言い切れないのですが、今後共通点は見つけていきたいですし、玉勇さんを自分の心でも理解したいです。宝塚時代に上級生の方から「髪の毛の先から爪の先までその役の血を流すんだよ」と言っていただいた言葉が、今もずっと自分の役作りにつながっている感じがしていて。役の心を自分の心とも連動させたいので、玉勇さんが生きてきた道や感じているものを、自分の心と結びつけてやっていきたいなと思います。

――役に近づくとき、台本の外から調べていくタイプでしょうか。玉勇は史実に記録が残る人物ではないので、演じ手に委ねられている部分も大きいと思います。

調べることは多いです。歴史ものは特に。歴史的なことはもちろんですが、今回は特に柴田先生の作品であるということを大切に、、柔らかな頭を持ってやりたいなと思っています。玉勇さんはどうにでも演じようがあるなと思いますし、誰が演じるのか、またどんな総司さんなのかによっても玉勇像は変わっていいんじゃないかなと。稽古で総司さんをはじめ周りの皆さんと対面したときに、自分が何を思うのか、演出の内藤さんはどういう物語を作りたいと思ってくださるのか。そこをすり合わせて、みんなが納得できるものを作り上げられたらなと思います。

――日本舞踊があり、京ことばもあります。京都のご出身ではありますが、今、これは大変そうだと感じていることはありますか。

宝塚を卒業してから日本舞踊と離れてしまって……和物の舞台をさせていただける機会はあまり多くないのですが、説得力のある芸妓として、踊りはもちろん所作からやれたらなと思っています。京ことばも少しだけ勉強したんですけど、京都弁で育ってきたのがちょっと得して良かったなと思うところと、微妙に違うところがたくさんあって……絶妙に難しい。慣れ親しんだ言葉だからこそ、もう入ってしまっているというか。標準語よりも「自分の言葉」なので、そのまま言ってしまうと京ことばと乖離があったりして。正しく美しい京ことばでお届けしたいです。

――沖田総司役の岡宮来夢さんや共演者の皆さんの印象はいかがでしたか。

岡宮さんにお会いするまでは、明るくて柔らかい方なんだろうなという印象があったんです。でも初めてお会いしたときに、すごく明るくいらっしゃるんですけど、心の底に落ち着きを感じて。それがすてきな方だなと思いました。私が今まで出会ってきた中で、好青年ランキング1位です!こんな好青年がいらっしゃるんだ、と。どんな総司さんを演じられるのか楽しみです。

今回は娘役の先輩方がたくさんいらっしゃるので、本読みのときに少しお話をさせていただきました。私、雪組ファンだったので……愛加あゆさんはまさに舞台を拝見していた方で。お隣にいらっしゃって「わああ!本物がいらっしゃる!!」と思って(笑)これを機に、しっかり勉強させていただこうと思っています。

――沖田総司という名前がつくだけで、観客は悲劇的な結末を思い浮かべます。ただ本作は、その手前にある幸せな時間を描く作品でもあります。玉勇として、どのような瞬間を大切に演じたいですか。

稽古が始まる中で、きっと変わっていくような気がするんですが、やっぱり総司さんと玉勇さんの間に流れる、お互いに感じる心のきらめきみたいな温度でしょうか。総司さんも玉勇さんもお互いに過ごせる時間が長くはない。その中でも、きっと生きてきた中で一番きらめいていたと思える時間をお客様にも感じていただけるように一緒に作っていきたいなと思います。

――昭和・平成・令和と受け継がれ、思い入れを持つ観客も多い作品ですね。

今まで演じてこられた大先輩方がいて、その舞台を観てこられた宝塚ファンのお客様がいて、多くの方の思い入れも愛情もある作品だと思うので、大切に受け継がれてきた思いを自分の胸に受け止めて。そして柴田先生の紡がれる言葉を、また今、自分の口から発せられるということにも感謝しています。時代も変わり、場所も変わり、新しく生まれる『星影の人』を、新しく観てくださる方にも、今まで愛してくださっていた方にも、皆さんの心にまっすぐに届くように、真摯に誠実に取り組んでいきたいです。

――ここからは華さんご自身のことを伺います。宝塚歌劇団を退団されて5年。印象に残っているお仕事はありますか。

一つ一つが別の色の印象で残っているので、これが一番ですというのは難しいのですが、特に感じたのは、3年前に『キングダム』に出演させていただいたときと、『ヴェニスの商人』というシェイクスピアの作品に出演させていただいたときですね。それぞれ全然違う、いろんな芝居の畑で育ってきた方と共演させていただいて…。宝塚を退団して最初に出演させていただいたのが『マドモアゼル・モーツァルト』という作品で、(元花組トップスター)明日海りおさん主演の舞台でした。一生忘れられない大事な公演なのですが、明日海さんを誰よりも見つめさせていただけた公演だからこそ、なんとなく宝塚を出てからすごく環境が変わったのが『キングダム』みたいな感覚になっていて。初めて男の人を見たみたいな(笑)『キングダム』でも『ヴェニスの商人』でもこんなにみんな自由に芝居をするんだというのを強く感じました。芝居の方法ってこんなにもいろんな種類があるんだって。

失敗する怖さはそれぞれあると思うんですが、自分が育ってきた畑のものを思いっきり放出している感じがして、そのぶつかり合いによって生まれるエネルギーがものすごく気持ちいいなって。だから私も、いろんな人からいろんな要素を盗んで、もっと自由な場所に行きたいなと感じました。

――朝の連続テレビ小説をはじめ映像作品の現場も増えています。フィールドが変わることで、演じることへの向き合い方は変わりますか。

特に映像作品は、現場現場で求められるものが全然違うなと感じています。舞台のお芝居とも、私は切り替えないとうまくできなくて。舞台のお芝居もまだまだ勉強しなくちゃいけないことがいっぱいあるんですけど、映像作品は特に手探りなところがまだあって、一回一回が勉強だなと思いますし、現場にいる人の声を受け取りながらやっているような感覚です。

今まで舞台を経験してきて、お稽古を積み重ねて積み重ねて届けるというのがベースにあるので、自分だけで考えてきて本番というのがどうしても難しく感じてしまうこともありました。でもそのキャッチ力や瞬発力は速度を上げて絶対に身につけたいと思っています。

――最後に。今の華優希さんが俳優として持っている「欲」を聞かせてください。

初めて宝塚に入りたいと思ったときの願いと、やっぱり変わらないんですよね。私自身、初めて宝塚を観たときにすごく人生に影響を受けたので。私たちのお仕事はその人の人生にちょっとだけ介入できるような仕事だと思うんです。日常に悲しいことがある人だったらちょっとでも心が動いて楽しくなったり、受け取ってくださる方の心を少しでもいいふうに動かせる役者でありたいなと思います。

それを舞台でも映像作品でも、ほかのエンターテインメントでも、もっといろんなものに挑戦して幅を広げていきたいなと。抽象的ですけど、そう思っています。まずは玉勇として、何かが届けばいいなと思います。

ミュージカル『星影の人』-沖田総司・まぼろしの青春-
原作:柴田侑宏/潤色・演出:内藤裕子
出演:岡宮来夢、華優希、岐洲匠、笹森裕貴、田村心、愛加あゆ ほか

東京国際フォーラム ホールC(東京) 2026年11月19日(木)〜24日(火)
SkyシアターMBS(大阪) 12月3日(木)〜7日(月)
長野市芸術館メインホール(長野) 12月12日(土)〜13日(日)
富士市文化会館ロゼシアター大ホール(静岡) 12月19日(土)〜20日(日)
御園座(愛知) 12月25日(金)〜27日(日)

公式HP

取材・写真・文:entax編集部