バレエとリーディングが交差する!有吉京子の名作が豪華キャストにより初の舞台化【柴山紗帆entax独占インタビュー】
シリーズ累計発行部数2200万部を誇る大ベストセラー、有吉京子のバレエ漫画『SWAN-白鳥-』。この不朽の名作が、9月4日(金)より新国立劇場 中劇場にて、初めて舞台化された。タイトルは『SWAN -Ballet cross Reading-』。バレエダンサーの舞と役者の朗読という、これまでにない手法で原作の世界を立ち上げる話題作である。
ダンスと言葉が交差する舞台
本公演最大の見どころは、そのタイトル“Ballet cross Reading”が示す通りバレエとリーディンクが交差するという構成にある。物語の情感や心理描写は役者のリーディングが担い、キャラクターの内面や躍動は、バレエダンサーの身体表現が引き受ける。二つの異なる表現形式が一つの舞台上で交差することで、原作漫画が持つ濃密な物語性と、バレエならではの美しさを同時に味わえる仕掛けとなっている。脚本・演出は数々の話題作を手がけてきた小林香、バレエ監修・振付は新国立劇場バレエ団を経て現在フリーで活躍する福田圭吾、振付・ステージングは大野幸人と、各分野の精鋭が結集した。

豪華キャストが紡ぐ物語
キャストの豪華さも本作の大きな魅力だ。リーディングキャストは、主人公・聖真澄役に井桁弘恵、京極小夜子役に村川絵梨、草壁飛翔役に東啓介、柳沢葵役に西野遼、アレクセイ・セルゲイエフ役には福士誠治が演じる。なかでも真澄役の井桁弘恵は、トークバラエティー「おしゃれクリップ」のMCとしても知られる俳優である。12歳までバレエを習っていたという経歴を持ち、リーディングへの挑戦は今回が初めてとのことで、その新たな一面にも注目したい。
バレエキャストはダブルまたはトリプルキャストで構成され、主人公・聖真澄役は飯島望未、柴山紗帆(新国立劇場バレエ団)、塩谷綾菜(スターダンサーズ・バレエ団)が演じる。京極小夜子役は木村優里(新国立劇場バレエ団)、成田紗弥、米沢唯(新国立劇場バレエ団)、草壁飛翔役は秋元康臣、宮内浩之、渡邊峻郁(新国立劇場バレエ団)が務める。柳沢葵役には関野海斗、中島瑞生(新国立劇場バレエ団)、亜鷺悠加/ラリサ・マクシモーヴァ役には中野伶美、山田夏生、アレクセイ・セルゲイエフ役には厚地康雄、今井智也(谷桃子バレエ団)、菊地研、マヤ・プリセツカヤ役には倉永美沙、佐久間奈緒、中村祥子と、まさにスター・ダンサーが顔を揃える。
本作で聖真澄を演じる1人、柴山紗帆(新国立劇場バレエ団)に、entaxでは独占インタビューを行った。稽古場での手応えや役への向き合い方、そして初めての作品に懸ける思いを、じっくりと語ってもらった。

配役を聞いたときの気持ちは?
漫画のキャラクターということで、皆さんの中にイメージがあるものだと思っていたので、その点はすごく不安でした。ただ、リハーサルを重ねていくにつれて、そのマインドは変わってきた部分もあります。演出の小林香さんから、無理に真澄に寄せようとしなくても大丈夫と言っていただきました。そこから、自分の中にある真澄らしい部分を大切にしていけば良いのかなと思うようになりました。そう考えると、真澄のひたむきでまっすぐな部分は、自分にも少しあるのかなと思います。私自身は、どちらかというと一つのことに向き合うタイプなのですが、真澄には天真爛漫な明るさがあると思います。
どのように稽古は進んだ?
最初はダンサーだけの事前リハーサルで、まずは振付を少し入れていただきました。リーディングキャストとの本稽古の最初の1週間はほかの舞台公演があってリハーサルに出られなくて、その後からの参加でした。お稽古は3分の1ぐらいできた状況の中で飛び込んだので、頭がフル回転でした。リハーサルに参加してからまだ1か月たってないくらいですが、本当に濃い日々でしたね。
通常のバレエのリハーサルだと、最初に振りを入れて、同じペアでやっていくものなんですが、今回は、リハーサルの日程と組むダンサーのスケジュールの都合もあり、毎回ペアが変わることもあり、本番で組むことのない人も含めてほぼ全員の人と組んでリハーサルをしました。
普段であれば、ある振りに対して上手くできないと、すごく時間を費やすことがあるのに、参加しているダンサーは、みんな1回合わせただけで形になる。今回はそれがすごいなと思いました。本当にすごい人たちが集まっているんだなと。全然普通じゃないなと思いながらリハーサルをしていました。相手によって演技もちょっとずつ変わってきたりするので、いろんなダンサーと踊ることで臨機応変さも鍛えられて、それは面白いなと思いました。
リハーサルは本当に素晴らしい時間でした。演出の小林香さんがバレエの演出のやり方を探ってくださっていたんですけど、ダンサーの演技の面は気になることがたくさんあったと思うんです。ダンサー側は演技をやっているつもりだったけど、実際はできていなかったところを改めて教えてくださったり、細かなところまで意識できていなかったんだなと気付かされたりしました。
普通の演技はもちろん難しかったんですけど、バレエの部分での演技というところまでしっかり教えていただきました。細かい部分にすごく疑問を投げかけてくださって、「ここってどういう意味ですか」とか「これなんで手を出しているんですか」「今どういう気持ちですか」と聞いてくださるのですが、最初は全然答えられなくて。フィーリングや、音楽に乗る中で実際は思っているかもしれないですが、それを言葉にして出せていない。「抽象的」という言葉を言ってくださったんですけど、具体的になれていない、というのがぐさっときましたね。ちゃんと言葉にして踊ってみると、すごく演技が変わったのが分かったので、気持ちを言語化して動いた方がいいというやり方を教えていただきました。
また、バレエダンサーとしてこれまで自然に受け入れていたことも、改めて考えてみると、そこにある意味まで考えられていなかったことに気づきました。そこを一つひとつ紐解いていくと面白いなと思いました。物語を伝えるということに関しては、普段何気なく捉えていることに目を向けて、そこにある意味を考えることがすごく大事なんだというのを感じました。
リーディングの俳優たちと一緒にやってみてどうだった?
俳優さんの演技を間近で見られる機会ってなかなかないので、伝わってくる気迫に驚きました。とにかく入り込んでしまうし、俳優さんたちの感情が入っている分、すごく引き込まれる。こちらの感情も揺さぶられる感じがあって、いつもとは違う体験でした。
リーディングの真澄のセリフがあるので、ナレーションとは違う、こちらの感情も見える。それをどう踊っているのかを、お客様に見ていただけるのかなと思います。
最後に、見どころは?
見どころは、いろんなところにあって、一瞬たりとも見逃さずに、という感じです。
大野さん振付のジャズダンスを踊るシーンもあり、そういった機会はなかなかないので、難しかったです。振りが体に入るのに結構時間がかかりました。
この豪華なメンバーで一緒にやれることは、本当にこの先ないんじゃないかなと思います。俳優さんたちの熱量とダンサーの熱量が、どんどん積み重なっている感じがあって、俳優さんたちがこちらの熱量を感じ取ってくださって、いい効果が生まれているんだなというのをすごく実感しました。
漫画の中で心に残っていた言葉が実際に俳優さんの声になり、そしてダンサーの身体を通じて『SWAN』という作品の持つ力を感じています。ぜひ劇場でこの作品の世界を直接感じていただけたら嬉しいです!!

漫画の名場面が、生身のダンサーの身体と役者の声によって、新たな命を吹き込まれた。9月4日に開幕した本公演は、現在新国立劇場 中劇場にて上演中だ。原作ファンはもちろん、バレエ初心者にも、ぜひ会場でこの新しい“SWAN”を体感してほしい。
取材・文:和田弘江